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第83話 終の構え 桜花

アリシアがピンチに!

 キンキンッ!

 ドカッ!


 月明かりが照らすの薄暗い廃墟に、剣戟がこだましていた。


 アリシアの木刀の緑色の線と敵の剣がぶつかり、擦れ、火花を散らす。


 黒尽くめの敵は、アリシアの目論見を読んでいるかのように時間をかけて長期戦に持ち込むようだ。


 それでもアリシアは三人を戦闘不能にさせ、残る敵はリーダー格を含めて三人まで削った。


「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


 すでにアリシアの体には無数の切り傷が刻まれ、妖精剣はボロボロに削れている。

 服には己の血が滲んでいた。


「なるほど・・・さすがに剣姫と呼ばれているだけあるな・・・すぐに終わると思ったんだかな・・・」

「ハァ・・・ふん・・・随分余裕だな・・・ハァ・・・お仲間は半分になったぞ」


 アリシアはけして魔力が豊富にある訳では無い。敵の剣を受ける度に魔力が削られるので、残り僅かな魔力を計算に入れると、早めにリーダー格を倒す必要がある。


「時間をかけられないので、俺が相手にしてやろう」

「やっとやる気になったようだな」


 リーダー格は不敵な笑みを浮かべ、二本のナイフを抜いて構える。


「さて、アリシアに良いことを教えてやろう」

「・・・なんだ?大人しく投降する気にでもなったか?」


「妹を傷付けて腑抜けになったようだが、それは偶然か?」


 敵の思いもよらない言葉に動揺してしまう。


「・・・なんだと?どういうことだ?」

「仕組まれた罠にハマったと考え無かったのか?随分とおめでたいやつだ」

「まさか・・・お前たちが・・・」

「はい!隙ありだ!」


 ドシュ!


「くっ!」


 アリシアは自分の足をみる。

 陰から隙を伺っていた男の部下の投げたナイフが深々と刺さっていた。


「まだまだ甘いなアリシア・・・戦闘中は常に周りに気を配らないといけないぞ。それに俺たちは暗殺集団だぞ?」


「・・・ハァ・・・ハァ・・・このくらいのハンデはくれてやろう」


「ほう・・・これでもまだやる気か・・・見上げた根性だな・・・」


 強がりを言ったものの、アリシアはすでに限界を迎えていた。

 立っているのもやっとの状態。


 ・・・もう敵を倒す手段は一つだけだった。


「・・・覚悟を決めるか・・・父上、母上・・・禁術を使うことをお許しください」


「おいおい。まだなにする気か?」


 スッと構えを解いたアリシア。


(ノーミー様すみません。生き様を示すことができませんでした・・・)


 一気に膨れ上がるアリシアの魔力。

 緑色の奔流が体から溢れ出した。


(アドレーヌ・・・今まで親友で居てくれてありがとう・・・立派な王女になってくれ)


 木の幼霊が狂ったようにアリシアの周りを飛び回る。


(マリア・・・不甲斐ない姉で申し訳ない・・・)


 アリシアの魔力に呼応して、周囲の草木が一気に芽吹き、ガザガサと音を立てる。


(ワタル・・・私に生きる希望を与えてくれてありがとう・・・最初は利用するつもりがいつの間にか惹かれていたよ・・・多分これが恋愛って言うのだろうな・・・さようなら・・・)


 フッと一瞬笑みを浮かべると、妖精剣を正眼に構えた。


「終の構え・・・・・・桜花・・・」


 ブワッ!


 己の魔力で服が靡き、髪の毛が逆立ち、アリシアは鬼神となった。


 桜花・・・まさに一瞬で咲き誇り、一瞬で散る桜のように己の生命力である魔力を極限にまで高める禁術。


 まさに自爆と言うべきこの技を使用することは、剣士としての生命を終えることを意味する。また、自分の命さえも。


 フッ!


 その場から消えたと錯覚するスピードで一人の敵に迫り、横薙ぎの一閃を浴びせたアリシア。


 柱に吹っ飛んで行った男は自分が何をされたのか分からないだろう。

 その男には目を向けず、また消えたアリシアはもう一人の男の背後を取り、肩口に剣戟を浴びせた。


 バキャ!


 これまでなんとか耐えていた妖精剣ディープシーオブツリーが真ん中から折れた。


 膝から崩れ落ちた男に視線だけ向け、そしてリーダー格の方へ顔を向けた。


「ち、ちょっと待ってくれ!」


 慌てた様子のリーダー格の言葉を無視して、前傾姿勢を取ったアリシアは一歩踏み出した。


 しかし、


「ガハッ!・・・グッ・・・クソッ・・・毒か・・・」


 思わず膝をつくアリシア。

 全身に気だるさと節々に痛みが走る。

 それと同時に霧散する魔力。

 目もだんだん霞んできた。


「ハッ・・・ハハハッ・・・焦らせやがって・・・やはりお前は危険だ」


「ハァハァハァ!」


(こ、ここまでか・・・なんと情けない・・・こんな私ではノーミー様が契約しないわけだ・・・)


 両手をついて息を荒くするアリシアに向かってジリジリとリーダー格が歩いてきた。


「だ、誰か・・・子供たちを・・・」


 その時


 ガガガガガッ!


「アリシアー!!!!」

「良くもやってくれたわね!ウィンドカッター!!」


 アリシアの意識が朦朧とする中、ピカピカ光る精霊馬車の御者台で叫ぶワタルとウェンディが見えた。


「な、なんだあれは?・・・チッ!どちらにせよアリシアは助からない。撤退するぞ!」


 リーダー格の男は動ける部下を連れて森の中へ消えていった。













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