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【連載】「偽物だ」と追い出された最強聖女たちの、自由気ままな珍道中  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第二章 冒険者になった聖女たち

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10/12

10、常識がない……?

 メラニルの言葉から緊張感が漂う。ミナは普段と同様に無表情で彼女のことを見ていたが、レアは二人の様子が険悪そうに見えたのか少し狼狽えていた。

 メラニルはじっとミナを見つめる。彼女は魔法を使える者を把握することが特技であり、今の小一時間で地下水道の件は彼女の魔法によるものだと判断していた。

 二人で見つめ合う様子を見たボルドーは、ひとつため息をつき、頭を掻きながら話した。


「おい、無言で見つめ合っても、何も分からねえじゃねえか。ちょっと確認したいことがあって聞きたいだけだ。もし言いたくないことがあれば言わなくて良い。幾つか質問するから答えてくれ」


 ボルドーの話を聞いたミナは、メラニルから視線を外し、彼を見る。レアも同様に彼を見つめていた。

 まあ、答えなくても良いっていうなら、良いか……と思って。

 メラニルもひとつ息を吐いた。


「そうねぇ、まあ答えてくれるとありがたいですけど。それではまずはお名前を教えてくださる?」

「ミナです」

「レアです!」


 淡々と答えるミナに対し、ニコニコと微笑みながら答えるレア。それを見てボルドーは、正反対な二人だなと感想を抱いた。


「どこから来ましたか?」

「王国から来ました」


 ミナの言葉に、レアも首を縦に振る。


「お前たち、帝国出身じゃないのか?」

「そうです!」


 元気に話すレア。メラニルもまず二人は帝国民ではない、ということが判断できたので詳細は訊ねなかった。

 だから二人は思わなかった。二人とも出身地は違い、偶然道で出会って一緒に行動している、などと。

 

「分かりました。それでは次の質問に行きますよ。地下水道の壁を綺麗にしたのは誰で、どうやってしたのか教えてくださる?」

「それは私です。見える範囲に浄化魔法を掛けました」

「それは蝋燭か何かで照らしながら魔法を掛けたの?」」

「いいえ。明かり魔法を使いました」

「明かり魔法で!」

 

 メラニルは衝撃を受ける。

 浄化魔法だけではなく、明かり魔法も併用したことに。併用は魔導師の中でも、中級者が使うものだ。


 帝国は聖女が少ない分、魔物を討伐するための魔導師が多い。そのため、帝国では魔導師でも中級者が多い。一方で彼女が知る限りではあるが、王国は聖女が多いため魔導師が少ない。大型の魔物は出るけれど、大体が王国のお抱え部隊によって退治されるのである。

 だから王国の冒険者は、帝国に比べると強い者が少ないのだが……まさか、それほどの逸材が王国にいたという事実に言葉を失った。

 

 気を取り直したメラニルは、ミナの話を聞いて明かり魔法を使用し、一部を照らしてから浄化魔法を掛けたのだろうと判断する。

 確かにそれを繰り返せば、あの地下水道になるのも納得だ。浄化の威力は本人の魔力や上達具合によっても変わる。彼女は中級……いや、上級者に片足を突っ込んでいるくらいなのだろう、と考える。


 まさか明かり魔法を大量に放出し、一度で全範囲に浄化魔法を掛けたとは思わない。いや、先ほどのやり取りでそれを思いつくことの方が不可能だ。


 メラニル側とミナ側で認識が異なっているにもかかわらず、何故かうまく話がかみ合いながら進んでいく。

 その齟齬に誰も気づくことはなかった。


 だが、そうであってもミナはメラニルたちの目から見れば、冒険初心者とは思えない魔導師だった。

 二人は頭を抱えながら、不思議そうな表情で見ているミナとレアへ話し始める。


「いえ、話を聞かせてもらったのは……あなたの魔法が規格外だったからですよ」

「規格外……?」


 思わぬ言葉を聞いたミナが目を丸くする。言葉の意味は理解できていても、自分に当てはまるとは思いもしない……と言わんばかりの表情を浮かべていた。

 それもそうだ。彼女はそれができて当たり前だったのだから。魔物との戦いの最前線ではよく魔法を使用していたが、聖女である彼女が魔法を使っていても何も言われなかった。むしろどんどん使え、と指示されていた記憶がある。だからそれが普通のことである、とミナは思っていた。


「お前……信じられないって顔してるが、あれはヤバいぞ? アニーに言われて見に行ったが、まるで完成したてのように綺麗だったぞ。短時間であそこまでの浄化魔法を使える者は上級魔導師に足を突っ込んでいる奴らくらいじゃないか?」


 メラニルもボルドーの言葉に同意する。


「ええ。初心者が使う魔法ではありませんね。あれだけ使える者が、帝国にどれだけ居るか……今回範囲が広かったので、浄化魔法を何度も掛けたのでしょうが……それだとしても威力が桁違いです」

「えっ、ミナは……」


 彼女の言葉を聞いて、レアが訂正をしようと口を開こうとして……ミナに肩を叩かれた。レアは少々眉間に皺を寄せているミナの様子を見て、口を閉じる。


「レアさん、どうしたの?」


 言いかけで口を噤んでしまったレアに、メラニルは声を掛ける。


「ミナはそんなにすごい魔導師だったんですね……!」


 彼女は口篭ってしまったことを誤魔化すように、目をしばたたかせながらメラニルへと驚いた旨を伝える。その言葉に彼女は違和感を覚えなかったようで、幸い話を深掘りされることはなかった。


「ええ。まさかこれほどの魔導師がいるだなんて驚きよ。そうそう、それより……あなたたちはこれからどうする予定なのかしら?」

「どうする……とは?」


 ミナがメラニルの言葉に疑問を呈す。隣でレアも首を傾げており、どう答えたら良いのか判断が付かないようだ。質問したメラニルは、人差し指をミナに向けた。


「ミナさん、あなたはあまりにも規格外過ぎる。ギルド長、レアさんは?」


 異次元の力を持つミナの仲間であるレアが、普通だとは思わないと言わんばかりに、メラニルはボルドーに訊ねる。彼は頬を掻き、へへへ……と笑っているレアを見て、肩をすくめた。

 

「いや、この嬢ちゃんもなかなかの手練だぞ?」


 ボルドーの言葉にメラニルは、大きなため息をついた。想定内の話だったらしい。「やはりそうよね」と一呼吸置いた後、彼女は至極真面目な表情で二人の顔を見て、話し始めた。

 

「あのね、一度はっきりとお伝えしますけれど、あなたたちは実力に対して……常識が無さすぎる」

「常識が……ない……?」

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