魔力を求める男達・1
夕食の時間、当然のようにアデルの隣に座ったジェラールを目にして、皆揃ってぎょっとした。
数秒の後
「ルグラン君、どうしてここに?」
聞いたのは、女性教師だった。
「こっち方面で急な仕事が入ったんですよ。あらかた片付いたんで、いい機会だから俺も学ぼうかと」
アデルを始めとする全員が言葉通りに信じていないのが伝わって来る。せっかく真顔を作ったのに、頬が緩んでしまった。
「そう」
教師もそれ以上の追求はせず食事へと入った。
ジェラールが提案した部屋の交換を、アデルはすんなりと受け入れた。引率教諭にも言わずにカペルとアデルが入れ替わる。
満室で賓客の使用人用の部屋に泊まると知ったカペルが「僕はひとりなのでよかったら一緒に」と申し出た。
一度は断ったものの、夜中に侵入者があった場合、カペル君ひとりでは不安だと考え直して、言葉に甘えることにした。
賊が侵入するのは、真夜中ではなく明け方前が多いと聞く。
ただの用心なのでカペル君には言わずに普段通りに過ごしてもらい、自分が短時間睡眠で夜中に起きる。足りない分は昼間寝ればいいだろう、とジェラールは考えた。
明日の準備をするカペルを眺めながら、ベッドに寝転んだジェラールが思い出すのは、ドブロイ先生の「カペル君の動きにも少し気をつけて」だ。
「それは?」
「そのままだよ。何だからどうと言えるほどじゃない、具体性に欠けてすまないが」
申し訳ないとは欠片も思っていない態度で「雇い主」ドブロイはそう言った。
どう気をつけろってんだ。ジェラールから見るカペルは、いい子ちゃんが過ぎるが真面目で極めて優秀な後輩だ。
一緒に仕事をして人となりも知り、悪い印象はない。だから次の一言もただの世間話だ。
「ジャマン先生が来てるらしいな」
集中していて理解が追いつかなかったのか、カペルが手を止めてからこちらを向くまでしばらく時間がかかった。
「カペル君、知らなかったか?」
アデルちゃんとジャマン先生を会わせたくないって話も、この様子じゃ知らないか。
「ジャマン先生なら、今日の午前にお話ししました」
予想外の発言に、ジェラールは枕に肘をついて上体を起こした。
「なんだって?」
「父のところへ、しばらく前にいらしていたのですが。空の魔法球に再び魔力を込めて蘇らせる計画を公的なものとして進める為に、賛同者を募っていらっしゃるそうで」
声を小さくしても充分に聞こえるほど室内は静かだ。
「父の返事が待ちきれず、僕に聞きたかったご様子でした」




