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私達だけの負けられない戦い・7

 アデルに閃くものがあった。オオトカゲが民話のオオトカゲと同じなら。魔法球を返せばすむ話では。


 魔力で生命を維持しているから魔力のあるカペル家の人を食おうとする。魔法球があれば、今後カペル家から犠牲を出さなくて済むかもしれない。



 魔法球ならここにある、私の胸に。この硬い部分に埋まっていると確信している。


 ちょっと切り開いて取り出したらいい。血は出るけれど、傷は浅いはず。私の魔法球を進呈するので、これで妥協して欲しい。なくても私に支障はないわけですし。


アデルは腰につけていた短剣を握った。



 胸のボタンを三つ外し衿元を広く開ける。指先で位置を確かめて、右手に持った短剣の先を触れさせた瞬間。



「やめるんだ! コリンヌ!!」


 響いた声に驚いて反射的に手を止めると、カペルが強張った顔をこちらに向けていた。


「剣を自分に向けないで!」


 真剣な眼差しで懇願された。なぜかオオトカゲまで動きを止めてアデルに注目している。

そこまでされては、剣を下ろすしかない。



「そうじゃなくて――」

「お姉ちゃまっ。目玉はかわいそうとか、ちょっと楽しいとか思ってごめんなさい。本気で頑張ります!」


え、オデット。やはり遊んでいたのね。アデルの思った通りだった。



「そりゃないぜ、オデットちゃん。俺はずっと必死だってのに」


 ジェラールは苦笑まじりに恨み言を述べると、すぐに表情を引き締めた。オデットに声掛ける。


「次で決めよう。一気にいくぜ」

「はいです!」


 傷だらけのジェラール先輩とやる気みなぎるオデットの組み合わせは、嫌な予感がする。


「ちょっと、ちょっと待って。私の話を――」



 聞いてくれない。

振りかぶるのではなく、低い位置から槍を繰り出したジェラールの足元を、オオトカゲの尾が鞭のようにすくう。ケガをした足で、あの速さを避けるのは無理。


アデルは、目を狙おうとするオデットに指示を飛ばした。


「口にカチカチを突っ込みなさいっ。できれば縦で!」


 オデットの反応は早い。火ばさみをオオトカゲの口に突き入れ、つっかい棒のようにした。

噛みつこうとしたオオトカゲは邪魔をされたことに苛立ち、ジェラールを足蹴にする。


ジェラールの口から「ぐっ」とくぐもった声が漏れた。



 カペルが反対側から切りつけオオトカゲの注意を引こうとしているが、狙いをジェラールにつけたらしく、そちらには興味を示さない。



――良くない。

「ジェラール先輩! 逃げてください」


 大声で叫ぶアデルの視界で、ジェラールが崩れるように膝をついた。槍はとうに手から離れている。

火ばさみが外れて、上下の顎が自由を取り戻すのもすぐだ。



もう、これしかない。


「オデット! トカゲの口に飛び込んで!」


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