前世について
個性的な姉妹の物語も終盤となりました。
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完結までお付き合いいただけますように
会話の内容が濃すぎると疲れるものらしい。カペルとアデルふたり揃って、今日はここまでにしようという雰囲気になった。
「ジェラール先輩の様子を見てくるわね、カペル君」
「それなら夕食を運ぶ時間は昨日と同じでいいかを聞いてきてくれないかな? アデルさん」
「お安い御用よ、カペル君。ジェラール先輩がいいなら、私達も先輩の部屋で食べない?」
ファビアンとコリンヌから、フレデリック・カペルとアデルに戻るために、お互いの名を呼び合う。
アデルが出ていきひとりになるとカペルは大きく息を吐いた。
剣を握りこちらを睨みつけたコリンヌの表情は今もありありと思い浮かぶ。血しぶきが飛び散った様子も。
彼女を止められなかった。彼女の心に響く言葉があればまた違った結末を迎えることができたかもしれないと、どれだけ後悔したことか。
身元を偽って出会った始めから既に誤りだっただろうけれど。大丈夫だなどとなぜ思えたのか。
血の匂いのする部屋で「お珠様」とコリンヌが呼ぶ宝珠の力を使い、彼女の生まれかわりを願った。
宝珠が力を失ったことで、得るはずの報酬はゼロに。他の三人に賠償するためには、危険を伴う高額報酬の仕事を引き受けるしかない。
その何度目かに命を落としたのは、ファビアンにとって望むところだった。
次に彼女に会った時は古物商をしていた。前世だ。
魔法球が発見されたらしいという噂を聞きつけて、村を訪ねる途中だった。
異様なほど掘り返された畑の傍らで、肩を落として立ち尽くす農婦。日に焼けておそらく年齢より深く刻まれた皺に、苦労が垣間見えた。
自分が関わるとよい結果を生まないのは、身に沁みている。
だから今回は仕事の範囲を逸脱しないと決めた。
魔法球は彼女のそばにあるはずだから、買い取ることで生活が楽になればそれでいい。
なにがいけなかったのか。彼女は魔法球を奪われまいと飲み込む際に喉に詰まらせ――
またしても助けることができなかった。
そして三度、魔法球の力を使い、フレデリック・カペルとしての人生が始まった。




