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【連載】「偽物だ」と追い出された最強聖女たちの、自由気ままな珍道中  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第三章 討伐依頼を受ける聖女たち

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18/23

18、初めての討伐依頼

「さて、今日は討伐依頼に行ってみるか?」

「うん、楽しみだねぇ〜」


 普段より大分早い時間。依頼掲示板の前の人は少ない。これからギルドが賑わう時間帯に入る、そんな中現れた二人の美女に、朝一でギルドへと訪れていた冒険者たちは騒然とした。

 特に周囲が目を惹いたのは……レアである。ミナと比べて小柄の彼女が、自分と背と同じくらいの大きさである大剣を背負っているのだから、二度見してしまうのも無理はない。

 普段と同様にそんな視線は物ともせず、依頼掲示板へと直行する二人。そして以前から目星をつけていた依頼表を手に取った。


「ゴブリン依頼、最初はこれが良いと思うんだが」

「いいよ! 受けよう!」


 短剣らしきものを所持しているミナと、大剣を所持するレア。ギルド内に居る者たちは、彼女たちの一挙一動に目を奪われる。そしてしばらくして自分たちの番になった二人は、受付に依頼表を提出した。

 受付の人は、ミナとレアの顔と依頼表と交互に見る。今まで街の中の依頼しか受けていなかった二人が、街の外に出るということに驚いたのだろう。

 受付の間でも、二人が武器を所持していない話は有名だった。そのため、武器を購入するまでは討伐依頼を受け付けるのは暗黙の了解で禁止されていた。もちろん、二人はその点を弁えていたので問題が表面化することはなかったが。


 しばらくして受付の彼女も、ミナの腰に刺さっている短剣と、レアに背負われている短剣に気づく。そして防具を着ていることにも気がついた。

 彼女は顔に出すことはなかったが、心内では二人が武器を購入したことに祝杯を上げていた。それもあるのか、受領印を押す力が少し強くなったのは、受付の彼女だけの秘密である。そして――


「お気をつけて。無事にこの場所へと戻って来られる事を願っております」


 そう告げて受付の彼女が頭を下げると、ミナとレアは微笑んだ。


「ありがとう」

「頑張ってきまーす!」


 背を向けて扉に向かって歩いていく彼女たち。受付の彼女は二人の無事を心の中で祈っていた。だが、その祈りも虚しく……その後ろを怪しい影が付けていた。



 

 二人は森の中へと入っていく。

 今回のゴブリン依頼は「探索ゴブリン」と呼ばれるものの討伐らしい。ゴブリンは基本団体で行動する魔物なのだが、時折新たな土地を求めて数匹で行動することもあるのだとか。それを探索ゴブリンという。

 今回その探索ゴブリンが街の近くに現れたのである。これを放置していると、最終的には大きな村となってしまう可能性が高い。そのため、街の近くには限るが見つけた場合は殲滅するよう依頼が出るのだ。

 

「今回は探索ゴブリンが街の近くに現れたようだ。もう既に家を建てているらしい」

「あ、それは良くないね! 依頼は討伐と家の解体?」

「そうだな。家を解体するか、燃やす必要があるらしい」


 レアの言葉にミナも首を縦に振る。

 探索ゴブリンの作った簡易小屋、それが残っている状態だとまた新たな探索ゴブリンが現れる可能性がある。そのため、小屋も処分することが必要なのだ。


「つまり痕跡を無くせば良いってことだね!」

「そういうことだ。探索ゴブリンは五匹ほどらしい。レアいけるか?」

「大丈夫!」


 両手で握り拳を作って気合を入れたレア。ミナは微笑みながら彼女を見ていた時、ふと左目の端に黄色い何かが映り込んだ。

 ミナは伸ばした人差し指を唇に当て、レアに知らせる。二人は茂みに隠れながら前に進んでいくと、開けている場所が現れた。右手にはある程度高さのある崖があり、崖の近くに何かが建てられていた。

 木を組んだ上に藁や木の枝らしきものを重ねた簡易小屋だ。大きさは丁度二人の腰ほど。

 

 息を潜めていると、その小屋からゴブリンの鳴き声が聞こえてくる。どうやら今は中に何匹かいるようだ。そう判断したミナは、音を立てないよう小屋の近くに移動してから、様子を窺った。

 しばらくして。いつまで経っても小屋の中で騒いでいるゴブリンたちに痺れを切らしそうになっていたレア。彼女はミナへと視線を送る。

 ミナも目を細めてそのまま様子を見ているけれど……どうやらこれ以上待てない、と判断した彼女は鞄の中から果物を取り出した。そして小屋に当たるよう調整しながら、投げ入れる。

 彼女の想定通りの弧を描いた果物は、コツン、と良い音を立てて建物へとぶつかり、地面に転がっていく。その物音を聞きつけたらしく、中のゴブリンたちがワラワラと現れる。


 一匹のゴブリンが足元に落ちていた果物を見つけ、手に取った。他のゴブリンに見せつけるように果物を高く掲げ、それ以外のゴブリンが我も我も、と言わんばかりに果物へと手を伸ばしているそんな時――


 一筋の風がミナの横髪を持ち上げる。


 彼女が右隣に視線を送ると、既にレアはいなかった。代わりに正面からゴブリンの悲鳴が聞こえてくる。どうやら先ほどの風はレアが飛び出した時のもののようだ。

 彼女は大剣を構えた。足を肩幅以上に開き、腰を落としてから、彼女の胸の辺りを地面と平行に大剣を振るう。その衝撃なのか、大剣の切れ味が良かったのかは分からないが、その場所にいたゴブリンは胴体を半分に切られて絶命していた。


 一閃で全てのゴブリンを捕らえたレア。その剣捌きにミナは感嘆の声を上げる。終わったことを確認したレアは、大剣を肩に担いでミナに声をかける。


「これで全部?」

「ゴブリン()な」


 ミナは気づかれないように後ろを一瞥する。その仕草を見たレアは、ミナと肩を並べた。


「そっか、これで依頼は終わりかぁ! あとは解体? 解体どうしようか?」

「私が魔道具を持っているから、それで燃やそう」


 ミナは鞄から手のひらの大きさほどの箱を取り出した。

 

「あ、お店で売ってたやつ? 確か対象を設定すればそれ以外燃えないんだよね!」

「ああ。便利だよな」


 彼女は魔道具に魔力を流す。すると箱の側面の蓋が開く。そこに人差し指ほどの長さの直方体の形をした白いものが入っている。


「ねぇ、ミナ。これ何?」

「これは範囲を指定する時に使用するペンだそうだ。こうやって地面に描いていくと……」

「あ! 白い線で家が囲まれてる!」


 レアは目を丸くする。

 驚くレアをそのままに、ミナは白いものを箱へと閉まう。そして再度魔力を込めると、箱の先端から火が現れる。ミナは木の枝に火を近づけると、あっという間に白い円の中は燃え広がっていく。

 炎が消えると同時に白い線も消え、後には炭しか残っていなかった。

 

「便利だねぇ」


 ポロッと漏れたレアの声にミナは頷く。そして魔道具を鞄へとしまうと、二人は帰ろうと肩を並べた。その時――


「お嬢ちゃんたち、依頼表のゴブリン退治はここじゃないぞ?」

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