私達だけの負けられない戦い・6
オデットはオオトカゲの吐く火を避けながら、チロチロと動く長い舌を火ばさみで挟もうとする。
オオトカゲが絶妙なタイミングで引っ込めるから、アデルの目には遊んでいるように見える。
「もっと真剣にやりなさい、オデット!」なんて言ってしまいそうだ。
ジェラールは……と見れば、明らかに動きが鈍くなっていた。側面から首を狙うことをうっとおしがられて、尾で強打されて吹っ飛んだのは少し前。
槍で何度も突いたが、硬い鱗に阻まれて傷をつけるには至らない。このままでは消耗するばかりだ。
カペル君とオデットと違いジェラール先輩は容赦なくやられている、とアデルは気がついていた。
魔力量の差か。信じ難いことだがオオトカゲは魔力の少ない者を軽んじる傾向にあるらしい。
と言うより「魔力量の多いオデットとカペル君と遊びたいのにジェラール先輩が邪魔をする」と感じているのではないか。
槍を構え直したジェラールが、ガクッと地面に膝をついた。
「大丈夫ですか! 僕が相手だ」
カペルが言えば、オオトカゲは目を細めた……かのようにアデルには見える。三人を相手にしてのこの余裕、愉しんでいるとしか思えなかった。
カペル君とジェラール先輩が声を掛け合いうまく連携して動くので、指示もいらない。自分も加わり四人で戦うことも考えたけれど、狙い所は顔まわりばかりで四人もいては逆に動きづらい。
それにアデルは攻撃的な魔術は使えないので剣を振るうしかない。斧槍を跳ね返す鱗では、傷をつけるのも難しい。
「カチカチ先輩、立って! 立つのです!」
疲れ知らずのオデットは容赦ない。
「くそっ、膝をやられた」
よろけながら立つも、槍はもはや杖代わりだ。
まだ動けているカペルも顔から血の気が失せつつある。元気なのはオデットだけ。
限界があるとすればオデットに魔力を供給しているアデルのほうだ。塩で増しているものの、このままいけば源である魔法球の力まで減じてしまう。
一気に逆転して勝負を決める何かが欲しい。でなければ今日のところは撤退する、それが可能なのか。
ジェラール先輩は走れるだろうか、重そうに見えるオオトカゲの走る速さはどれくらいなのだろう。




