表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/170

ブラッスール姉妹の初彼氏・2

 部屋を訪ねる時は、ふたりきりでなくオデットが一緒。オデットをマルセルに預け、アデルは数分で退出することもある。


 問題は窓の位置が高いこと。マルセルのいる部屋の廊下の窓は、アデルの肩より少し高い。向かいの棟から見ると、背の低いオデットの姿は見えない。


 そして迎える時にマルセルはオデットの為に少し膝を折る。離れた場所から目撃すると、アデルの頬にキスをしたように見える……かもしれない。



 昼休みに毎日のようにオデットを連れて行って大丈夫だろうかと、当初は気にしていたが、誰からも何も言われないので気を抜いていた。


 一年生の教室からは見えなくても、二年生の階からはよく見えたか。



 オデットの教育を家ですればいいと思われるかもしれない。しかしオデットの睡眠時間は十一時間。マルセルが帰宅する頃には、もう寝ている。

眠た眠たでは身につかない。というわけで、この昼休みの教育が必要なのだった。



 言われたのが苦情なら「すみません」で済む。「もう行きません」は嘘になるからダメ。


 でも「深い理由があるのよね? その理由を教えて」と言われたから、それらしい理由が必要だ。


 はとこであると隠すつもりはなかった。それを何気なく父に話したところ、

「試験問題をあらかじめ教えてもらっているんじゃないか、なんて言い出す輩が出てくると思うよ。オデットとセットのアデルは、良くも悪くも目立つからね」


 自然に知られるのは仕方ないが、そうでなければ言わずにいたほうがいいんじゃないか。父の意見はもっともだと思った。

 


「学業に遅れがあります事を先生に相談したところ、できる範囲で協力すると言ってくださったので。もちろん私だけでなく、どなたにも同じ対応をされると存じます」

「――相談」

 

 眉をひそめて言われては「相談」が不適切な行為のように聞こえる。「悩みを打ち明ける」より「相談」の方が親密度が低いかと思ったのに、言葉の選択を誤ったらしい。



 ほとんどの生徒が通り過ぎるなか、成り行きが気になるのか、立ち止まり遠巻きに眺めている人もいる。


 声をかけてきた二年女子二人組が納得していないのは、無言で見つめるという態度からもよくわかる。

でも、アデルにはこれ以上話すことは何もない。もういいかな。



「失礼いたします」

浅く一礼し、立ち去ろうとすると

「まだ話しているのに、それはないわ」

止められた。


――時間の無駄。アデルの表情に露骨に出たらしく、二年生の口元が引きつった。

面倒ごとの香りが強くなる。

普通に学校生活を送りたいのに、普通って難しい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ