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第80話 動き出す陰謀

事件発生です!



「前略・・・拝啓・・・dear・・・いかんこれでは勘違いされてしまう・・・」

「ワタル何やってるのよ?」


 俺は寝室の机に向かい、手紙を書いている。


 宛先は社交界パーティーのときに渡されたカードの人物。


 アリシアに求婚するために多くの貴族や有力者が列をなしたが、一人一人対応したのでは時間が足りない。


 そこで俺は、列に並んでいる人が自己紹介の書かれたカードをアリシアに渡し、後日アリシアにお見合いの意思があれば連絡するという手法を教えた。


 山のように積み上げられたカードを受け取ったアリシアがどうするか分からない。


 社交界パーティーが終わった後も、アリシアの噂を聞きつけた人が次々とお見合いの申し込みをしてきたようで、その対応にセバスさんが苦労していると聞いた。


 そんなアリシアの為に俺は会場整理を手伝っていたわけだが、そんなときに俺にカードを渡す人物が現れた。


 ダリア・コンフォートという赤髪がキレイな女性だ。


 ダリアさんは俺に軽く挨拶をして、すぐに去っていってしまったからどんな人物か分からない。


 もちろん俺にお見合いの意思なんてないので、無視して放おっておいた。


「ワタル様がダリア嬢をどうするかお任せしますが、お断りするならば手紙を出してくださると助かります」


 コンフォート家というのは隣国イーストパレス王国で力を持つ大貴族らしく、あまり無下にすると角が立つらしい。


 この国の王女アドレーヌ様が言うくらいだから凄い貴族なのだろう。なので仕方なく、断りの手紙を書いていると言うわけだ。


 しかし、どんな風に書いていいか全然わからない。相手に不快に思われない程度に断る文章というが非常に難しい。


「あなたなんか興味はありません!二度と近寄らないでください!私は妖精に愛されているのでモテモテなのです!それとすでに心に決めた人もいます。今後ちょっかいを出すと風の精霊エアロ様と木の精霊ドリュアス様と白龍族が怒りだし、海は枯れ、大地は裂け、とんでもない不幸があなたを襲うでしょう!へへへ・・・ホホホ・・・」


「おい・・・ウェンディ、何をやっているのかな?」


 文章を考えながらあれこれ悩んでいると、ウェンディが不気味な笑みを浮かべて勝手にペンを抱えながら手紙を書いているのに気付いた。


「ハッ!ワ、ワタルが悩んでいたから私が書いていたのよ!こういうのははっきり断るのが大切なの!」


「こんな事書いたら、戦争になるかも知れないだろ?それになんで俺にちょっかいを掛けたら精霊たちの怒りが襲うんだよ!俺は祟り神か!?」


「あのね!この際だから言っておくけどワタルは優柔不断なの!このくらいインパクトを与えれば、あの人族も諦めるわ!」


「ええーい!ウェンディはあっちに行っていろ!」

「なんですってー!!」

「邪魔ばっかりするから、手紙が書けん!そもそもウェンディの書いているやつは脅迫状だ!」

「あんたがウジウジしてるのが悪いでしょー」

「うるさーい!世間知らずのお子様がー!」


 ギャーギャー!

 ワーワー!


「お二人共静かにしてください!」

「妖精様と喧嘩は良くないと思うぞ」


 騒ぎを聞きつけたアドレーヌ様とアリシアがツッコミを入れるまでウェンディとの騒ぎは続いた。


 ・・・・・・・・・


 ガタゴト・・・ガタゴト・・・


「結局ウェンディのせいで手紙はかけなかった」

「ワタルに文才がないのが悪いのよ」

「私が書こうか?一応たくさんお見合い断ってきたし」

「いや・・・大丈夫だユキナ。断りの手紙は自分で書くよ」


 さすがに自分のお見合いの手紙を妹に書かせるのは情けない。ユキナならば上手いこと書いてくれるだろうが、ここで頼っては駄目だ。


 今俺たちは、アリシアが住んでいた宿に向かっている。


 しばらく続いた雨もすっかり止んで、気持ちのいい青空が広がっている中、ウェンディとユキナを連れて精霊馬車に乗っている。


 前々からアリシアは宿を引き払うつもりだったが、長雨が続いたことでのびのびになっていた。


 秋の長雨の期間中、つかの間の晴れを利用して、アリシアは宿を引き払い、アドレーヌ様の屋敷に引っ越しすることにしたようだ。


 社交界パーティーと言う名の公開処刑が終わり、特にやることがない俺たちは、アリシアの引っ越しを手伝うことにした。

 ずっと屋敷に籠もっていたから俺も街に出てみなくなったのだ。


「アリシアは先に宿で荷物の整理をしているのよね?」

「ああ・・・午前中には屋敷を出たからもう終わっているだろうな」

「今日のアリシアの服は町娘風」

「まじかよ・・・まだ罰が続いているのか?」


 アドレーヌ様に罰ゲームとして女性らしい服を強要されていたアリシアだか、それはまだ続いているようだ。


 しかも、外に出る時も女性の服を着なくてはいけないとはアドレーヌ様もなかなか厳しい。

 町娘風のアリシアが宿に現れたらさぞかし驚かれるだろう。


「さて着いたな。荷物を運び出してしまおう!」


 精霊馬車は以前アリシアと一悶着あった宿の前に着いた。

 あの時は宿の人に色々迷惑をかけたので謝っておこう。


「ごめんくださーい」


 俺は宿屋兼食堂の扉を開けて中に声をかけた。


「いらっしゃいませー」

「こんにちは。先日はご迷惑をかけて申し訳ございませんでした。アリシアは来てますか?」


 食堂で給仕をしていた人は、俺とアリシアが飲んでいた時にいた人と同じ人物だった。


「ああっ!アリシアの彼氏さん!」

「「彼氏?」」


 ウェンディとユキナの目がギロリと俺の方を見た。


「いやいや、彼氏じゃないですよ・・・それよりアリシアの手伝いに来たんですけど、上にいますか?」

「ふーん。そうですかー」

 なぜこの人はニマニマししているんだ?


「アリシアならここに来てからすぐに飛び出していきましたよ?」

「は?」


 何か急用でもできたのだろうか?


 とりあえず俺たちはアリシアが住んでいた部屋に向かった。すでに荷物がまとまっていれば運びだして屋敷に持っていってやろうとしたのだ。


「何よ?全然荷物がないじゃない?」

「どうなっているんだ?それよりも何も手を付けていないな」


「あっお兄ちゃん。机に何かあるよ」


 何かを見つけたユキナがトテトテと机に近づき、そこにあるものを手に取って俺に渡してきた。

 半分に折られた紙だ。


「メモか?」


 いけないと思いつつ、その開かれたメモを開いて読んでしまう。


「・・・二人共。急いでアリシアを追うぞ」


 俺はウェンディとユキナにそう告げた。


























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