第4話
女性の悲鳴、子ども達の泣きわめく声。そして、生きたまま己の体を貪り食われる感覚。目まぐるしく場面が変化していく中で聴覚、嗅覚、視覚。すべての感覚を剥きだしにしたように鋭敏になる。そして、再び場面が変化する。そこはネットの動画で何度か見たことのある場所。刀を打つために用意された………鍛刀場だった。
キン、キン、キン、キン…………
一定のリズムで、鉄で鉄を打つ音が鳴る。その音の方向へ視線を向けると、一人の男が体中から汗を滝のように流し、それでも一切手を止めることなく槌を振り上げ、鉄を打ち続ける。
「ッ!」
揺らめく火によって照らされた男の顔を見るとその顔には憎悪なんて生ぬるいと思わせるほどの殺気が溢れ出ていた。目端からは血の涙が滴る。しかし、そんなことなど構うものかと……いや、ソレに気付かないほどの集中力で鉄を打ち続ける。
その姿に大樹は見入ってしまい、涙が頬を伝う
そして、男が打ち続けた鉄はやがて一振りの刀へと姿を変えていった。そこで場面が再び変化する。次の場面は、先ほどまでとは違い誰かの視点からだった。その人はどこか見覚えのある刀を携え、何もない方向へと走り出す。そして、刀を振り上げると何もない空間を切り裂く。しかし、目を凝らしてよく見ると明らかにこの世ならざる異形の化け物……まさしく妖怪と呼ぶにふさわしいソレを何某かが切り伏せたのだ。
そして、また場面が変化した。今度は何もない真っ白な空間だった。
目の前には蔵の中で見つけた刀を握りしめ、甲冑を着込んだ侍が一人。そして、その侍はまっすぐこちらを見て言い放つ
「お前に託す!」
瞬間恐らくこの侍のものと思われる記憶と一生をかけて培ってきた技術が大樹へと流れ込む。そして、大樹の意識を失う
・・・・・・・・・・・
ズダァーン!
「ッ!?」
突然の破壊の爆音ともの凄い揺れで目を覚ます
「な、なんだ⁉」
状況を把握するために蔵の外へ急いで出るとそこは静かで穏やかだった風景はなく、先刻までは何ともなかった爺さんの家は今やゴウゴウと燃え盛っていた。しかし、そんな光景すらも視界に入らないほどの光景が大樹の視界へと入っていた。
『ギャッギャッギャッ!』
ニチャァーと口を三日月の形にした、不気味な笑みをした異形。世間一般より大きい祖父の家を悠に超えるその巨体の妖怪は、毎年の夏休み祖母の書庫にある一冊の書物に載っていた鬼そのものの見た目をしていた。
鬼の手には頭から血を流し、体をグッタリとさせた父、海斗の姿が…………
瞬間、大樹は顔を歪ませる。そして、それを見た鬼は不気味な笑みがさらに増し、握りしめた海斗を口へと放り込み、喰らう
「あ、嗚呼、あぁ……アアアアアアアアア」 プツンッ
その瞬間、大樹の中で何かの意図が切れた音がする。そして、視界は暗転する。
声にならない悲鳴を上げた大樹は、崩れ落ち両膝を地面に付き、体をぐったりとさせる。それを見た鬼は大樹へと近づき、喰らおうとする。しかし……………
キンッ
鬼は大樹を掴もうとするがその手は大樹を掴むことはなかった
『?』
鬼は不思議そうに己の手を見る。しかし、瞬間、鬼の手首から指先にかけて一瞬にして細切れになる
『ッ⁉』
鬼は何が起こったのかわからず、一歩、二歩と後ずさり、動揺する
“何が起こったのだ⁉”と
そして、力なく膝をついていた大樹は徐に立ち上がると先ほどまでは持っていなかったはずの刀の柄へと手を伸ばし、引き抜く………と同時に、全てを飲み込むよに黒々々とした靄のようなものが噴き出す
『ッ⁉⁉』
「やれやれ、今代の主様は世話が焼けるのぅ。しかし………ほぉ、これはこれは……先代に負けず劣らずの良いものを持っておる。肉親を目の前で殺され、目覚めたといったところか。おい童』
『ッ!』
「そう恐れるでない。なに、今代の主を目覚めさせてくれた礼だ。痛みすら感じぬまま祓ってやろうぞ』
先ほどまでの気色の悪い笑みはどこかへ消え去り、その顔には恐怖が刻み込まれていた。そこで鬼の意識はシャットダウンする




