第85話 ウェンディの決意
アリシアとの人工呼吸を見たウェンディがとある決意をします!
今のところアリシアが一歩リードといったところでしょうか?
ここはシップブリッジから離れた元教会の廃墟。
そこは今、地球のネズミが主役の遊園地の如く光輝いている。
赤や青、黄色や緑の光が蛍のように点滅し、ユラユラと動いており、まるで昼間のように明るい。
少し離れたところには、目からヘッドライトの如く光を放っている馬がいて荷台にはLEDの点滅とともに、「愛の重さが積載量」 、「暴走天使」、「安全運転実施中」などの文字が流れているディスプレイが異彩を放っている。
まるで夜のパレードのゴンドラを彷彿とさせる光景はどこか幻想的だった。
一際光が集まっている中心で、俺はアリシアに白い幼霊を注ぎ込んでいた。
俺がユキナのように癒しのブレスを吐ければよかったが、あいにく俺は白竜ではない。
もっと直接的な手段・・・そう人工呼吸をアリシアに施している。
さらば俺のファーストキス・・・なんて思う間もなくアリシアを助けたい一心で息を注ぎ込んだ。
フー
「ん・・・ん・・・」
死にそうになっていたアリシアは俺が人工呼吸を始めると、一瞬目を開き驚いたようだが、また苦しそうに顔を歪めた。
だんだん俺から魔力とともに白い幼霊がアリシアへ移っていくのが分かる。
それに比例して、アリシアが白い輝きが増していく。
「ブハァ!」
息が続く限り、人工呼吸を施した俺は口を離した。
「ハァハァハァ・・・どうなった?」
アリシアから離れた瞬間、クラッと目眩がしたので結構な量の魔力を持っていかれたようだ。
未だに光っているアリシアは、苦しんだ様子もなく穏やかな表情のまま眠っている。
良かった・・・なんとかなったようだ。
白い幼霊に感謝しなくては・・・
「まぁまぁまぁ!まるで物語のようだわ!」
「なんでワタルお兄ちゃんは目を離すと、人族といちゃいちゃするのかわからない」
「二人共なんでいるの!」
何故かアドレーヌ様とユキナが後ろに立っていた。
アドレーヌ様は頬に手を当て、目をキラキラさせながら喚いている。
ユキナは頭を抱えて嘆いていた。
「い、いや・・・これはですね・・・」
「ええ、ええ!わかっていますとも!愛の接吻で眠り姫を起こしてあげたのですね」
「全然違います!」
「これだけ幻想的な光景の中、愛し合う男女がキスをしていたら、そりゃもうね〜興奮しちゃいました」
「いや、興奮しないでください。アリシアは死にかけてたんですよ」
「二人共落ち着きなさい!アリシアの傷は治ってないのよ。ユキナお願い」
「えーなんかヤダ・・・」
ぶつくさ言いながらも、ノーミーの言葉を受けてユキナはトコトコ、アリシアの下に歩いていく。
「ワタルのメチャクチャな方法でアリシアの魔力は回復したけど、傷は治ってないのよ。毒もまだあるわ」
ノーミーはアリシアの状態を見てくれていたようだ。
フー
ユキナの癒しのブレスがアリシアを包み込む。
『キャ〜!』
『追い出される〜』
『本職が来ちゃった!』
ブレスが吹きかけられると、アリシアの中にいた白い幼霊がキャーキャー言いながら飛んでいった。
アリシアの体を見ると、傷がすっかり治り、血色も良くなったようだ。改めてユキナの癒しのブレスの威力を実感する。
しかし、アリシアはまだ目を覚まさない。
「ユキナありがとうな」
「むぅーアリシアのためじゃなくて、ワタルお兄ちゃんが悲しむと思ってやっただけ・・・」
「うん。分かってるよ」
優しくユキナの銀髪を撫でてやる。
「ワタル様、アリシアを救って下さりありがとうございます」
「いえ、俺も無我夢中でなんかとんでもないことをしたみたいで・・・取り敢えず助かって良かった」
「アドレーヌ様!子供を確保しました」
「ワタル!」
「ワタルさん!」
兵士に連れてこられたラック君とミッシュちゃんが俺に駆け寄ってきて抱きついた。
「よしよし!怖かったな。もう大丈夫だぞ!」
教会で年長といってもまだまだ子供だ。ずっと怖い思いをしたはずだ。
「えっと・・・この人が助けてくれたの?」
「そうだけど・・・この人アリシアだぞ?」
「えーーー!なんで先生はこんな変な格好してるのワタルさん」
「まぁ色々あったんだよ。アリシアは君たちを助けるために命をかけたんだ。後でお礼言っといてね」
「アリシア先生は大丈夫なのか?」
「うん。ラック君。大丈夫だよ。寝ているだけだ」
子供たち二人は、アリシアの格好に驚いたものの、俺の言葉に安心したようだ。
「そうですよ二人共。死にかけていたアリシアをワタル様の愛の接吻で癒してあげたのです。それはまるで「勇者ガンテツと精霊 第二章 〜あなたの為のキス〜」の場面のように」
「まぁ!ステキ!それじゃワタルさんはアリシア先生にあの言葉を囁いたのですね」
「「俺はお前を死なせない。お前を必ず助ける。愛しい人よ!」」
アドレーヌ様とミッシュちゃんが同時にハモった。
キャーキャーキャー!!!
「言ってねーよ!!やめろーーー!!!」
アドレーヌ様とミッシュちゃんが勝手に盛り上がっているのを俺は止めた。
先ほどアドレーヌ様が言ったのは、ミルフィーユ王国で最も読まれている恋愛小説の一部。
アドレーヌ様の部屋には全巻が揃っており、屋敷の蔵書棚にもある。
何でも女子の恋愛バイブルなんだとか・・・
親父が母さんと結婚する前の話だが、あの角刈りゴリラみたいな親父(こちらの世界ではイケメン)が誰かとラブロマンスを繰り広げていたのを想像するとサブイボが立った。
・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・」
(いいな・・・羨ましいな・・・私も死にそうになったらワタルはキスしてくれるかな?)
「ウェンディ・・・大体何考えているか分かるけど、ワタルは人命救助のためにやったんだからね」
「分かっているわよそんな事!」
「好きな人が人命救助のためとはいえ、キスしているのは辛いわよね」
「べ、別に好きとかじゃないわ」
「はいはい!」
ノーミーはウェンディの頭をガシガシ撫でる。
「ノーミー・・・私決めたわ!ユキナに人化の魔法を教えてもらう」
「そう・・・愛は人を変えるのね」
「ノーミーは最近なんかおばさん臭くなったわね」
「うるさい!お子様!」
ノーミーは撫でていた手をチョップに変えた。
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