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第7話

【???視点】

「そう構えるな、童ども。わらわは争う気など毛頭ない。ただ、今代の主様は保持する力に対して精神が未熟すぎる。それ故、一時的に表出し制御権を預かったにすぎん』

「我が主?それは大樹君のことか?彼をどうする気なんだ!」

「どうする?先も言ったがソレを決めるのは主であって妾が決めることではない。ただ、求められればそれに答えるのみよ」


人語を理解し、操る……コイツ一体どれだけの時を生きた妖怪だ⁉それにこの呼吸を圧迫されるほどの圧。間違いなく特級。それも、ポッと出の特級などとは違い長い年月を力の増加、蓄積した古の妖怪だ


「どうするんすか?相手さんはこう言ってますけど………」

「クソッ!こんなことなら春風も同伴させるべきだったか」


二人は会話をしながら体内で神力を練り始める。しかし………


「止めておけ、貴様ら程度の力で妾にかなうわけがなかろう。ホレ』

「は?」


大樹から距離を取ったはずが、瞬きの一瞬でその距離を詰められ、額へコツンとデコピンされる。認識できたのは最後のデコピンだけ……距離を詰めてきたところを目で追うことが出来ず、あろうことか体が硬直してしまう。


「所詮この程度、どうやら昔に比べ、今の陰陽士は弱体化したのう。これだは奴らが報われん……』


意味の分からないことを淡々と話す大樹の中にいる何か。しかし、そんなことも考えられないほど夜兎は混乱していた


この俺が速度においてあの化け物に劣っているって事っすか?……これだけは、これだけは誰にも負けるわけにはいかないのに………


「よくわかった。人間の皮を被った化け物め……今、ここで祓ってやる!」

「ッ⁉バカッ!止せ」


これから何をしようとするのか察した形代が夜兎を制止しようとするがもう遅い。この男の思考は既に同祓うかという事にシフトしており、その目には大樹しか映っていないからだ。札を掲げ、一瞬輝いたと思ったらポンっと音を立て刀へと変化する。刀を鞘から抜き出し、刀身を向け言い放つ


「祓魔する!」

「やってみよ。わっぱが……』


対峙する何某を祓おうとする夜兎。しかし、それとは対照的にどこか、何かを見定めるような目で観察する何某



・・・・・・・・・・・

「カハッ!」

「…………ッ‼」


ソレは一瞬だった。俺の静止を聞かず、簡易封印札を解き、刀を取り出した夜兎が持ち前の速さも駆使し、大樹君の中にいる何某を祓おうとするがソレを軽くあしらい腹へ強烈な一撃を打ち込んだ……


「これでわかっただろう。』

「………いいだろう。どのみち今ここでお前を祓うことはできない。であれば取り敢えずは様子見だ。」


これ以上何かをしてコイツの機嫌を損なうのは得策とは言い難い


「ウム、重畳じゃ』


そう言うと、どこか満足そうに笑う姿を見ながら形代は頭を悩ませる

しかし、上にはなんて報告したものか………と


「そういえばあなたの名前は聞いていなかったな。なんていうんだ?それにあなたが表出している間は、大樹君はなかで眠っているという認識でいいのか?」

「妾の名は故あって言えぬが……まぁ、妖刀『魔喰ら』とでも呼ぶがよい。我が主様は前回の鬼の時とは違い意識を半分覚醒させた状態で交代した。今も妾の目を党して情報は伝わっておる。』


何某かはそういうと人差し指で目を指す。


妖刀......確か人の負の怨念が幾重にも集約した呪われた刀だったな。それが自我を持っているあたり相当古い。なるほど、夜兎が敵わないわけだ


「では、大樹君に代わってくれ。これからのことで彼に相談がある」

「よいだろう」


そういうと、何かが抜け落ちたかのように脱力し俯いてしまう。


「………ㇵッ⁉帰ってきた!」


戻ってきた大樹君は焦った様子で自分の手や腕、顔を触り始める


「『魔喰らい』………か」


そういうと形代は手を額に当て天井を仰ぐ。その顔には先ほどまでの緊張の影響かいっそう老け込んだように見えたのは大樹の秘密だ。


ほどなくして、気絶して倒れこんでいたうめき声を発しながら起き上がる


「いつつぅ~………」

「頭は冷めたか?勝手に突っ走りやがって………アレがこちらに敵意を示していたらお前、確実に死んでいたぞ?」

「はい……すいませんっす」


形代の言葉に意気消沈といった様子で落ち込む夜兎。なんだか申し訳なさでこの場にいることがとても気まずくなってくる


「って、そういえば形代さん」

「どうしたんだい?」

「今後について相談があるんでしたよね?ソレについて聞かせてください」

「では……君も祓魔士にならないか?」


形代は視線を夜兎から大樹へと向け、一呼吸おいて提案する。その問いかけに大樹は待ってましたと即答する



・・・・・・・・・・


話が終わると、形代は夜兎に肩を貸しながら部屋を後にした。大樹もソレを見送ると自室へと歩き始める


あの時、俺自身は何もできなかった。ただ、頭の中がすべて怒りに染まり、喚くことしかできず、結局アイツに助けられた。はらわたが煮えくり返って収まる気がしない。もう……二度とあんな思いをしたくない。腹は決まった。俺は祓魔士になる。あの時の自分とは決別だ。


無意識に握りしめられた手には微かに血が滲んでいた


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