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初デートはドキドキがいっぱい・1

 ジェラールに「週末出かけない?」と誘われたアデルは「オデットも一緒でいいなら」と答えた。

休日にオデットをおいて出かけようものなら「お姉ちゃまはまだ帰らないのか」と言い続け、父母が閉口するのは目に見えている。


「やっぱ、そうなるよな」


 ジェラールはあっさりと受けとめ「天気も良さそうだし、オデットちゃんも一緒ならピクニックなんてどう?」と提案した。



 三人でいくつもりでいたアデルに

「カペル君も行けるって」

オデットが嬉しそうに報告する。


 ピクニックなんて外でお昼を食べるだけ。カペル君が興味を持つとは思えない。


「誘ったの?」

「はいっ。カペル君も楽しみにしてるって」


 自分が楽しみにしているからといって誰もが楽しみにするとは限らない。だいたいオデットは、アデルと一緒ならどこへ行っても楽しいのだし。

けれど、誘っておいて来なくていいとは言えない。結局四人で出掛けることになった。






 母の焼いたキッシュ、パン、ハム、チーズ、果物とリンゴジュースをバスケットに詰めて出かけ先は、またしても自然公園。


「あそこですか……」


 気の進まない態度をありありと見せたアデルに、ジェラールは「わかってないな」と、したり顔で言った。


「一匹大きいのが出たら、そうそうは出ないもんだ」


 ムカデを退治したから今シーズンは大丈夫、むしろあそこが一番安全、と自信たっぷりだ。プロがそう言うならと、アデルは渋々ながら譲った。



 空は澄みわたり風は心地良い。絶好のピクニック日和に、来て良かったという気になる。


「あっち方向は、やめておこう」


 ジェラールの意見にアデルも同意する。公園は広いのに、ムカデのいた方角へ行こうとは思わない。思い出すだけで焼けた匂いが鼻の奥によみがえるようだ。



「木立の間にテーブルセットがいくつもあるから、そこへ行こう」 


 よく女の子と来るのだろうジェラールは、さすがに詳しい。もちろんアデルは「誰と来たの?」なんて妬いたりしない。


「昼はアデルちゃんの手作り?」

「母です」

 

 普段しない料理を今日に限って早起きして作るなんて、絶対にない。


「お姉ちゃまはできないんじゃないです。やれば上手に出来る子です! ね?」 


 なぜかカペルに同意を求める。オデットに慰められた感があるのは微妙だと思うアデルに遠慮してか、カペルは曖昧に微笑するだけ。



 右手をアデル左手をカペルと繋いで跳ねるように歩くオデットは、最高にご機嫌。


 後ろから重いバスケットを持ってついてくるのがジェラールだ。

なんだか申し訳ないと振り向いたアデルに「気にすんな」とさっぱりとした笑みを返す。


 アデルの胸にふわっと温かいものが湧いた……のは、ここまでだった。


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