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唯一無二の贈り物と仲良し姉妹・2

 カペル君にお礼を言うのは、試験が終わってからにしよう。

「すごくわかりやすかった、ありがとう」

伝えて、家へ遊びに来てもらえばいい。



 アデルがそう考えたのは、試験前だというのに来たジェラールが「学年が違うとなかなか会う機会がないもんだよな」と、口にしたから。


「お昼休みもちょくちょく、それに家にもこうやって来るのに」


 思っただけのつもりがしっかり声に出ていたらしい。

「迷惑そうに言うなよ」とジェラールが笑う。


「いや、アデルちゃんじゃなくてカペル君の話な」

「害虫駆除でご一緒なのでは?」

「繁忙期が過ぎて、俺が行かないからカペル君も頼んでない。ちょっと話そうと思っても、学校ではなかなかね」



 ルグラン先輩といえば、学内では有名人。カペル君のクラスにはオデットもいる。

目敏く気がついて「カチカチ先輩! 私にご用ですかっ」なんて先に言われては、話もできない。



 今、オデットが会話の邪魔をしないのは、もらったばかりの「背負式の火ばさみ入れ、赤色の革製」に夢中だからだ。


 両腕を通すと背中、左肩から右腰に斜めに筒状のケースがくる。それを背負ったまま右手で出そうと苦戦中のオデットを、アデルとジェラールは眺めた。



「シャキーン、シャキーン」

口で言っても取り出せない。


 肩の可動域からして背負ったまま剣のように抜くのは無理なんじゃないかと思うけれど、もうしばらくおとなしくしていて欲しいので、今は教えないでおく。



「それでしたら、試験休みにでも家でお茶をしますか。カペル君もお招きして四人で」


 話すなら外へ出るより家がいいだろう。アデルは提案した。


「おふたりで話したいなら、私とオデットは外します」

「あ、そんな重要な話じゃない。いてくれていい。迷惑かけちまうけど頼めるか」


ジェラールが「すまん」と手で謝る。


「試験が済んだら、カペル君にご都合をきいてみます」

「ありがとう」



 会話に区切りがついたところで、ジェラールが椅子から立ち上がり、今度は左手で抜こうと苦戦中のオデットに声をかけた。


「オデットちゃん、上から『シャキーン』はカッコいいけど難しいと思うぜ。かしてみ」


 ちょっとごめんと言いながら、革ケースを腕から抜き、逆向きに装着しなおす。怪訝な顔をするオデットの手を取り、右腰に来た蓋部分に触れさせる。


「蓋がついてるだろ。ここを外して、ほら」

「なんということでしょう!!」


 大げさにオデットが叫ぶ。上から抜こうと頑張っていのに本来は下から抜く仕様だった、と知ればそうなるか。



「見てたらなら早く言ってよ」とアデルなら文句のひとつも言うところでも、そこはオデット。


「カチカチ先輩、見てください。シャキーン!」

「お、いいね! 剣豪誕生」


それ剣じゃなくて火ばさみですから。



「お姉ちゃまっ。カッコいいですか」

「とっても」


 火ばさみではどうポーズをとっても「カッコいい」にはならないという事実を、オデットは知らなくていい。  


 職人に図を描いて指示したのはジェラール先輩とのこと。職人さんが何を思って作ったのか、聞いてみたい。



「シャキーン!!」

「おっと、オデットちゃん。部屋の中であんまり振り回すと――」


 言った端から物が倒れる音がして、ここまでがお約束。アデルは笑いを堪えた。


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