学年代表は不出来な姉が務めます・2
先生もご存知ですよね。アデルの探るような眼差しを受けても、少しも動じないのはつまり、百も承知でおっしゃっているのだろう。
「アデルさんが引き受けてくれたら、悪いようにはしません」
学年主任が心持ち声をひそめる。
「口約束はあてにならない、なんてことはなく?」
「生徒を騙す教師はいませんよ」
今日初めて話した教師とアデルの視線が、気心が知れた仲のように絡む。
就職するのによい推薦状を書いてくださるのか。よし、念を押そう。
「私、卒業後は進学ではなく就職を希望しています」
「女性の活躍できる職場に、いくつか心当たりがあります。アデルさんなら本校は自信を持って推薦できます。そう、学習発表会にも出席したことも、優れた点として記載できますね」
「先生、私でよければ、ご迷惑をおかけした妹のかわりに行かせてください」
手のひらを返したアデルを責めるそぶりもなく、学年主任はゆったりと頷いた。
学校を出発する馬車には、アデルを含めて三人の女生徒と引率の女性教師。もう一台の馬車には男子生徒三人と男性教師。
アデルが行くことを直前に知ったジェラールは「現地に先回りして俺が出迎えたら、ちょい面白いな」と、どこまで本気か分からない口調で言って、出発が早朝なのにもかかわらず見送りに来た。
「本当に付き合ってたのね、あなた達」
言ったのは上級生ではなく、女性教師。偽装であると告白しては偽装にならない。
仕方なくペコリと頭を下げたアデルを、照れているととったらしい。
「ルグラン君でも、付き合うとなるとあなたみたいなタイプなのね」
先生、ちょっとつまらないと思ってますね。
そう突っ込みたくなるような呟きに、他の女生徒は無反応。
ふたりとも馬車の揺れをものともせず、熱心に書きつけを読んでいて、会話に参加する様子はまるでない。
三年生代表女子は学年一真面目だと言われていると聞いた。二年生代表女子も同じタイプに見える。
これなら逆にうまくやれそうだと、アデルは安堵した。




