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【連載】「偽物だ」と追い出された最強聖女たちの、自由気ままな珍道中  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 討伐依頼を受ける聖女たち

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22/27

22、昇級は早くないか? あ、はい。分かりました

 ベルドを見送り小一時間ほど経った頃。

 ギルドから応援がやってくる。先頭にいたのはベルドとギルド長のドレイク。ドレイクは縄で縛られた男たちをひと睨みした後、ギルド職員に指示をする。あるギルド職員が手に持っている魔道具を起動すると、魔法の縄のようなものが現れた。縄は自動的に男たちに巻き付き、男たちをひとつに繋げていく。

 まるで子どもの行列――実際はそんなに可愛いものではないが――のように並べられた男たちは、縄に引っ張られながらゆっくりと歩いていく。レアとミナ、そしてベルドの相方であるウルは男たちが逃げ出さないかと監視役を務める。そしてベルドとドレイクは後方で話ながらこちらに向かっていた。


 ギルドへ到着すると、ドレイクは男たちを牢へ放り込む、と言って別行動となった。ミナたち四人はギルド職員に案内されて応接間へと向かう。どうやら副ギルド長であるメラニルと話をするらしい。


 応接間へと入ると、それに気がついたメラニルが立ち上がる。そして眉間に皺を寄せた状態のまま、彼女はミナとレアの元へとスタスタと歩いてきた。

 あまりにも真剣な、まるで怒っているような彼女の表情にレアは少し怖気付いている。ミナは何か問題があったのだろうか……と頭を回転させていた、その時――


「ありがとう〜! あなたたちのお陰で、あの小悪党を捕まえることができたわぁ!」


 いきなり満面の笑みを浮かべたメラニルが、二人を抱きしめる。全く予想だにしなかった展開に、二人は目を白黒させた。そんな二人をよそに、メラニルは話を続ける。


「あの男たち、慎重に慎重を重ねて足取りを掴ませないようにしていたからね。隣町のギルドから連絡が来た時は、まさかこちらに来るとは思わなかったけれど……警戒しておいて良かったわ。むしろ、あなたたちのお陰ね! これで何の実績もない辺境ギルドって言われないわー!」


 両手を挙げて喜ぶメラニル。そんな彼女を目を細くしてじっと見つめているベルドとウル。そんな男二人の様子に気がついたのか、メラニルは仕切り直すようにわざと咳払いをしてから、凛とした表情を浮かべる。

 先ほどの浮かれ具合から見れば、どうしても作りモノの表情に見えてしまうのだが……それは仕方のないことかもしれない。


「彼らを捕縛した状況については、後ほどギルド長が来た時に確認いたします。私からは報酬についてのご相談を先にさせていただきますね」

「報酬……とは?」


 ミナとレアが首を傾げる。

 報酬といえば、ゴブリンの案件だけれども……ここまで仰々しいはずがない。頭に疑問符を浮かべている二人の様子を見て、ベルドは笑う。


「二人とも、人攫いを捕縛したじゃないか。その報酬だよ?」

「「……あ!」」


 なるほど、と言わんばかりに音を立てて手を合わせるレア。そして、そんなこともあったな、と既に事件すら忘れかけているミナ。彼女にとっては取るに足らないことだったのだ。

 彼女たちの様子に苦笑いのベルド。そして大きく息をついたメラニル。二人が思い出したところで、彼女は一枚の依頼書をテーブルの上に差し出した。


 そこに書かれていたのは、『人攫いの捕縛依頼』。

 依頼名の前には、紫色の丸が付けられている。初めて見る依頼書の様式に、思わずミナとレアはお互いを見つめた。

 

「この依頼書は特殊依頼と呼ばれるものとなります」

「特殊依頼……ですか?」


 ミナが訊ねると、メラニルは首を縦に振る。


「そうです。特殊依頼とは、この色の級以上の方へギルドが打診して受けていただく依頼です。このような依頼は基本、掲示板に貼られることはありません」

「今回は僕たちがその依頼を秘密裏に受けていたんだよ」

「なるほど……」

 

 彼らは紫級冒険者。

 この街には彼らより上位の冒険者はいないとテッサたちが言っていたことをミナは思い出す。


「僕たちは掲示板の依頼を受けながら、人攫いらしき者たちの動向を窺っていたんだ。側から見れば、君たちは格好の的だったからね。彼らの隠れ家を確認しつつ、君たちが動くのを待っていたとも言える」

「ええ、あなたたちを捕らえる前に、芋蔓式に捕獲しようと考えていたの。結果的に囮という形になってしまい、申し訳ございませんでした」


 メラニルが頭を下げる。先ほど喜んでいた人物と同一だと、誰が思うだろうか。

 まあ、きっと彼女のことだ。どちらの気持ちも抱いているのだろうなと思う。

 

「いや、むしろ私たちが役に立って良かったと思っている」


 そうミナが告げれば、ベルドは肩をすくめる。


「いや、役に立つレベルじゃないよ。むしろ君たちでほぼ依頼を達成しているじゃないか。ウルもそう思わないか?」


 ベルドに同意を求められたウルも無言で頷く。ミナとレアは彼らを見て「そんなはずはない」と言わんばかりの表情を浮かべている。自分たちの行動がまさかこんなに評価を受けるなどと思ってもみなかった顔だ。

 メラニルは目を丸くしているミナたちを見て、苦笑を漏らした。

 

「ベルドから聞きましたが、本部隊はあなたたちの手で捕縛したのでしょう? ですから、あなた方にも報酬を渡します。そして昇級もするでしょう」

「え、いや……まだ初心者なので、昇級はしなくて問題ないのですが」


 昇級と言われて、不思議そうな表情で話すミナ。隣で聞いているレアもポカンと口を開けている。


「いえ、紫級の依頼を解決できるほどの実力を持つあなた方は、すでに初心者ではございませんから」


 有無を言わさずミナたちの意見を切り捨てるメラニル。彼女の言葉に一応納得したらしい二人は、昇級するのであればと了承はする。

 けれども本人たちも、昇級するほどかな……と半信半疑の状態だ。


 そんな欲のない彼女たちの様子を見て、ひきつった笑いを見せるベルド。ちなみにウルは我関せず、と言わんばかりの無表情だ。


「後ほどその時の様子を確認してから、そちらの話もしましょうか……あら?」


 扉がノックされ、職員が入ってくる。どうやらギルド長……ドレイクが少々遅れるとのことだった。メラニルは少しの時間考え込んでから、職員にお茶とお菓子の用意を頼んだ。


「疲れているところ申し訳ございませんが、ギルド長が来るまでお待ちいただけるかしら?」


 ミナとレアは問題ないと返事をすれば、メラニルは微笑んだ。


「ではベルド、あなた宛に手紙が届いているの。先にそれを渡してもいいかしら?」

「分かりました。伺います」


 応接間にウルとミナ、レアの三人が残る。三人は茶菓子を食べながら、のんびりと過ごしたのだった。

 

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