第5話【???視点】
「うっひゃ~、これはひどい。この惨状じゃ、生存者はいないっすね」
炎の明かりを反射し輝く刀を携えた青年が荒れ地と化した場所を少し離れた位置に立ち、周囲を見渡しながら呟く。目の前に広がる禍々しい魔力の力場。常人が入れば1分にも満たない時間で気をおかしくしてしまうその惨状が青年にそう言わしめる
「おかしい……反応が消えた」
青年の後ろから現れた男が何かの端末を見ながら言葉を発する。
「逃げたの⁉」
遅れて巫女装束を身に纏った女性が現れる
「いや、この感触は逃げられたわけではない。祓われているんだ」
「はぁ?じゃあ、誰かが僕らより先にきて、一級の鬼を祓ったって言いたいんですか?」
「………そういうことだ」
「じゃあ、そいつは誰なんですか?ここには見た限り僕らしかいないじゃないですか!」
青年は男の言葉にだんだんと声を荒げ始める
「おそらく妖怪だ」
「それこそ嘘っすよ。妖怪が妖怪を祓うなんて………それにもし、それが本当だとしてっすよ?一級を瞬殺できる妖怪なんてそんなのもはや特級レベルじゃないっすか!」
「だから私も驚いているんだ!」
男も声を荒げ言い返す。それに呆れた青年は隣にいる女性へと助けを求める
「形代の兄さんがついにボケ始めたんすけど。どうにかしてくださいよぉ~春風さん……って聞いてますか?春風さぁ~ん」
そんな青年の言葉を無視して春風と呼ばれた女性は魔力の切りに覆われ、認識する事すら困難な荒れ地を凝視する。
「あそこ……」
春風は魔力がいっそう濃く立ち込める場所を指さしそう呟く
「はい?あそこがどうしたんっすか?」
「生命反応……まだ、人が生きてる」
「はいぃ⁉じゃ、じゃあ早く救出しないとじゃないっすか!なんでもっと早く言ってくれないんっすか⁉」
「魔力の靄が探知を妨害するのよ!」
「あぁ、もう!兎にも角にもまずは人命救助っす。僕と春風さんで先行します。形代の兄さんは周囲の警戒と何かあった時に援護よろしくっす」
「「了解!」」
その後、少年一人が救助されたが鬼を祓った何某かは依然不明のまま
〈死者2名、生存者1名………一級妖怪『鬼』《《消滅》》〉