表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

目覚め


 運命なんていうものがあるのなら、それに直面した時どうすればいいのだろう

 諦める? 抗う? 受け入れる?

 その答えは。自分で探して、見つけ出すしかない






「──い、この子を──」

「──さま」

「この子を、連れて行かないで……!」


 誰かの、声が聞こえた。

 必死に、頼み込むような。



 ──そうして、わたしは。目を開けた。



「……あさひ!」

「誰か! 誰か早う医師を!」

「姫様!」


 ああ、いっぺんに、色々と耳元で叫ばないでほしい。

 それでなくても頭が痛いのに、女の人の高い声が脳髄に響く。

 うう、と眉を顰めたのがわかったのか、手をぎゅっと握り込まれた。どうやら左手がずっとあたたかいのは、誰かに手を握られているからみたいだ。

 誰かに手を握られるなんて、いつぶりだろうか。

 なんだか安心して、またすっと意識が落ちそうになったのを、バタバタと大勢の人の足音が邪魔をする。ううん、うるさい。もう少し眠らせてほしい。


 けれど、この息苦しさはなんだろう。身体が暑くて重い。いや、ほんとに。なんでこんな重いんだろう?

 身体に力が入らないせいで、握られた手を握り返すことすら出来ない。前にインフルエンザに罹った時、こんな風だった気がする。ということはわたしは風邪か何かに罹っているのだろうか。


 あれ、わたし、いつ風邪なんか引いたっけ。思い出そうとしても頭の痛みに邪魔されて思考がまとまらない。ああでも、ここ最近の仕事はいつにも増してきつかったから、知らない間に倒れてしまったのだろうか。

 そういえば最近はずっと胸の辺りが苦しくて、息が止まりそうな時があった。いつもの過労によるストレスだろうと思っていたけど、もしかしてあれが原因……?


 あれあれ、でもってわたしは一人暮らしのはず。もしかして会社で倒れたとかそういう感じ?

 あー、やっちゃったなぁ。

 同僚は割といい人が多いから救急車は呼んでくれたと思うけど、ただでさえ忙しいのに迷惑かけちゃったかな……。でも家で倒れなくて良かったかも。一人だとそのまま死んでたかもしれないや。はは。



「ああ、あさひ」



 泣いてる?


 わたしの耳元でする声が、泣いているみたいだった。でも、悲しそうじゃなくて、嬉しそうに聞こえる。

 そのことを不思議に思って、声の方に目を向けた。顔を向ける気力すらなくて、なんとか目を開けて視線だけを動かす。


 女の人が、わたしの手を握って泣いていた。ずっと泣いていたのがわかるくらいに、目も鼻の頭も赤くなっていて痛々しい。きっと綺麗な人なのに、一見そうとわからないくらいに泣き崩れている。


 誰だろう。心当たりがない。


 それに。その人が握っているわたしの手が、すごく小さくて──あれ。熱で目がおかしくなってるのかな。腕も、なんだか短い気がする。


 えっ、ちょっと待って。わたしの腕こんなに短かった?


 いやいや、確かに身長は百六十センチにはギリ届かなかったけど、服のサイズはMサイズくらいだよ。いや待って待って。え……? これ……この腕、どう見ても細いし短い。わたしの腕の半分もないくらいなんですけど……。なんで? まるで子供みたいなんですけど。



「あさひ」



 わたしが驚きで声が出なかったせいか、女の人が身体を近づけて覗き込むようにして、目が合った。


 わあ、肌が白くておでこがつるんとしてる。黒くて長い髪が似合ってて……。似合ってはいるけど、なんていうか、現代っぽくない髪型だった。まるで平安時代の貴族のお姫様みたいな髪型をされている。

 というか、お召し物も洋服じゃなかった。和装だ。え、何これ。時代劇?



「あさひ。わかりますか。母ですよ」



 何もわかりません。あさひって誰ですか。


 わたしの名前は優陽っていうんです。ゆうひとあさひだからちょっと近いよね。……って違うか。あさじゃないんです、ゆうなんです。


 でもって、確実にこの人はわたしの母ではない。だってわたしより年下だよね? 目の前のこの人は、多分二十歳前半くらいじゃないだろうか。もっと若いかも? あと、ここまで来たら説明するまでもないけど、わたしの母親と顔が全然違う。


 それでも。この人を見ているとなんだかあたたかい気持ちになった。全然知らない人のはずなのに、この人は大丈夫って。


 おかしいな。母親の面影も何もないのに。



 声を出したいのに、喉が渇いて声が出ない。ひゅーひゅーと漏れる音に気付いたのか、女の人が「誰か、水を!」と叫ぶのを聞いて、わたしはまた気を失うようにして眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ