表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/170

昔話のつづき

 大切な玉をヒトに貸したオオトカゲは、代わりにと預かった綺麗な石を眺めて暮らしました。


 その石を綺麗だと思うのは、トモダチが大切にしていたものだから。

やっぱり一番の綺麗は自分の玉だと思いました。



 玉を貸してからトモダチはぱったりと姿を見せなくなりました。

そしてオオトカゲは少しずつ少しずつ元気を失ってゆきました。


 でもトモダチが来る日まで待たなくては。待って待って、待って。

どれほどの時が過ぎたでしょう、その日は突然やってきました。



「長くかかってごめん。僕はすっかり歳をとったけれど、きみは変わらないね。でも弱っているみたいだ」


 会いたかったトモダチはひとまわり小さくなり、顔に傷ができていました。


「争いごとがあって、きみの玉の力を使ってしまったんだ。おかげでなんとか戦には勝てた。でも、ごめん。玉から光が失くなってしまった」



 トモダチが懐から出した玉は、別の物のようになっていました。トモダチの手が震えます。 


「僕には分かったよ。きみはこの魔力で生きていたんだ。僕は深く考えもしないで奪ってしまった。最初からこの玉を目当てに近付いたんだ。謝っても許してもらえるとは思わない、でもごめん」



 いいのだとオオトカゲは思いました。代わりに大切な石をもらっていたから。


 オオトカゲはそっと石を差し出しました。これを返すまではここにいる、そう決めていたのです。


「こんな僕に優しくしてくれるの?」


トモダチの目からポタポタと涙が流れました。


「僕を食べるといい。僕の命はもう長くないんだ。ケガが元で病気もしている。でも魔力なら充分にある。だから食べたらきみは元気になるよ」



 オオトカゲは食べ物の選り好みをしません。でもトモダチを食べるのは気が進みませんでした。


 食べてしまえばこうして話すことはできません。それが分かるくらいオオトカゲは賢かったのです。



トモダチは泣き笑いの顔になりました。


「いいよ。いられるだけ一緒にいよう。でもきみか僕のどちらかの命の火が消えそうになったら、僕を食べてね」


 自分の罪は一族が未来永劫(あがな)う、トモダチはそう約束しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ