表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/170

前前世の恋 私がコゼットだった時・1

アデルの前前世の名はコゼット

覚えていただかなくても少しも差つかえありません

 神殿で暮らすのは神職ばかりだと思いがちだが、神職より下働きの人数がはるかに多い。


 コゼットは十二歳で奉公に出た。貧しい農村出身で奉公は口減らしだ。だから長期の休みもなく、年に一度弟妹へささやかな土産を持って里帰りするのを楽しみにしていた。


 それも三日目ともなると親がいい顔をしないので、一泊だけして神殿へ戻る。



 コゼットの担当は床磨き。広い神殿と生活棟は、毎日朝から晩まで掃除をしても終わるということがなかった。


 無駄なおしゃべりをすると叱られる。それに下働きのうちでも最下級のコゼットを気にかける者はいない。


 珍しく呼び止められる時は、指示か苦情と決まっていた。



 そんな中レイノー様は違った。まだ若い神官で、こちらへは半年前にいらした。

香炉の灰を何かの拍子にぶちまけてしまいお困りのところに、ちょうどコゼットが行き合い速やかに片付け、感謝された。


 名を聞かれ教えると「コゼットさん、かわいらしいお名前ですね」と言ってくれた。


 もちろん自分だけに優しいなんて勘違いをするほどうぬぼれてはいない。誰にも丁寧に接するお方なんだと理解している。



 それからというもの、人目につかない場所ですれ違ったりすると、隅っこに避けたコゼットに甘いお菓子をひとつ下さるようになった。信者さんのお供えのおさがりらしい。


「私だけ、いただくなんて」

申し訳ないとお断りすると

「女中頭に皆で分けるよう下げ渡していると聞いていますが、あなたの口に入るほどの数はないようですから。これは他の神官も余した分なので、お気になさらず」

他の皆は先に貰っているのだと、教えてくれた。


 そこまでおっしゃるなら。ありがたくいただいたお菓子は、夢に見るほど美味しかった。



 レイノー様にまた会えないかと期待して、コゼットは毎日の掃除に励んだ。

 今までは使わない部屋の掃除には身が入らなかったのに、レイノー様はこういう部屋の時にこそいらっしゃるかもしれないと思えば、床を磨く腕に力も入ろうというもの。



 ある日、コゼットの見る前で下働き仲間が女中頭に呼ばれて、そのまま姿を消した。

不思議に思いつつも理由など聞けないコゼットの耳にも、風の噂は届く。


「若い神官とねんごろになり、それが知られてしまった。神官は『より深く神に仕えるように』と辺境の地へ行かされ、仲間内で一番の美人だった彼女は人相が変わるほど殴られ、罰として髪を短く刈られたうえ、着の身着のままで叩き出されたらしい」


コゼットは恐ろしさに震え上がった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ