学年代表は不出来な姉が務めます・1
秋の学習発表会。お手軽な名前なのに中身はなかなかハードだ。いくつかの高等専門学校から代表生徒が集まり、日頃の学習成果を発表し存在感を示す。
今年の開催地はアデルの通う学校から馬車で二日半もかかる街だと聞いた。
一年生代表には飛び級入学者フレデリック・カペルが順当に選ばれた。そして選出されたもうひとりは、なんと我が妹オデット・ブラッスールだった。
理由は「実技において非凡な才能を示したこと」とされたが、マルセルの見解では「カペル家とブラッスール家が恩讐を越えて机を並べて学んでいる、という話題性を狙って」だ。
それを聞いて父が渋面になったのは言うまでもない。
「元々うちとあちらには確執はないんだ。正々堂々と勝負して、潔く全てを明け渡したんだからな」
などと、才能もないくせに大博打に出てすっからかんになったご先祖を良い者のように表現したところで、世間様には伝わらない。
家のなかで身内に誇っても意味はないし、マルセルは話半分、母に至っては完全に聞き流している。
往復に五日もかかる旅は、オデットには無理。しかし代表に選ばれるのは大変名誉なことで、軽々しく辞退はできない。
家族会議の末に「オデットは高熱を出し、とても馬車での移動に耐えられそうにない」と、前日から仮病を使うことにしようと決まった。
そしてそれは裏目に出た。
「なら仕方がないですね。カペル君ひとりに行ってもらいましょう」とはならず「それならば、アデルさんお願いします」とあっさりと首がすげ替えられて、アデルはとっさに言葉を失った。
申し訳なさそうにしたのがよくなかったか、親に頼まずに姉である自分が伝えたのがいけなかったか。自問するより、まずすべきはお断りだ。
「先生、さすがにそれは。私は魔術を使えませんし、勉学も優秀には程遠く、一年遅れの入学でむしろ人前に出せない生徒です」
学年主任教諭には「『妹が行けないなら姉でいいや』は、ないだろうよ。平々凡々な姉だからお忘れでしょうが、学年でたったひとり魔術の使えないのが私アデル・ブラッスールなんですよ」と申し上げたい。
学年主任の柔らかな表情は、アデルから見れば嘘くさい。
「そう卑下するものではありません。この教育活動の趣旨は『学校、学年の垣根を越えて交流し学び合う』というものです。アデルさんは一年生ながら上級生にも認められていると聞いていますよ」
それはジェラール先輩の「俺の彼女」宣言があって、学校中の女子から避けられているせいでは?
☆深夜の皆さま☆
サクサク読めます
他で気も頭も使うぶん、読み物は安心・安全・安定でいきたいですよね。
この世界には「ざまあ」も「祠」も「ダンジョン」もありませんが、良質な男子が生息しております。
正統派貴公子をお望みでしたら別作「花売り娘」を。
愛されひたむきヒロインのヒストリカルは「地味顔の短期雇用専門メイド」をオススメします。
どちらも、頭を空っぽにして読めます。
深夜の読書のお伴ができましたら幸いです




