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カチカチ先輩と仲良しのお姉さん・1

 火ばさみをもらう約束を取り付けたオデットは、爪先立ちになりくるくる回って喜びを表現した。

アデルにとっては見慣れたものだけれど、なかなか独特な喜び方だ。


 去り際にジェラールは、近々開催される三学年合同の文化講座の入場券をくれた。


 学校や身分の枠を越えての交流を図るもので、就職相談会もありなかなか面白い、とアデルにも参加を勧める。

 ジェラールは学校行事に熱心なタイプだっただろうかと不思議に思っていたら、なんと実行委員のひとりだった。仕方なく引き受けたらしい。


「カチカチ先輩、私も行きます」

またもやオデットが先に返事をしてしまったせいで、アデルの参加も決まったようなもの。


「茶話会で、特別に裏メニューを出す」

ジェラールの一言がアデルの背中を押した。








 文化講座に着ていくものがわからない。アデルはマルセルの部屋を訪問した。

机の上に広げていたものはそのままに、話を聞いてくれる。


「制服では所属や階級がひと目でわかってしまうから、生徒はあえて普段とは違う装いをしてくるよ。変装に近いね、それがしたくて文化講座に出席してるんじゃないかな」



 その年ごとになんとなくの流行りはあるらしい。童話の世界のお姫様の格好を真似したり、猫耳ヘアバンドが流行ったり。男子が騎士の鎧を着用した年もあったというが、体力的にきつかったそうで気分不慮者が出て今は禁止になっている。



 悪目立ちを避けようとするなら、みんなと一緒がいいのよね。


「今年の流行は?」

「僕は詳しくないんだよ。当日見て『今年はこんな感じか』と思うくらいで。それこそルグラン君に聞いてみたら? 彼は女友達が多いから」


 「彼はモテるからね」とひやかすように笑って、教えてくれる。それもそう。納得し、アデルは礼を言って自室に戻った。



 マルセルとアデルが「はとこ」であると、先日部屋を見に来た時に知ったことについて、その後会ってもジェラールは何も言ってこなかった。


 ひょっとして「はとこ」の意味がわからなかったとか?


 学校では、お昼休みにひょいと現れ話すくらいで、特にアデルが困るような態度を取ることもない。

マルセル「先生」と「生徒」が恋仲であるという噂は見事に聞こえて来ないが、アデルが孤立しているから届かないだけかもしれない。


 以上を一言で済ませるなら「平穏な日々を送っている」となるのだった。



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