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前前前世の恋 私がコリンヌだった時・1

主人公アデルの過去の恋から、はじまります

前前前世の名前はコリンヌ

覚えていただかなくても少しも差しつかえありません。

 コリンヌの住む村は小さいながらも、立派な石塀でぐるりと囲われている。昔、王の所有する館があったからだ。


 今はそこも民家になっていて、残った城壁と崩れかけた礼拝所だけが往時の様子を物語る。



 その礼拝所には「お(たま)様」があると聞かされて育った。

お珠様は魔力を蓄えた玉で、有事には輝きが増すと言われている。けれど実際にお珠様を目にした住人は、コリンヌの知る限りいない。


 コリンヌにしてみれば「いざという時に輝きが増したところでなんの意味が」という話だ。



 父と二人暮らしのコリンヌの家業は城壁の番人。夜十時に鉄柵を降ろし、頑丈な木戸に鍵をかける。これで野盗も狼も入れない。



 母はとうになくなり、女手はコリンヌだけ。洗濯をするのは女の仕事というわけで、天気の良い日には必ず川へ洗濯に出掛ける。


 町に洗濯場はあるけれど、井戸端会議がわずわらしく感じられるのが正直なところ。

城壁の外にある川まで行き、洗ったついでに草地に広げて二時間ほど干す。半乾きになれば、帰りも重くない。




「おはよう、コリンヌ」


 待ってました、が顔に出ないように気をつけてふり返ったつもりでも、嬉しさが隠せていないのだと思う。呼びかけた彼が笑っている。


「おはよう、ファビアン。羊たちは?」

「もう丘に放してきた。洗濯、手伝おうか」

「大丈夫、絞るときにお願い」


 わかったとファビアンは草地に腰を降ろした。軽く片膝を立てて座るだけなのに、どことなく品の良さを感じさせる。


 切れ長の目が素敵な彼は、遠い村の羊飼いだ。まだ独立したてで、飼っている羊の頭数は少ない。

コリンヌの村では羊で生計を立てる者がおらず良い草が食べ尽くされていないと聞いて、こんな遠くまで来ているらしい。


二か月したらまた移動する、そんな生活だと教えてくれた。



 村の外に洗濯に来る人は少なく、綺麗な景色を求めて上流まで足を伸ばすのはコリンヌくらい。そこで偶然ファビアンと出会った。


 二か月で去ってしまうから、お付き合いはできない。でも毎年同じ時期にきてくれるなら……「付き合って」と言われてもないのに、コリンヌは夢想した。



 村にも未婚の男性がいないわけじゃない。でも知り合いの元彼だったり、又従兄にあたる関係だったりでなかなか難しい。


 コリンヌが門番のひとり娘で、婿取りをして、夫となる者が次の門番だと村の誰もが知っている。


 毎日毎日同じ時間に門を開け、そして閉める。若い男性には窮屈に思えることだろう。

コリンヌに言い寄る青年はいなかった。


ファビアンは違った。




連日投稿予定です


完結作品がお好きな読者様

「花売り娘は〜」「地味顔の短期雇用専門メイド〜」はいかがでしょうか

どちらも素敵な紳士がヒロインに優しいお話です


またお目にかかれますように☆

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