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第2話

この連泊は俺が生まれた時からの恒例行事らしく、今年も父さんが『どうしても』と頼み込んできたこともあって、渋々ついてきたのだ


「はいぃ……」


そして、その1週間の間。父さんは爺さんの酒盛りに永遠と付き合わされるのだ。そんな父さんはこれまでのことを思い出し、遠い目をしながら力なく返事をするのだった



・・・・・・・・・・・


父さんはいつも通り爺さんに一日中振り回され、俺はこれから先1週間寝泊まりする部屋の掃除に勤しんだ。とは言っても1年分の積もり積もった埃や汚れを掃除するのは一筋縄ではいかず、結局その日は部屋の掃除だけで終了した。





「何をしておるか。盃が空いているぞ!もっと飲まんか‼」

「か、勘弁してくださいよぉ」


父さんはヒーヒー言いながら永遠と爺さんにさkを注がれる。一方で爺さんは、酒を盃に注がずそのままラッパ飲みする。相変わらず豪快な飲み方をするものだ。


「なぁ~にを言いよるか!夜はこれからじゃぞ。お主もそう思うよのう?大樹」

「………」


もくもくとご飯を食べていると横からそう問いかけてくる。しかし、大樹はそんな問いかけを無視し、近くにあったトンカツを食べる


「はぁ、何か言ったらどうなんじゃ?そんなでは友達も碌にできまいて」

「………うっす」


何度でも言う。俺はこの爺さんと話すのが嫌いだ。吐き気どころの話じゃない。それでも同じ空間で夕食を食べるのはひとえに父さんがそう頼んできたからだ。だけど、それにも限界がある。祖父に勧められさらに酒を仰ぐ父さんを横目に大樹は沸かした風呂に入る。


・・・・・・・・・

スマホのアラームが枕元で鳴り響き、朝日が窓から差し込み大樹の顔を照らす


「う、うぅ~~ん………」

まだ、夢心地の頭をゆっくり持ち上げスマホのアラームを止める。


「あぁ~……眠い」


スマホのロック画面を覗くと現在は7時半だった


「今日は……あぁ、書庫の掃除だ」


祖父の家は世間一般から見た時、大きく広い部類でその一角には色々な書物が保管された立派な書庫がある。爺さん曰く、今は亡き祖母が一生をかけて収集したものらしい。この中には曰くつきの物のほかにマイナーなもの。売れば数十万になるものまで………この話がどこまで本当なのかは正直疑わしいが、それでもこの超が3つつく田舎で1週間を過ごすためお暇つぶしの場所を掃除しなければならないのだ。


「はぁ………」


ため息を吐きながら大樹は起き上がり洗面所へと歩き出す。

顔を洗い、朝食の用意を始める。父さんは毎年の如く飲み込まれ、青い顔をして縁側でダウンしている。


「これも見慣れた光景か………父さんもよく付き合うよな。あれ?爺さんはどこだ?」


父さんと一緒に酒を飲んでいたはずの爺さんがこの場にいないことに疑問を持った大樹は周囲を見渡す。すると、玄関の戸が開く音と誰かが入ってくる足音がする。そっと覗くと爺さんがいた。


あぁ、外に行ってたのか………


大樹はそっとその場を離れ、朝食の用意を始める

朝食は簡単に白飯と昨日の残り物。そして、みそ汁を用意する。


「いただきます……」


一応父さんに朝食を用意したことを告げ、一人先に朝食を食べる


「さぁ~て、今日中に片付け終わるといいんだけど」


体操服に着替え、マスクとゴーグルを装着する。こうでも、しないと目と鼻が大変なことになるのだ。


結論から言って終わらなかった。一日中掃除して半分といったところだろうか。わかっていたことだがこの書庫は広すぎる。


夕食、は昨日と同じような光景が広がる。いや、違うところもある。それは父さんの限界だ。流石に真っ昼間から向かい酒をすることはなかったようだがそれでも昨夜からの連戦によって父さんの限界はとっくに振り切れていた。


「爺さん……父さんは限界だ。今日はこの辺で止めといてくれ」

「おぉ~?なんじゃ、相変わらず情けの無い奴め。まだ、二日目というのに」


そういって豪快に酒を仰ぐ。


………コイツの胃はどうなってんだ?


俺は本気でこの爺さんが人間なのかを疑い始める。が、それよりも父さんだ。顔を青くして、今にも吐きそうにしている自分の父を介抱し、天日干しした布団の上に横にさせる。


「おやすみ、今日はゆっくりと寝られるよ」


そういうと大樹自身も歯を磨き、寝る準備を済ませ隣に布団を敷き横になるのだった。


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