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第84話 白の幼霊

精霊馬車が久々の登場!


すでにデコトラになっている!?

 ガガガガガッ!


 月明かりが照らす街道を俺とウェンディを乗せた精霊馬車が突き進んでいた。


 最高速度で飛ばしている馬車は、土煙を上げ、車輪はきしみ、馬は鼻息が荒い。


 その光景をシップブリッジの人が見たら驚愕するだろう。


 馬車を取り囲むネオンがピカピカと点滅して辺りを照らしているからだ。そのため非常に目立っている。


 さらに、先頭をひた走る馬の目からヘッドライトの如く、前方を照らしている。


「バカじゃないのワタル!これじゃ目立ちすぎるわよ!」

「仕方ないだろ!これしかなかったんだから!」


 月が出ているとはいえ、ほとんど何も見えない道を馬車で飛ばすのは自殺行為だ。

 この世界の人は夜になったら基本的に移動しない。


 街頭なんて存在しない町外れの道を行くためには明かりが必要だった。


 シップブリッジを出る時に、衛兵に止められたが商業ギルドの金ピカギルドカードを見せると敬礼されながら送り出された。


 しかし、街を出てからメモに書かれた教会へ続く道は真っ暗。


 逸る気持ちを抑えながら、精霊馬車の機能を探るためにウィンドウを開いて見るとデコトラ仕様の文字があった。


 試しにタップしてみた結果が今の状況だ。


 敵に見つかるリスクはあるが、暗闇を照らすライトはありがたかった。


「この馬は魔獣として討伐されるかもしれないわね」

「後でアドレーヌ様に言っておこう・・・それより急ぐぞウェンディ!」


 ブワァーー!!!


「お、おいなんだあれ?」

「凄い魔力・・・」


 少し小高い丘の上から凄まじい魔力が立ち上っているのが見えた。

 緑色をした魔力の余波が、俺とウェンディを突き抜け丘全体に広がったのを感じた。


「これはまずいわね」

「え?何が?」

「もし・・・これがアリシアの魔力だとすると・・・」

「なんだよ?」

「あの娘死ぬ気よ」

「・・・・・・」


 いくらアリシアが妖精に愛される体質だとしても、本人は魔力が多いわけではないのは知っている。


 アリシアはこの大量の魔力を明らかに普通じゃない手段で繰り出している。

 それこそウェンディが言ったように死ぬつもりで・・・


 やがて、立ち上る魔力を目印に道を急ぐ俺たちの前に元教会の廃墟が見えてきた。


「アリシアーーー!!!」

「よくもやってくれたわねー!ウィンドカッター!!」


 両膝をつき、苦しそうに胸を押さえるアリシアに迫る黒服の人物を見た瞬間、俺は力の限り叫び、ウェンディは渾身のウィンドカッターを放つ。


「チッ!撤退だ!どうせアリシアはもう助からない」


 こちらに気付いた男は、その場から素早く飛び退きウィンドカッターを避けた。


 その後、数名の仲間と思われる人物と一緒に森の中に消えていった。


「追うわよワタル!」

「待て!アリシアが先だ!」

「くっ!覚えてなさい!!」


 ウェンディは男たちが消えていった森を睨みつけた。


「おい!アリシア!大丈夫か?」


 うつ伏せに倒れたアリシアを改めて見る。

 町娘風の服はドロドロになり、いたるところに血が滲んでいる。

 大きく裂けたスカートからは足が見えたが、そこにはナイフが刺さり、血が流れている。


 近くにはアリシアの使っていた木刀が落ちていたが、それは真っ二つに折れていた。


「おい!しっかりしろアリシア!」

「うっ・・・ワ、ワタル・・・」

「何があった?」

「こ、子供たちを・・・た、頼む・・・」

「ウェンディ!子供たちをさがしてくれ!」

「ええ!分かったわ!」


 幸いピカピカと光る精霊馬車のお陰で真っ暗にはなっていない。

 どこかに子供たちがいれば見つかるかもしれない。


「グッ!・・・ガハッ!・・・」

「アリシア!アリシア!しっかりしろ!」

「ハァ・・・ハァ・・・もう、私は助からない・・・ど、毒を・・・」

「クソッ!どうすればいい?」


 ユキナを置いてきたのは失敗だった。

 癒しのブレスがあればアリシアを助けられるのに!


「ワタル!廃墟の後ろに子供たちが居たわよ!特に怪我はしてないみたい」

「そうか!アリシア!子供たちは無事だぞ!」

「そ・・・そうか・・・よかっ・・・」

「アリシア!しっかりしろ!目を開けろ!」


 俺の言葉に安心したのかアリシアはゆっくり目を閉じた。

 それと同時に痙攣し始める。


 マズイ!このままじゃ死んでしまう!何か方法はないのか!


「ウェンディ!風魔法でなんとかならないのか?」

「無茶言わないで!風魔法に回復魔法はないわよ」

「・・・そんな・・・なにか、なにか方法はないのか」


 アリシアは妹の為に剣聖になろうとしていただけじゃないか。

 すごく不器用だけど、純粋に誰かのために行動できるやつだ。

 剣が持てなくても、妖精と契約できなくても、自分のできる精一杯のことを貫いただけだ。


 ただの木刀一本で敵陣に突っ込むバカは、地球にいた時も、アトランティスに来たときだって見たことがない。


 アリシアはノーミーに生き様を示すんだろ?


 剣聖になって妹に謝るんだろ?


 俺はお前を死なせはしない!


「なぁお願いだ・・・幼霊でも妖精でも誰だっていい・・・俺のありったけの魔力をやるからアリシアを助けてくれ・・・俺にアリシアを助ける力をくれ・・・」


 ここはファンタジーの世界だ。


 地球では起こり得ない奇跡を起こせる場所のはずだ。


 俺は空向かって懇願した。

 

 ザワザワ・・・ザワザワ・・・ザワザワ・・・


『ねぇ〜・・・ごいね〜』

『呼んで・・・行ってみよ・・・』

『・・・テツ様みたい〜』

『不思議・・・面白そう〜』


「ワ、ワタル・・・あなた・・・」


 俺の耳にたくさんの人が喋っている声が聞こえ始めた。

 それは子供のようだったり、男のようだったり、女のようだったり様々だ。


「嘘だろ・・・こんなに来たのか・・・」


 周りを見渡してみると、俺たちを囲うように青や緑、赤や黄色の幼霊がいる。


 それは一つの塊のように見え、眩しいくらいにユラユラと揺れている。


 さっきの声はこの幼霊たちが喋っているみたいだ。


「幼霊たちお願いだ・・・誰か俺に回復魔法を・・・」


『その子死んじゃうね〜』

『そうだね〜』

『ねぇねぇ・・・この子助けたいの?魔力くれるの〜!』


 幼霊の塊からフヨフヨと白い光が俺の前にきてしゃべり始めた。


「ああ・・・なんとしても助けたい。俺のありったけの魔力をくれてやる」


『やった!魔力くれるって!』

『でも、この人族回復魔法は使えないよ〜』

『僕達が直接入るしかないかも〜』


 白い光が何やら相談を始めた。


「ど、どういうことだ?」

「多分アリシアの体に直接入って中から治すんじゃないの?」

「ん?白い幼霊はアリシアの中に入れるのか?」


 うわっ!


 突然、白い幼霊が俺の体目掛けて飛んできた。そのまま何匹も吸い込まれていく。


 パァ!


 しばらくすると俺の体が白く光だし、内側から魔力が溢れ出す。


『そのままこの子に僕達を入れるんだよ〜』

『口から入れたほうがいいよ〜』

『これで完璧〜!』


 えっと・・・それはつまり・・・そういう事なのか・・・


 ええい!迷っている暇はない!やるしかない!


「ウェンディ!周囲の安全確保よろしく!」

「あ、あなたまさか・・・」


 俺はアリシアの体を抱き寄せると、その口目掛けてゆっくりと息を吹き込む。


 しばらくするとアリシアの体は白く輝き出した。

















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