表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/170

ジェラール先輩のお誘いは事件・4

 過去と違うのは、困った状況でも「玉」絡みではないこと。ジェラールは男前の部類だが優男ではない。よってここで私が命を落とすことはない、アデルはそう判断した。


「剣があったら、役にたちますか」

「――ないよりは。斧槍だと最高だね」


 斧槍。形状がわからないが、槍の先が斧の形だと思えばいいのか。それならムカデと多少距離がとれる。



「その斧槍が火をまとっていたとして、万一、積もった落ち葉に引火した場合、先輩の力で消せますか」

「俺は水魔術を得手としてる。ここは水辺だから、まず間違いなく消火できる」



 質問の意図を尋ねることなく返答してくれるから、やりやすい。アデルの腹は決まった。



「先輩、もうひとつ。秘密は守れますか」

「秘密を守れるかどうかは分からねえが、女の子との約束を破ったことはないね」


それで充分。

「では、私の秘密を守ると約束してください。これに関して一切の質問もなしです。――出しましょうか、お好みの武器」



 さすがにジェラールが首だけひねってアデルの顔を見た。申し出が冗談ではないと、ひと目で理解したらしい。


 ムカデの足がぞわりと動くのを横目に見て顔を戻す。

ムカデはおとなしくしているのではなく、こっちの出方を窺っていたのかもしれない。体が大きいと知恵もまわるのか。



「先輩、手をお借りします。ムカデから目は離さなくていいので」


 アデルは隣に移動してジェラールの右手を取り、自分の胸に押し当てた。


「お!?」


 こっちを見そうになるから「ムカデ!牽制!!」と小声で警告する。


「ここ、触って分かりますか。硬いところがありますよね? 頭に欲しい武器を出来る限り具体的に思い浮かべながら、真上に引いてください。蜂蜜スプーンを持ち上げるように。徐々に重さが増しますから、気を付けて」



 胸の谷間の少し上にある丸いしこりに触れさせるということは、当然他の柔らかい部分にも手はあたる。

何も感じないと言えば嘘になるけれど、そんなことを言っている場合じゃない。


 それに精度を高めるために、マルセルと数え切れないほど繰り返したから、慣れてはいる。今も胸の先端を指が掠めて腰がぞくっとしたのは「ここも腕も同じ皮膚で皮は一枚。気にしない気にしない」と言い聞かせてお終い。



「いきます」


 アデルも集中してジェラールの手首を両手で掴み、胸から天に向けて引き上げた。


 細く白い輝きが太さと量感を増し、剣を形作る。両手を伸ばせるだけ伸ばして胸から出たのは、長い肉厚の剣だった。斧槍じゃないじゃないの、ちょっと見てみたかったのに。



 叩き斬ることを考えて、馴染みのある武器にしたのかもしれない。

抜ききったところでアデルは手を離した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ