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小次郎転生伝  作者: 杉山薫
第一部 風魔の疾風
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 オレとゆきなは今鎌倉にいる。よそ者であるゆきなを小田原の隠れ家に連れて行くわけにはいかない故の緊急措置だ。


オレとゆきなが先に待ち合わせ場所に座っていると親方こたろうがやってきた。


「すまんな。小次郎、こんなところでの話になって」


こんなところとは鶴岡八幡宮の境内の一角のことである。


「兄者、こちらが件の女にございます」


オレがそう言うと、ゆきなは親方こたろうに挨拶をする。


「お兄様でございますか。あたしはゆきなと申します。小次郎様とのお付き合いをお許しいただきたく、ここまで参りました」


小次郎と名乗ってもいないし、付き合うって話もないはずだが、胃が痛い。


「まあ、その件は後日ということで。そのりせっとという幻術の正体が知りたいんだが、甲賀の秘術か何かかい?」


親方こたろうがゆきなが首を横に振る。


「リセットは忍術ではございません。ただ……」


「ただ?」


口ごもるゆきなに親方こたろうは首をひねる。


「甲賀の忍術はまったく関係ないのですが、リセットのことを話してしまうとあたしの命が狙われるので、できれば言いたくない」


「では、どこまでなら話せるんだい」


話が平行線になりそうなのでオレは口を挟んだ。


「そうだね……。小次郎、あんたがあたしを守ってくれるって約束してくれるならあたしのすべてをあんたにあげるよ」


だから、くノ一はいらねえんだよ!


「承知した。小次郎、ゆきな殿の護衛を命じる」


「兄者、くノ一はまずいって。くノ一は……」


「ゆきな殿、これでよいか。組織の命令は絶対だから小次郎もゆきな殿のことを可愛がってくれると思うがね」


親方こたろうはそう言ってオレを見た。オレはただ頷くしかなかった。


「じゃあ話すね」


おいおい軽いな。

命狙われるんじゃなかったのかい!


「あたしは甲賀の女、ゆきな。誰もあたしが甲賀忍びなんて一言も言ってないよ。甲賀忍びだったのはあたしの父さんだよ。でも、ある事件がキッカケで甲賀を抜けることになったんだ。今回のこととは関係ないんでその事件の話は飛ばすけど。じゃあ、ここからが本題ね。父さんは尾張の地まで逃れてきてあたしを育ててくれたんだけどあのうつけとウマがあったらしくよくつるんでいたわ。そこでリセットの能力者の存在を疑い始めたらしいの……」


「ちょっと待て! リセットの存在を疑うってリセットそのものを知らないと疑いようがないぞ」


オレは核心部分なので敢えて口を挟んだ。


「あたしもよく分からないんだけどね。父さんはてんせいしゃっていうやつなんだって。それでね……」


「ゆきなは転生者じゃないか?」


オレの相次ぐ発言に親方こたろうが苦言を呈する。


「まあ、ゆきな殿の話を最後まで聞こうじゃないか」


オレは頷くしかなかった。


「じゃあ続けるね。父さんが言うにはリセットっていうのは少しだけ時を戻す能力なんだって。あたしも含めて普通の人にはその前後の記憶は継続しないみたいなんだけどてんせいしゃっていう人は記憶が継続するんだって。それでね。父さんがいろいろリセットの能力者のことを嗅ぎ回っていたら、ある時を境に父さんと連絡が取れなくなったの。それで不安になったあたしは父さんと一緒に住んでいた隠れ家から抜け出したってわけ。父さんから記憶の継続に疑いをもつものはてんせいしゃだから守ってもらえって言われていたの。てんせいしゃはリセットとかの言葉に反応するからって。小次郎もてんせいしゃ?」


「すまん。続きは小田原だ!」


そう言い放って親方こたろうは消えた。


「どうやら敵さんのお出ましのようだね。行くぞ、ゆきな」


オレはそう言ってゆきなを抱きかかえて走り出す。


まずいな。

ゆきなを抱きかかえたままだと追いつかれるな。

仕方ねえ。


風魔忍術 疾風!


その瞬間、オレの身体が宙に浮き凄まじい速さで飛んでいく。


これでもついてこれるんだね。

じゃあ、やるしかないか……。


「ゆきな、迎え撃つぞ!」


「あいよ、あんた」


くノ一の真っ赤な顔なんて見たくもねえわ!


オレは木陰に隠れて敵を待つ。

五、六、七……。

いや、まだいるな。

オレと小娘一人に導入する忍びの数じゃねえな。手練揃いだしな。


オレはゆきな一人を残して撃って出る。


「ほお、オレが誰か分かっていて追っているのかい」


「お前には用はない。女を置いていけばそれでいい」


伊賀なまり?

違うな。


「甲賀か。ひとのオンナを口説くのにそんなやり方しか教えてもらえないのかい」


「さすが、風魔の疾風か……。もう一度だけ言ってやる。オンナを置いてさっきといけ」


「分かっているなら話は早い」


十一人か……。

風魔忍術 疾風剣!


まず、一人。

二人。

きりがねえぞ。


ん?

焦げ臭い。

人が焼ける臭い。


「もおお、あんたったら。ひとのオンナとか……。うれしいったらありゃしない。あたしは火炎のゆきな。よろしくね」


火炎使いか。

相性がいいかも。


「じゃあ、その火炎いただく。疾風火剣!」


オレの忍び刀は火炎を纏い甲賀忍びを撫で切っていく。


「十人か……。手練だけに手こずったな」


「あんた強いね」


ゆきなが何か言いたそうだ。

あと一人いるって言いたいんだろう。


オレはゆきなを抱きかかえて走り去った。


「幸せにしてね」


そっちかい!


だから、くノ一はいらねえんだよ!

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