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カチカチ先輩と小さいオデット・1

 カペルが人を呼び、アデル達はひとまず「立ち会い人の家」の離れに宿泊することとなった。


 立ち会ってもいないのに立ち会い人と呼ぶのは納得がいかないけれど、そんなことを言っても始まらない。


 姿を見せた立ち会い人はカペルひとりでないことに驚きながらも、無事であると知り涙を流さんばかりに喜んでくれたので、アデルとしては思うところがあったものの呑み込むことにした。






 待機していた医師の診立てでは、カペルの腕の傷は見た目ほど重症ではなく跡になっても年々薄くなるだろうとのこと。

今は母屋で、立ち会い人と村長に今日の出来事を説明をしている。



 ジェラールの膝は幸いにも骨に異常はなかったがひどい打撲で、一月(ひとつき)は大人しくしていなさいと医師に厳命された。


 全身打撲だらけで「起きても寝ても痛い、筋肉痛で夜中に動けなくなりそう」と顔をしかめるジェラールに、アデルは頭を下げた。


「ジェラール先輩、オデットのことを黙っていてごめんなさい」


 ジェラールが使う予定の客室にいるのは、アデルとジェラールのふたりだけだ。


ジェラールが開きかけた唇を閉じ、ふうと息を吐く。


「みんな無事に戻ってこられたんだ、そんな何度も謝るなって。オデットちゃんはちょい可愛いサイズになってるけどな」


 オデットはハンカチで作った寝袋に入り、本人の希望により、寝転ぶジェラールのお腹の上に乗ってお休み中。



 オオトカゲに噛み砕かれてオデットが絶命した、と思ったジェラールに「オデットは元々お人形で、今は指人形になっています」とオデット(仮)を見せながら打ち明けたところ、ジェラールは混乱のあまり目眩を起こした。


「ちょっと時間をくれ」

「カチカチ先輩は頭が悪いですね」

「……まんま、オデットちゃんだな」

「だからそう言ってます! ちょびっと見た目が変わっただけでわからなくなるなんて、ダメダメですね」

「――そこまで言うことねえだろ」

「お姉ちゃまとカペル君はすぐわかってくれたのに」

「天才を引き合いに出すな、俺は凡人なんだよ」


 というやり取りを経て「これもアデルちゃんの力か」と落とし所をみつけたようだ。



「魔法球を――」

「待った」


アデルの話を遮り、いつもの調子で言う。


「女の子の秘密を簡単に打ち明けるのはよせよ、アデルちゃん」

「でも――」

「とカッコつけたが、聞いても理解できないってのが本音。魔力がどうとかは実際、体感によるところが大きいだろ。体も痛いし、難しい話は面倒だ」


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