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【連載】「偽物だ」と追い出された最強聖女たちの、自由気ままな珍道中  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第二章 冒険者になった聖女たち

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15/21

15、武器はどれがいいかなぁ……

 二人が首を傾げて待っていると、現れたガルドは大量の大剣を抱えてこちらへと戻ってくる。二人がポカンと口を開けていると、ガルドは声をあげて笑い始めた。


「いやー、すまん! 表に出てるのは、初心者用だからな! 他所でも置いてあるようなヤツだと嬢ちゃんに合わないのは仕方ない! むしろ久し振りに儂の腕によりを掛けた作品が出せるのは、嬉しいぞ」


 そう言いながら、腕に抱いていた大剣を床へと下ろしていく。次々に現れる剣を見ていたレアが、ポツンと呟いた。


「確かに表のよりも合いそうな剣が多いかも」


 何度か工房と二人の間を行き来していたガルドが、腰を下ろす。どうやら全て大剣を運び終えたのだろう。

 興味津々な様子で剣を手に取り始めるレア。構えてみたり、全体を確認してみたり、軽く素振りをしてみたり……ひとつひとつ使い心地を確かめながら進めていく。

 そして時間をかけて全ての大剣を試したレア。彼女は「うーん」と悩み始めた。レア曰く、ふたつで迷っているらしい。その二本の大剣を残した後、それ以外はガルドが工房へとしまっておく。

 レアは無言で二本を見比べ考え込んでいる間に、ミナはガルドに質問をした。


「何故あちらの大剣は表に出さないんだ? 良いものは表に出ていないと分からないのでは?」


 ミナから見たら、良いモノを表に出して売るのは当たり前だ。それもあり、彼は出来のいい作品を工房の奥に置いてあるのかについて疑問に思ったのだ。

 彼女の疑問を理解したガルドは、近くにあった短剣を手に取りながら話す。


「ああ、たまにな、身の丈に合わない武器を購入しようとする輩がいるんだ。身の丈に合わない武器を手に取ることは、死に直結するからな」

「死に……?」

「そうだ。自分の実力以上の武器を手にすると、自分が強くなったと錯覚しちまう……それで、実力に合わない依頼を受けちまうんだ」


 ミナはガルドの言葉に納得した。

 確かに自分の実力は正しく把握しておくべきだ。少しの油断は命取りになってしまうから。その上で彼女は考えた。自分の実力は、いかほどだろう……と。そこでふとメラニルとドレイクの言葉を思い出した。

 

 ――私が中級魔法使い? 上級に足を突っ込んでいる? 帝国内ではそうかもしれないが、王国ではあり得ないな。

 

 彼女が頑なに現状を否定するのには理由があった。

 大聖女になる前、ミナはランディア王国で魔物討伐の最前線に送られたことがある。その時、王国お抱えの魔導師に魔法について指導されたことがあった。現在彼女が強力な魔法を使えるのは、その魔導師のお陰といっても過言ではない。

 その魔導師が言っていたのだ。「お前は初級魔法使いだな」と。


 ミナは彼の言葉を覚えていたのだ。


 けれども……そこからミナは聖女の力だけでなく、魔法も研磨を続けていた。どちらかといえば、聖女の力に重きを置いていたので、魔法については短時間になってしまうが、それでも毎日訓練を行なっていたのだ。

 だから本人は気がついていない。初級魔法使いと言われてから数年経っている、ということ。そして、その間の研磨により魔法も上達していることに。


 その魔導師を密かに師匠と持ち上げているミナ。その魔導師とはその後一度も会ったことはないので、彼女は今彼がどこで何をしているのかを知らない。だから、実はその男が王国有数の魔力量を持つ魔導師だったことも彼女は聞いていない。

 そのため、自分の実力を客観視できないままここまで来ているのである。


「生きることが何より大事だからな」

「嬢ちゃんの言う通りさ。お前たちも無理な依頼は受けるんじゃないぞ」

「肝に銘じておく」


 そんな二人の会話を他所に、レアの大剣選びは難航していた。ずっと腕を組んで悩んでいるレア。最初は様子を窺っていたミナだったが、途中から何か助けになれないかと思ったミナは、彼女に話しかけてみることにした。


「レア、何か決められない理由があるのか?」

「ふたつとも、とっても良い剣なんだけど……なんかしっくりこないというか……何て表現すれば良いのか分からなくて。えっとねぇ、剣に呼ばれないの」

「剣に呼ばれる……?」

 

 剣に呼ばれるとはなんだ? とミナが思っていると、ガルドは感嘆の息を漏らした。


「おお、大剣の嬢ちゃんは武器の声が聞こえると」

「うーん、聞こえるのかは分からないんですけど……手に持った時、これだ! って思うような大剣を以前は使ってました」


 柄を握った時、しっくりくる物とこない物があるのだそう。

 以前前線に出ていた時は、彼女も戦力に数えられていたこともあり、専用の武器のようなものがあったそうだ。その時の武器を最初手に取った時、しっくりくるなぁ、くらいの感覚だったのだとか。

 そう話すレアに、ガルドさんは相槌を打ちながら同意していた。


「それが声を聞ける、ということだ。嬢ちゃんはメラニルが思っている以上の実力者なんだろうな」

「私が……剣の声を聞けている……」


 レアは改めて目の前に置かれている二本の大剣を交互に見やる。そしておずおずとガルドの方へと身体を向けた。どちらにするか決まったのだろうか、とミナが思っていると、予想だにしない一言を放った。


「あの、ガルドさん。この剣で最後じゃないですよね? あと一本、工房に残っていませんか?」

「……どういうことだ?」

 

 ミナは無意識のうちに声を上げていた。全部運び終えたはずなのになぜ……? 

 そう思った彼女は先ほど大剣を運び終えたガルドの言葉を思い出す。彼はこう言っていた。「()()()()これで全部だ」と。その言葉が頭に浮かんだ時、彼女は気がついた。

 

「そうか、売り物でない大剣があるのか……!」


 ミナは勢いよくガルドへ振り返ると、彼は渋い表情を浮かべている。何かを考え込んでいた彼に、レアは告げた。


「この大剣たち、私の声に反応するのを怖がっているみたい。多分奥にある大剣のことを気にしているのかも」


 そう話す彼女にガルドは目を大きく見開いた。


「大剣の嬢ちゃんは、そこまで声が聞けるのか?」

「なんとなく、そうなのかなと思って」


 微笑みを浮かべたレア。そんな彼女を見て、彼は意を決したのか……奥の扉へと歩いていく。


「大剣の嬢ちゃん……いや、レアだったな。着いてこい。あ、そっちの嬢ちゃん……ミナも来て良いぞ」

 

 二人は顔を見合わせたあと、ガルドの後ろへと着いていった。

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