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第78話 月夜の庭園

あの約束のことです!

「ち、違うんです!私はあなたに用があるんです!」


 アリシアとその場を離れようとした俺に向かって一人の女性が声をかけた。


「えっと・・・どこかでお会いしましたっけ?」


 こんな目立つ赤い髪をした女性なら覚えていそうなものだが、全く分からない。


「い、いえ。今日初めてお会いしました」

「そ、そうですか・・・では初めまして。ワタルと申します。何かご用でしょうか?」


「初めましてワタル様。私はダリア・コンフォートと申します。あの・・・ここは挨拶をするための列と聞いたので、ワタル様にご挨拶する為に並んでおりました」


「俺に?それはわざわざありがとうございます。・・・もしかして白竜族の関係者ですか?」


 アドレーヌ様は俺とユキナの事を白竜族だと紹介した。

 ユキナのお兄ちゃんになったので間違いではないが、本当は地球からの転生者なんて知られるわけにはいかないので、白竜族だと言うことにしてある。


「いえいえ・・・私はただの学生です。出身はイーストパレスですが、今年からミルフィーユ王立学園に通っております」

「ほう・・・私とアドレーヌも同じ学園に通っている。私は訳あって行ってはないが・・・」

「ええ・・・学園に通っていてアドレーヌ様とアリシア様の事を知らない方はいません」


「ダリアさん。アリシアと御学友になりたいのならば後で時間を作りますよ」


 何だか地元トークになりそうなので、この辺で切り上げよう。


「あの・・・アリシア様とお話できた事は嬉しいのですが、私はワタル様とお近づきになりたくて・・・よ、よろしければこれを受け取ってください」


「なっ!それは!」

「なんでその娘がワタルに渡すのよ!」

「もうライバルが増えるのは大変なんだからねお兄ちゃん!」


 ダリアさんが俺に手渡したのは、多くの貴族や有力者がアリシアに渡したものと同じカード。


 つまり、ダリアさんは俺に結婚を申し込んだことになる。


「お、お返事お待ちしております。あなたにとても興味があります!・・・そ、それでは!」


「あっ!ちょっと!」


 タッタッタッ!


 ダリアさんはカードを渡すと風のごとく去っていった。


 うーむ・・・これは結婚を申し込まれたのだろうか・・・突然の事で理解が追いつかない。


 まさか俺の中で都市伝説と化していたモテ期なるものが来たのではないだろうか?

 人生には何度かモテ期なる現象がくると、会社の同僚の佐々木が言っていた。


 神様が今までのモテ期の在庫処分でも始めたのかも知れない。


 何かしらの意図を持って俺に近づいてくる女性はいたが、ダリアさんは違う気がする。


 丸いメガネをかけて知的な印象のダリアさん。一般的に言って美人の部類に入るであろう。燃えるような赤い髪は非常にインパクトがあるし、スタイルも抜群だ。


 学校の図書館で一人で本を読んでいそうなタイプだな。


 ドカッ!

 ムニッ!

 スッ!


「イテッ!」


 俺がダリアさんの事を考えていると、ウェンディがドロップキックを、ユキナが足をつねってきた。


「ア、アリシア!剣はないから抜刀の構えは止めてくれ!」


「何ニマニマ笑ってるのよ!」

「お兄ちゃん!妄想は止めて!」

「八ッ!なぜ私はこんな事を!」


「ニマニマしてないですけど!妄想してないですけど!アリシアはなんで?」


「また、敬語になってる。本当に浮気症だわ・・・」

「いい加減お兄ちゃんの好きなタイプを教えて!」


 ウェンディとユキナは訳の分からないことを言ってやがる。


「と、とりあえず。この事は保留にしておこう。よし!アリシア少し外に行こう」

「ああそうだな」

「ウェンディとユキナはアドレーヌ様と話をしていてくれ・・・さすがに全員抜けるとまずいからな」

「しょうがないわね」

「分かった。アドレーヌと話をしてくる」


 俺がこれからしようとしている事を知っている二人は快く言う事を聞いてくれた。


 ・・・・・・・・・


 俺とアリシアはパーティー会場を抜け出し、屋敷の庭にある東屋に来ていた。

 良くアドレーヌ様とユキナがお茶をしているところだ。


 すっかり日が暮れて月が出ている。

 魔道具のランプが道を照らしているので、暗くはない。

 むしろ幻想的な光景が広がっている。


「ふぅー疲れたなワタル。色々迷惑をかけて済まないな」

「気にするな・・・俺も罰を受ける身だからな」


 小さく息を吐いたアリシアの顔をランプの光が照らした。息を呑むほど整った顔だ。これでは求婚する者が殺到するのも頷ける。


「ワタル・・・もし私が剣聖を諦めて殿方との結婚を選んだらどうする?」

「・・・アリシア」

「そしたら・・・ワタルは本当に私を貰ってくれるか?」


 俺の正面に立ち、緑色の大きな目を向けながらアリシアは言った。


 俺がアリシアの事を何も知らなければ、頷いてしまうだろうな。

 しかし、その言葉は俺を通り過ぎ、後ろの花々に吸い込まれていく。


「・・・・・・すまない・・・それはできない」

「・・・ハハハッ!冗談だワタル。こんな格好をしているからおかしくなってしまったようだ」

「・・・アリシア」

「私は剣聖を目指すよ。なんとか妖精様を見つけて契約してみせるさ」


「・・・そうか・・・アリシア少し目を閉じてもらえるか?」

「え?・・・ああ」


 そして・・・俺はゆっくりとその場を離れた。


 月夜に照らされたアリシアの周りには緑の木の幼霊が漂っている。

 まるで本物な妖精のようだ感じた。


「俺ができることはここまです」

「ええ・・・もう十分よ。後はアリシアとノーミーが決めること。ありがとうワタル」

「今回は大変でしたよ」

「あらあら?美人に求婚されていたじゃない?」

「だ、誰のことですか?」

「さぁ?またよろしく頼むわね」


「まだあるんですか?・・・っていねーし」


 ドリュアス様がいたところは木の幼霊が漂っているだけだ。


「さてっと。依頼も済んだし戻るとするか」


 俺はアリシアとノーミーが向かい合う姿を背に屋敷に戻った。













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