アデルちゃんが好きでもっと仲良くなりたい
「アデルちゃんと、ふたりきりになりたい」
「だめです」
「そんな冷たいこと言わないでくれよ」
「つめたくないです。あったかいです」
私とふたりきりになりたいという交渉を、オデットとするのは、どうなんだろう。
ここまで黙って聞いていたアデルも、いい加減飽きてきた。
ジェラール先輩は、さっきから手を変え品を変えしているけれど、オデットは「私も一緒」とまったく譲らない。
今日もまたジェラールが加わっての空き教室の昼休みだ。
「俺はアデルちゃんが好きで、もっと仲良くなりたいんだよ」
オデットの瞳に星が宿る。
「カチカチ先輩! 一緒です! 私もお姉ちゃまが大好きで、もっと仲良くなりたいです!」
「オデット、私達はこれ以上ないほど仲良しだと思うわ」
アデルはとうとう口を挟んだ。
「お姉ちゃまっ」
オデットが両手で口を押さえるのは、嬉しくて変な声が出そうになるから。
「あ――、ちょっといいかな。俺の『アデルちゃん好き』は聞こえなかったことになってる?」
ジェラールが片手を肩の高さに上げて発言する。
「ジェラール先輩、どなたにでも好きって言ってきましたよね。本気にしたら、後から私が恥ずかしくなりそうです」
「信用がない」
自分の額をペチッと叩いて嘆くジェラール。オデットが真似したがるので、やめて欲しい。
「な、頼む。一回でいいから」
「先輩が言うと、なんだか卑猥」
「どこがだよ」
何を一回かをはっきりさせておかないと危険な感じがする、ジェラール先輩の場合は。
まあ、魔力測定についてジェラール先輩には有力な助言をもらった。オデットはマルセルお兄ちゃまに遊んでもらえば。アデルは思案の末、譲ることにした。
「半日でしたら」
「え! いいの!?」
喜ぶのではなく意外そうにされるのなら、頷かなければよかった。やっぱりやめておこうかと思うアデルに、ジェラールの長い腕が伸びる。
ぎゅっ。――これは。
先にオデットがアデルに抱きついていた。しかも肩をうまく使い、ジェラールとの間に隙間を作っている。
「お姉ちゃまの抱っこは、ゆるしません!」
「前に、カペル君には『させてあげる』って言ってたろ。俺はオデットちゃんの好きなカチカチもあげたのに」
唇も目も三角にしたオデットに対し、ジェラールが不服そうに訴える。
「カペル君にだって、本当は抱っこさせませんっ。言っただけです。お姉ちゃまは私のお姉ちゃまです」
「すっげえ独占欲丸出し……」
軽く引いている感すらあるジェラールに、誉められたと勘違いしてか、オデットは「ふふん」と鼻を鳴らした。




