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今、明かされる真実・1

 空き部屋は今はひとつだと案内してくれたのは、とても感じの良い女性。


 女の子は母親に似てくるというから、今は細いアデルちゃんも将来的には、ふくよかになるのかもしれない。ジェラールは密かにそう思った。



「先日アデルを誘ってくださったお友達かしら。仲良くしてくださってありがとう」


 おっとりと微笑むブラッスール夫人と同質のものを、行儀良く返す。


「お礼が遅くなって、すみません。お昼をごちそうさまでした。とても美味しかったです」


ブラッスール夫人は嬉しそうにする。


「うちはこんなだから、料理人もおりませんでしょ。私が食事のお支度をするのですけど、お口に合ったのならよかったわ。そうそう、事前に言ってくだされば朝食とお夕食はご用意できますからね」


 食事つきの下宿とはありがたい。そして夫人の手料理は、お世辞ではなくおいしい。ジェラールはすっかり借りる気になっていた。



 先週自然公園で害虫駆除したことを、姉妹は家で話さなかったらしい。

食卓にも一家団欒の席にもそぐわない話題だろうから、不思議でもないか。



 在宅を期待していたアデルは、あいにく留守。父と出かけているとかで、事前連絡もなしに訪れたジェラールを快く受け入れてくれたのは、アデルの母ブラッスール夫人だった。


 姉妹と同じ高専の上級生で「半年後に卒業するので、実家を出て一人暮らしをする部屋を探している」と告げた。



 卒業すればアデルに会う口実がなくなる。それならひとつ屋根の下に暮らせばいいと閃いた時には、我ながら冴えていると思った。


 虫の入った箱を行政府に置きに行きがてら、思案した。



 カペルの手際の良さにアデルの影を感じ、それとなくふたりを観察していたものの、アデル、カペルともに目立った変化はなかった。


 どういうわけか火ばさみを気に入ってしまって返そうとしないオデットを根気よく説得したのも、カペル君。

毛虫は彼がひとりで片付けたのだと納得するより、なかった。



空き部屋を見せてもらい、廊下へと出る。


「お部屋のお向かいに住んでいるのは、学校の先生なのよ。ひょっとしてご存知かもしれないわ」


コンコン、コンコンと扉を叩く。


「今日はまだ顔を見ていないけれど、いるかしらね」


しばらくして、カチリと音を立てて扉が開いた。



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