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「君と別れたい」・2

なぜそんなに嬉しそうに身を乗り出すのだろう。


「私と一緒です! 私の一番はお姉ちゃま、二番はカペル君時々お兄ちゃまです」


 二番を光栄に思えとばかりに鼻をひくっとさせるのが、いかにもオデットらしい。


「それは……ありがとう」


 圧倒されて礼を言うと、小生意気な表情をする。幼く感じるオデットが、実はカペルよりひとつ歳上なのだけれど。



「一緒にお姉ちゃまを好きでいましょう! 」


 いつの間にか人差し指にかぶせた小さな人形が左右に揺れて誘う。


「お姉ちゃまが、くれました」


 カペルにも見覚えがあるのは、木製品で有名な町の土産物屋にあったからだ。



「カペル君『彼女』を間違えてます。カチカチ先輩に教えてもらいました、彼女は『一番の仲良し』ってことって。ね、カペル君がお姉ちゃまを好きでいて、一番の仲良しは私でいいと思います」


 だから私は彼女のままでいると、上目遣いに主張するオデット。言っていることは理屈に合わなくて、おかしい。


 

 でも――。カペルは温かな気持ちになった。どうにかして「彼女」のままでいたいのだと一生懸命なオデットの姿を見ていたら、心のうちにあった曇りが拭われた心地がする。


 思い込みが強くて、自分の気持ちに真っ直ぐで。短所と長所が分かち難いところが彼女なのだ。


 こちらの言い分を聞いてもらおうなんて、無理な話だった。



様々に考えを巡らせたらしいオデットが言い募る。


「私が彼女でいたら、お姉ちゃまは『カペルくんありがとう』って言います。そしたらカペル君、うれしい。それからそれから――」

「うん、わかった。オデットさん、これからも彼女でいてください」


 お願いしたカペルに、「やった!」と口を両手で覆って嬉しそうにするオデットの人差し指には、指人形。とても個性的な彼女だ。



「特別にお姉ちゃまのこと、教えてあげます!」


などと得意げに胸を張る。

別れられなかった。でも別れなくて良かったと思いながら、カペルは頷いた。


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