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第81話 襲いかかる黒

シリアス展開は難しい。


次はガチバトルします!

 バンッ!


 俺は剣術修行兼筋トレをしていた教会のドアを勢いよく開けた。


「マシューさんいますか!」


 相変わらずボロボロの礼拝堂に俺の声が響く。いつものように教会は誰もいなく、ドリュアス様の像が静かに俺を見つめているだけだ。


 やがて奥の方からドタドタと急ぎ足でマシューさんがやって来た。随分慌てた様子だ。


「ああ・・・ワタルさん」

「あのアリシアが来ませんでしたか?」

「は、はい。突然来て子供たちの様子を聞いてすぐに出ていきました」

「クソッ!遅かったか!」


 アリシアとは行き違いになってしまったようだ。


「マーシュさん。子供たちは全員いますか?」

「そ、それが、ラックとミッシュが買い出しに出かけたまままだ帰ってこないんです。アリシアも同じことを聞いてきて・・・一体何があったんですか?」


 ラック君とミッシュちゃんはこの教会でも年長の部類に入る。二人一緒に買物を頼まれることもあるそうだ。


 最悪だ・・・どうする・・・


「マシューさん!ラック君とミッシュちゃんが攫われた可能性があります」

「えっ!そんな・・・」


 俺の発言に動揺したように手を組み、青い顔をするマシューさん。

 突然そんな事を言われたら当然だ。


「ユキナ。この事をアドレーヌ様とノーミーに伝えてくれ」

「ワタルお兄ちゃんはどうするの?」

「俺はアリシアを追う。場所は手紙にあった通りだ」


 俺の言葉にユキナは動揺したように言った。


「えっ?わ、私も行く!」

「分かってくれユキナ。一刻を争うんだ」


「・・・うん。分かった。でも危ないことはしないで・・・私・・・お兄ちゃんが居なくなったら・・・」

「大丈夫だよ。なにせ俺は規格外のお兄ちゃんだからな!それに最強の妖精も付いているし」

「まっかせなさいユキナ!」


 ユキナの頭を撫でながら、なんとか説得した。ここで戦力を分散させるのは痛いが、一刻も早くアリシアを追わなくてはならない。


「それじゃ頼んだぞ!」


 俺とウェンディは精霊馬車に乗り込むと、勢いよく走り出した。


 クソッ!またあいつは一人で解決しようとしてやがる!

 木刀一本で敵に突っ込むアリシアに後で説教することを誓った。


 ・・・・・・・・・

 

 アリシア視点


 三ヶ月ほど滞在していた少し町外れにある宿に到着すると早速、顔見知りになった給仕に服装を馬鹿にされた。


「いやー!彼氏の力は絶大なんだね〜ここまでアリシアを変えるとは!私もいい人現れないかなー?」

「バ、バカ!そんなんじゃない!これはだな・・・」

「いいの、いいの。言い訳しなくても全部わかってるから!」

「・・・・・・」


 この宿の給仕とは、フランクに話せる数少ない人物だ。

 なんとなく私が事情を抱えている者だと分かっていても話しかけてくれる。


「まぁ色々迷惑をかけたな。今までの宿代の精算を頼む。私は荷物をまとめてくる」

「・・・さみしくなるねアリシア」

「そんな顔をするな」


 給仕に見送られながら、自分の部屋に向かう。

 荷物といっても、数着の衣類と小物だけだ。すぐにまとめてワタルたちを待とう。


「ん?」


 1週間程来ていなかった部屋の窓が空いているのに気付いた。不在の間、掃除はお願いしてあるが窓を閉め忘れたのだろうか?


 窓を閉めようと、近づいた時に机に風で揺れる紙を見つけた。


「・・・・・・なんだと・・・」


 私は立て掛けてある妖精剣ディープシーオブツリーを手に取ると、宿を飛び出した。


『お前のかわいい生徒は預かった。心配ならアリシア一人で街の外にある廃教会まで来い』


 ・・・・・・・・・・


 ドカカッ!ドカカッ!ドカカッ!


 夕暮れの街道を一頭の馬が土煙を上げながらな疾走している。

 その馬に騎乗しているのは、騎士団でも冒険者でもない一人の町娘。


 しかし、長いスカートを翻し、手綱を握る姿はとても普通の平民のようには見えない。

 シップブリッジの人間が見たら、背には布に包まれた棒状の物を括り付けているので、異様な光景に映るだろう。


「ラック、ミッシュ・・・待っていろ!」


 一人呟いたアリシアの目にボロボロに朽ち果てたかつて教会だった建物が見えてきた。


 日はすっかり沈み、月明かりに照らされた教会は屋根が崩れ落ち、壁がわずかに残るだけ。


 ここは地元の人でも近づかない場所。人を攫い隠す場所としては最適だ。


「おい!一人できたぞ!子供たちはどこだ!」


 ガタッ・・・


 床の抜けた建物の中心まできたアリシアは気配のある方へ声をかけると柱の陰から一人の人物が姿を現した。


「ハッハッハッ!こりゃたまげた!本当に腑抜けてやがる!」


 笑いながら現れた黒い服の男は、アリシアの町娘風の服を見て馬鹿にした。


 スッと背中の妖精剣を抜くと、その剣先を男に向けるアリシア。

 気配を探ると五人いや六人が潜んでいるのが分かる。


「おいおい・・・本当にその棒っきれで戦うのか?それに社交界パーティーでは男漁りをしていたらしいじゃないか。こりゃガキを攫うまでもなかったな」


「・・・・・・ラックとミッシュはどこだ?」


「生徒の心配より自分の心配をしたらどうだ?木刀で勝てるほど俺たちは甘くないぞ?」


 男はアリシアが町娘の姿と木刀を持っていたことで余裕の表情を見せる。


「・・・何者だ?私に用があるんだろ?」


「俺たちは雇われただけさ・・・随分臆病な雇い主でね・・・どうしてもお前を剣聖にさせたくないらしい」


「剣聖?」


「おっと少ししゃべりすぎたかな?まぁどうせお前もガキもここで死ぬんだ。そんなことを気にしても仕方ないさ・・・」


「そうか・・・まぁ後でゆっくりと尋問すれば分かる。どちらにせよこの状況は見過ごせない」


「おーおー威勢のいいことで・・・さてっと・・・おしゃべりもおしまいだ。やれっ!」


「ミルフィーユ王国第一騎士団アリシア・ラインハート。尋常に参る!」


 アリシアは敵に向かって飛び出した。





















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