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第3話

「…………今、何時だ?」


ソレは突然だった。山奥の閑散とした僻地。夏なのに涼しく鬱陶しい暑さとは無縁だったはずなのに急に寝苦しさを覚え、目を覚ましてしまう。そして、それと一緒に喉の渇きを覚える。外を見ると月明かりが部屋に差し込んでくる。スマホを見ると丁度深夜の2時を回ったころだった。流石に飲み相手のいない夜は早々に酒盛りを切り上げたようで家の明かりは全て消えていた。スマホのライトを頼りに一階へ降り、台所でコップに水を汲み、喉を潤す。先ほどまで感じていた暑苦しさが消えたので、再び二階へ上がり、自身の布団へ潜り込む。しかし、不思議なことに眠気が全くなく、少しの間寝ようとしてみるが眠れる気がしない。気を紛らわせるため夜風にあたろうと再度一階へ降り、靴を履く。そして、外へ出ようと戸に手を掛けた瞬間。それを大樹は聞き取る。


『こっちだ』


「ッ⁉」


声の主を探そうと周囲へ視線を向けるがそれらしき人影は見えない。


「?……おかしいな、確かに誰かの声が聞こえた気がしたんだけど。気のせいだった?」


大樹は首をかしげながら再び戸に手を掛け、外に出る。すると先ほどの声が今度はハッキリと聞こえる


「誰だ!」


大樹はとっさに身構え、何かあった時に迎え撃てるように準備する。しかし、そんな考えがすべてかき消されるレベルの事態が大樹の目の前で起こる


「へ?」


自分でもなんて情けない声なんだと思う。しかし、この時の大樹にはこれが精いっぱいだったのだ。なんせ、先ほどまで何もなかった目の前に急に野球ボール一つ分ほどの大きさの青い炎の玉現れたのだから


『こちらへ来い』


肌を刺すような悪寒がこの炎の玉からするが、不思議と体がその声に従い炎の玉に従い歩き出す


「………この方向は、蔵か?」


炎の玉は予想通り蔵の戸を通り抜け中へ入っていく。それを見た大樹は戸を開きその後を追うように蔵へ足を踏み入れる。


「ケホッケホッ……埃っぽいな。そういえばここは去年もその前も片付けしてなかったっけ?爺さんがここだけは触れるなって言ってたし……あれ?そういえば入っちゃってるけど……まぁ、いっか」


何年放置されているかわからない蔵の扉を開けると、そこから入った風によって積もった埃が舞い上がり、その量に思わず目を細め服で鼻と口を隠す。


蔵は二階建てとなっており、炎の玉は二階へ上がっていく。大樹もその後を追うように周辺の物を押しのけ梯子を使い二階へと上がる。

梯子を上り切り、周囲を見渡すと炎の玉は一つの木箱の上で静止している。


『開けろ』


そして、ここにきて再びあの声が聞こえる。

大樹は、視線を炎の玉からその下にある木箱へとゆっくり移す。木箱は身長が170cmある大樹より少し長い程度の直方体で、見るからに価値のありそうな、そんな重々しい紫の紐で結ばれていた。


「って、あれ?解けかけてる」


言葉に従うわけではないが、ここまでくると好奇心が警戒心に勝ってしまう。解けかけた紐を完全に解き、木箱の蓋を取る。そこには………


「刀?」


木箱の中には鞘、鍔、柄の細部に至るまで漆黒に染まった刀が保管されていた。その刀を見た大樹は不思議なことにその刀から目を離すことが出来なかった。そして、思わず刀へ手を伸ばし、掴んでしまう。


そう、手に取ってしまったのだ


「!?なんだ、こ、これは.....うぐっ、記憶が...知らない記憶ガ流れ込んでくる!グァァァァ!!」


その瞬間、異常なほどの悪寒と共に何人もの、誰とも知らない人の記憶が刀から大樹へと流れこんでくる。その気持ち悪さと激し頭痛に耐えかねた大樹は刀を離し、頭を抱え発狂してしまう


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