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第1話

「もうすぐで着くから寝るなよぉ~大樹」

「わかってるよ、父さん。それよりも、父さんこそめったに車が通らないからってスピード出しすぎないように気を付けてよ」

外の風景は一面緑色。道路には30分に1台すれ違うかどうか……

そんな場所へ、俺こと叉江守さえもり 大樹たいじゅとその父である海斗かいとは向かっている。


「大丈夫だよ。僕は安全運転しかしない。特に君を乗せている時はね」

「そっか……」

「それよりもだ……これからお義父さんの家に向かうわけだけど、たまには大樹も付き合ってくれないか?このままじゃ父さん近いうちに急逝アルコール中毒で死にかねないよ」

「嫌だよ、爺さんからは常に嫌な感じがするんだ。極力近づきたくない。ってことで俺はいつも通り書庫にいるから」


嫌な感じ……それは大樹がまだ6歳の頃、母である日向ひなたが目の前で通り魔に刺され死んだことをきっかけに発現した霊感が原因である。父さん曰く、日向も生まれつき霊感が強く人ならざるものが見えていたとのこと。そして、そんな大樹は子どもながらに祖父から不吉で、よくない気配を感じ取り、それ以来祖父を避けるようになった。


「それ、間違ってもお義父さんの前でいうんじゃないぞ」


そんな俺の発言に父さんはジト目でミラー越しに俺を見て言う。


「わかってるって、ソレに基本的に話しかけないんだからそんな心配もないでしょ」

「………それもそうだね」


その後は普段忙しく話せない父さんと学校の話や日常の他愛ない話をしながら道中の時間を潰した。そして、30分後、大樹たちは祖父である菅原 天日の家へと到着したのだった


・・・・・・・・

「さぁ、着いたぞ。荷物を出すから手伝ってくれ」


父さんは身長180cm超えの高身長の持ち主だが絶望的なまでに瘦せており、運動や力仕事が苦手なのである。そんな父さんが一生懸命大きな段ボールを抱え運ぼうとしている。


「無理、俺は帰宅部で極力運動はしたくないから」

「あのね、中学までバリバリ野球でレギュラーやってたじゃないか。それに最近も偶に筋トレしてるじゃないか」


そう、俺は小・中と野球をしており、特に中学で入部した野球部は世間一般では強豪と呼ばれるほどに強くその分だけ練習もキツかった。そして、その反動か高校では野球部どころか部活自体に所属することなく放課後は家で自由気ままに過ごしていた。しかし、9年間の野球漬け生活は長期間体を動かさないことを許さず、定期的に体を動かさないと体が気持ち悪くなってしまうのだ。


「アレは中学の反動で仕方なくだよ」

「だったら少しは手伝ってくれ」

「はぁ~……わかりましたよ」


後部座席に積んだ段ボールの山を運ぶために渋々重い腰を上げる。すると、俺たちが到着したのに気付いたのか玄関がガラガラと開いた


「おぉ~、遠いところからよう来たな」

「……………」


これだ。俺がこの爺さんを嫌煙する理由。それは、この男の周りには常に無数の小さな妖怪。しかも街中で見かけるものよりも濃く黒いもやのようなものを纏っており、近くにいるだけで気分が悪くなる。


「あっ、お義父さんお久しぶりです。その後も体調の方は御変わりないようで何よりです。」

「お主はいつも堅苦しい物言いをするな。もう少し『ふらんく』に話さんかい」

「あはは……すいません、性分なものでして」


この会話も聞きなれたものだ。なんせ、一年に一度、ここに来るたびにしているのだから


「まったく……お主もよう来たな。大樹」

「………うっす」

「お主も変わらないな。今年も一週間しかおらんのか?」

「はい、今年も一週間よろしくお願いします」


今年も始まる。この不気味な家での6泊7日が……


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