表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/170

カペル家のお茶会でアデル暴れる・8

 侍従長が水の入ったグラスを小卓に置きながらアデルに尋ねる。


「剣をたしなむご令嬢はいらっしゃいましょうが、珍しい流派とお見受けいたしました。不勉強で恐縮ですが、流派を伺っても?」

「習ったのは剣術の先生ではないんです。古流を研究しておられる方が以前近所にお住まいで、親類が通い詰めていたものですから、私も一緒に」



 いくつかの古流があわさったものだ、と侍従長に説明する。

通い詰めていたのはマルセルだ。魔術を人に向けないのは決まりだが、剣に魔力をまとわせるのは可不可のはっきりしない部分。

それもあって、凝り性のマルセルは当時剣に熱中していた。



「今もたまに練習しますが、遊び程度です。習ったのは『この技からこの技へ』と技の連携の仕方で、私は決まった型を繰り出すだけなので、実戦的ではありません」


 であるからこその余興、と種明かしをする。アデルの連携技は、関節が柔軟であるという特性を活かしたものなので、マルセルにもできない。



「でも美しかった」


 呟くカペルは、遠慮しているのかアデルに背を向けたまま。


「動きが美しいのは全力ではないから。余力があれば姿勢を意識できます。全力でかかっても美しいのが本物の剣士だと思います。私では命のやり取りは無理ですね」


 もう汗は拭き終えたから、こちらを向いても大丈夫だと分かるように、あえて音をたてて空になったグラスを小卓に戻す。


 

「フレデリック様も、お水を」


侍従長の声に、カペルがこちらを向いた。


「女性には長剣は重いのに、なぜ長剣にされたのですか」

「刺突用の剣も習熟度は似たようなものですが、誤ってケガをする確率が高いので。両刃の短剣は、技を披露したくなかったから」


 カペルの表情から、理由を考えているのだとわかる。内緒にすることでもないので、続ける。


「屋内で長剣を振り回す機会は、まずありません。狭い場所で使い勝手のいいのは短剣ですよね。私の攻撃パターンは幾種類かしかないので、手の内を知られると私の勝ち目が減じます。あまり見せたくないんです」


 カペル君が家に押し入る心配はしていない。が、どこで誰が見ているかわからない。短剣技は隠すことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ