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お姉ちゃまを救え!・2

 学習発表会の代休。お天気もいいし少し出ようかと思っただけで、アデルに深い意味はなかった。

朝夕は少し寒いけれど、日中はまだ心地良い季節。


 通りにテーブルを出している店でひとりお茶を楽しむアデルの眼の前で、老婦人が躓いて転倒した。

持っていた籠がひっくり返り、派手に荷物がぶち撒けられる。


 転がってきた果物が、お約束のようにアデルの靴先に当たった。拾い上げ、まだ膝をついたままの老婦人へと届ける。



「大丈夫ですか」

「あーーーイタタタタ」


顔を歪めて、すぐには立ち上がれない。


「大丈夫ですか」

「膝と腰と肘をやってしまったよ」


それはほぼ全身では。 

通りがかった人々が籠を起こして、拾った荷物を入れくれた。



「立てますか、馬車を呼びますか」

老婦人のお世話をするのは、最初に声をかけたアデルの役目のようになっている。


「家はそんなに遠くないんですよ。でもこの荷物を持っては……おお、痛い」



 本当に困ったと嘆く。あまりに近い距離では、御者も嫌がって値を吹っ掛けるものだ。転んだ上に嫌な気分になるのは、お気の毒。


この後の約束があるわけじゃない。


「お近くなら、お家まで運びましょうか」

アデルは申し出た。


「なんて優しい娘さんだろう。うちでお茶でも飲んでいって」

「いえ、飲んだところなので、玄関先で失礼します」


 そうと決まれば早いほうがいい、今度こそ老婦人が立ち上がった。








「ここです」

老婦人は、大きな屋敷の呼び鈴を引いた。街なかにあるとは思えないくらい大きな建物だ。


待つほどもなく扉が開き、姿を見せたのはジャマンだった。



 状況がつかめず戸惑うアデルをよそに、ジャマンは老婦人の手にいくばくかの硬貨を握らせる。


「ありがとうございます」


 押しいただいて、大事そうに籠に入れると、老婦人はアデルを見もせずに押しのけるようにして踵を返した。素早い動きだ。



 「痛い、痛い」とヨロヨロするのを励ましながらここまで来たのに、あれは一体……と唖然としてしまう。


「え、え!?」


 老婦人とジャマンを見比べるアデルにむけて、ジャマンは口元だけで微笑を作った。


「母が世話になったね。お茶など差し上げたい。どうぞ」


 断り文句を思いつかないうちに、半ば強引にアデルは屋敷へと招かれた。


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