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フレデリック・カペルの告白・2

「そんなことは分かってる。分かってるけど、好きなんだ」


ギリギリ聞き取れるくらいの小さな声。


「カペル君……」

「オデットさんに初めて会った日、コゼットさんによく似ていて懐かしかった」


言われてみれば、身長も体型も同じ感じだ。


「生身でないと気がついたのは、アデルさんに会ってから。それまではオデットさんがコリンヌの生まれかわりだと思っていた」


 カペル君を騙せるくらいオデットがよくできていた、ということだろう。その後ずっとオデットの言動がおかしいたびに手助けしてくれた。



「僕が近くにいたらコリンヌは幸せになれない。そう思って諦めるつもりだった。でも君を苦しめるばかりだった魔法球の力でオオトカゲは精霊と分かった今回は、これまでとは違う」


 カペルの向ける真剣な眼差しに、アデルは体の芯が痺れたように感じ、身動きひとつできない。


「ごめん、やっぱり君が好きだ。コリンヌも同じ気持ちでいてくれたら、嬉しい」



 アデルと呼んでいたのにコリンヌになっている。あの夜の続きだと錯覚してしまいそう。

私もファビアンが好き、今も好きと言いかけたところで。



「女の子ひとりに男がふたり。剣で勝負をつけるしかないと思って、今日、ルグラン先輩に決闘を申し込んだ」


え、なんですかそれ。驚きの展開にアデルの口が開いたままになった。


「もちろんすぐじゃない。お互いにケガが治ってからのつもりで。でも断られた」


 当たり前だ。そんな前時代的な話は今時聞いたこともない。そもそも争われるのはとんでもない美女と決まっていて、私では足りない。そして先輩は元偽装彼氏で、彼氏じゃない。



「『アデルちゃん争奪戦をドブロイ先生が黙って見ているはずはないから、決闘はよした方がいい。あの人に勝てる気がしない』って」


 まさかの理由だった。言うジェラール先輩も先輩なら、納得するカペル君もカペル君だ。


「それに『分かってねえな、カペル君。決めるのはいつだって女の子なんだよ』って」 



 ジェラールの口真似をする。彼の言いそうなことだと、おかしくなる。


「それで私はどうしたらいいの?」

「どうしたらいいんだろう」


 途方にくれたように言うから、つい笑ってしまった。

夜中の会話に内容を求めることが間違いかもしれない。



「聞き方を変えるわね。カペル君は私にどうして欲しいの」

「僕を好きになって欲しい。他の誰かじゃなくて僕を選んで」


 もう君を待って探し続ける人生は嫌なのだと、カペルは呟いた。


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