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【連載】「偽物だ」と追い出された最強聖女たちの、自由気ままな珍道中  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 討伐依頼を受ける聖女たち

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25、紫級冒険者って余裕があるな

 陽だまり亭にたどり着く。

 すると、ベルドから「はい」と紙袋を手渡された。そこに入っているのは、帰る途中で二人が購入していた夕食のはずである。勢いで受け取ったミナは目を丸くする。

 そんな彼女の様子など気にも留めず、ベルドはミナに向けて話始めた。


「これ、よかったら食べるといいよ。今日疲れただろう? この後、配膳の仕事があるのなら、少しはお腹に入れておいた方が良いと思うからね」

「いや、それは申し訳ない」


 そう告げて袋を返そうとするミナだったが、ベルドはヘラッと笑う。


「僕たちはこれで充分だからさ。今日依頼を手伝ってくれたお礼だと思ってもらってくれると嬉しいよ」


 そう言って右手に持っていた紙袋を持ち上げる。

 確かにそちらの紙袋にも、結構な量の料理が入っていたはずだ。ミナとレアも屋台に寄りたい、と話すベルドたちに了承を伝えていたから知っている。

 宿の通り道だったことと、ウルのおすすめの店だと聞いて気になったのだ。紫級冒険者がどんな食事をするのか、と思って覗いてみると……意外と質より量を取るのか、パンに肉や野菜が大量に挟まっているバーガーと呼ばれる食べ物だった。

 それを何個も注文していたので、最初は目をしばたたかせたくらいだ。二人とも男性だからよく食べるのかもしれない、と思っていたが……もしかしたらミナたちに渡すため購入していたのだろう。

 

 ミナはベルドの顔をじっと見つめていた。表情は変わらないが、内心ではどう返したものかと悩んでいるのだ。けれども、それを好機と見た彼は手を上げる。

 

「それじゃあ、頑張ってね」


 背中を向けて去っていくベルドとウルに、ミナとレアは声を掛けた。

 

「「待った(て)」」


 驚いて振り向く男性二人。ミナとレアは同時に声を上げたことに最初驚いたが、同じことを考えていることに気がつき、微笑みあった。そして、二人へと顔を向ける。

 

「ありがたくいただく」

「ありがとう! 大事に食べるねっ!」


 レアは二人に向けて手を振る。ミナはお礼の気持ちを込めて、お辞儀する。二人から感謝を受けたベルドは満面の笑みを見せ、手を振り返す。ウルは頭を軽く下げた。


 その後、遅く帰ってきた二人を見つけたモリー。普段と比べて遅い帰宅に首を捻っていたモリーだったが、ミナから事情を聞いて開いた口が塞がらなかった。

 開口一番――


「無事で良かったじゃないか……! 流石に今日は疲れただろうから、休みにしとくよっ」

「いや、今日も仕事を――」


 したい、とミナが告げる前に……モリーはミナへ顔を近づける。


「ミナ、こういう時くらい休むんだね。あんたは疲れていない、と思うかもしれないが……意外とそういう時って、精神的な負担が大きいんだ。なあに、食堂は元々あたし一人で切り盛りしていたから大丈夫さ! 今日は休み! 分かったね?」


 彼女の瞳には、怒りの色と心配の色が混ざっているように見えた。

 きっと案じてくれているのだ。それを理解したミナとレアはありがたく休むことにする。食事を出そうか? というモリーの提案は、食べきれないと判断して丁重に断った。

 最初は目を白黒とさせていたモリーだったが、レアが「今日お世話になった人に貰った」とミナの持つ紙袋を指差したところ、その中身が食事であることに気がついたらしい。ゆっくり休むように告げて、開店準備へと戻っていった。

 

 ミナとレアは部屋へと戻り、ベルドからもらった紙袋を開いた。

 バーガーというのは帝国で開発された料理らしく、二人とも食べたことがない。紙に包まれたソレを取り出すと、葉物野菜と共に肉が挟まっている。量も肉が二枚ほど入っていたためか、ひとつ食べただけで二人ともお腹がいっぱいになった。

 ミナとレアは食べながら、今日の話をしている。そんな時、ふとレアが声を上げた。


「ベルドさんとウルさん、いい人たちだったね」

「……そうだな」

 

 ミナは何か思うところがあったのか……返事に少し間が空いていたが、彼女の呟いた言葉は嘘ではない。レアはミナの様子に首を傾げたが、まあ良いかと次に話を進める。


「ねえ、ミナ。少し余裕ができたら、食べ歩きをするのはどうかな? このバーガーって食べ物、美味しいじゃない? 自分たちが知らない、食べたことのない食事をしながらのんびり旅するってのもいいよね!」

「……確かに、それもいいな」


 レアの提案に、ミナは静かに同意した。


「私は意外と冒険者としての活動が性に合っているような気がしているんだ。旅をしながら、美味しいものを食べて、様々な景色を見て……ああ、楽しいだろうな」


 未来のことを考えたからだろうか、ミナは微笑んだ。その笑みは気品と優しさにあふれている。そんな彼女の表情にレアは息を呑んだ。そして嬉しくなった。自分に大分心を許してくれているのかもしれない、と。

 レアの心が温かくなっている時、ミナはこちらに顔を向ける。


「レアの提案はいつも心躍るものばかりだ。いつも助かっている……ありがとう」

「……! う、うん!」


 穏やかな笑みを見せたミナに、レアの胸が高鳴る。

 ミナの可愛らしい笑みを見られることに対しての優越感、役に立っているという高揚感……色々な思いが入り混じっており、言葉にできないくらい嬉しかった。

レアがひとつだけ言えるとすれば……ミナに会えて良かった、ということだろう。


 二人の穏やかな会話は、その後少しだけ続いていった。

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