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フレデリック・カペルの告白・3

 レイノー様も今になって思えばお若い神官だったけれど、コゼットは世間知らずの子供だったから、レイノー様がとても大人に見えて憧れた。


 ファビアンは男らしくて爽やかで頼もしく感じた。ええ、実際は田舎娘のコリンヌを騙す悪い男だったわけですが。

 心底腐っていたのではなくファビアンにも葛藤はあったと聞いて納得したから、そこはもう言いっこなしだ。



 人妻シャンタルだった時に会った通りすがりの男性、あれは警戒心を抱かせるのに充分なほどの美男子だった。

魔法球を呑み込むほど気が動転したのは、生活に疲れた顔と片付けもしていないボロ家とを美男子に見られたせいだ、と主張したい。



 さて、目の前でしんみりとしているカペル君は過去になく品の良いご令息で、欠点が見当たらない。あるとすれば、女の趣味が悪いことか。


 勘違いをしやすくて思い込みも激しく、無駄に行動力があるなんて、私とオデットを足したそのもの。そんな子を好きだなんて、もの好きもいいところ。


アデルはなんだか申し訳ない気持ちになってきた。



 すぐに性格を変えることは難しくても、落ち着いた大人の女性を目指そうと決意する。ひとまず謝っておこう、そうしよう。


「ごめんなさい」

「返事を急がないで、保留にして。ルグラン先輩やドブロイ先生に追いつくのは大変なことだけど、これまでより努力する」


カペルが目に力を込める。


「だから、時間をください。アデルさんにふさわしい男になるから」



 今の「ごめんなさい」はお断りの意味ではなく……と言えない雰囲気に、アデルは頷くばかり。

でもこれだけは言っておきたい。 


「私よりカペル君のほうが、よっぽど立派だと思うのよ。魔力量が減った私はごく平凡」

「――平凡?」


 疑わしげにされるときまりが悪く、目を泳がせてしまった。一方カペルは物憂い表情をする。


「オデットさんにも、きちんと話さないと」

「指人形相手に?」

「なんてひどいことを言うの、アデルさん」


 思わず零れた本音を、真顔で非難された。

よそから見れば、指人形オデットを尊重するジェラール先輩とカペル君の方が、絶対におかしいと思うのに。


 みんなオデットが好きなのだ、私も含めて。アデルの胸に広がる温かい気持ちを、そのまま言葉にする。


「今年もオデットと私をよろしく、フレデリック君」


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