カチカチ先輩の相棒はオデット・2
カペル君の頼みごとって、なに。アデルにはまったく思いつかない。
ジェラールにとっても意外だったらしく、不可解だという顔をしている。
「近場で害虫駆除があったら同行させて欲しいんだと」
「どうしてまた」
だろ? とジェラールが顎をしゃくる。不思議でならないお兄さんお姉さんと違い、オデットだけは大喜びで手を打ち鳴らす。
「私も! 私も行きます!」
アデルにひとつの考えがひらめいた。
「カペル君はもしや……オデット枠!?」
「それは失礼にあたらねえか、さすがに。飛び級入学生様なんだろ」
ジェラールは冷静にもっともなことを言い「まあ、学生のうちに変わった体験をしたいのかもな。ウチは有り難いばっかだから、ふたつ返事で引き受けた」と続けた。
うずうずしながらも大人しくしていたオデットの我慢の糸は、ここでぷっつりと切れたらしい。
「カチカチ先輩!私も みっつ返事で引き受けてください!」
手を上げてアピールするオデット。
ふたつ返事の次が三つ返事という誤った使い方を訂正せずに、アデルはジェラールに強い視線をぶつけて「私は行きませんからね」と無言のうちに伝える。
「そうだな……オデットちゃん。委託料を受け取らないってことなら、代わりになんかプレゼントしようか」
ジェラールが取ったのは、物でつって興味を逸らす戦法だった。
「え! ほんとですか」
オデットの瞳がキラキラとする。
「何でもってわけにはいかねえが、とりあえず欲しい物言ってみな」
「カチカチが欲しいです!! お姉ちゃまとお揃いでふたつ!」
――全然欲しくない。
私の瞳は艶消しになっているに違いない。アデルは意識的に瞬きをした。
「お……おう。火ばさみなんかでよけりゃ」
オデットの圧されてジェラールは首を縦に振ってしまっている。
「やった――」
オデットが両拳を突き上げる。
「でもオデットちゃん、何に使うんだ?」
「うちの屋根裏でネズミが走ると、お母さんが嫌がるのです。なので待ち伏せをして、カチカチではさみます!」
「なに!?」
肩幅に足を開いて立ち、片手を突き上げて宣言するオデットに、ジェラールが瞠目する。
「よくよくお仕置きをして、遠くへ捨てに行きます!うちでネズミは飼えないので」
「アデルちゃん」
「オデットのことよろしくお願いしますね、カチカチ先輩」
私は知りません。救いを求めるジェラールにアデルは澄まし顔を向けた。




