昔話のつづき
大切な玉をヒトに貸したオオトカゲは、代わりにと預かった綺麗な石を眺めて暮らしました。
その石を綺麗だと思うのは、トモダチが大切にしていたものだから。
やっぱり一番の綺麗は自分の玉だと思いました。
玉を貸してからトモダチはぱったりと姿を見せなくなりました。
そしてオオトカゲは少しずつ少しずつ元気を失ってゆきました。
でもトモダチが来る日まで待たなくては。待って待って、待って。
どれほどの時が過ぎたでしょう、その日は突然やってきました。
「長くかかってごめん。僕はすっかり歳をとったけれど、きみは変わらないね。でも弱っているみたいだ」
会いたかったトモダチはひとまわり小さくなり、顔に傷ができていました。
「争いごとがあって、きみの玉の力を使ってしまったんだ。おかげでなんとか戦には勝てた。でも、ごめん。玉から光が失くなってしまった」
トモダチが懐から出した玉は、別の物のようになっていました。トモダチの手が震えます。
「僕には分かったよ。きみはこの魔力で生きていたんだ。僕は深く考えもしないで奪ってしまった。最初からこの玉を目当てに近付いたんだ。謝っても許してもらえるとは思わない、でもごめん」
いいのだとオオトカゲは思いました。代わりに大切な石をもらっていたから。
オオトカゲはそっと石を差し出しました。これを返すまではここにいる、そう決めていたのです。
「こんな僕に優しくしてくれるの?」
トモダチの目からポタポタと涙が流れました。
「僕を食べるといい。僕の命はもう長くないんだ。ケガが元で病気もしている。でも魔力なら充分にある。だから食べたらきみは元気になるよ」
オオトカゲは食べ物の選り好みをしません。でもトモダチを食べるのは気が進みませんでした。
食べてしまえばこうして話すことはできません。それが分かるくらいオオトカゲは賢かったのです。
トモダチは泣き笑いの顔になりました。
「いいよ。いられるだけ一緒にいよう。でもきみか僕のどちらかの命の火が消えそうになったら、僕を食べてね」
自分の罪は一族が未来永劫贖う、トモダチはそう約束しました。




