第77話 挨拶は5分まで
会場整理です!
「わ、私の心を射止める殿方はどこかしら?」
アリシアの言葉で、それまで優雅にパーティーを楽しんでいた貴族や有力者が一変し、アリシアを伴侶にしようとギラギラした野獣の目になった。
アリシアが公のパーティーに参加するのは、デビュタントと呼ばれる貴族の仲間入りをするための16歳の通過儀礼以来だ。
そのデビュタントもキレイに着飾るアドレーヌ様とは対照的に、騎士団の隊服を着たアリシアは、アドレーヌ様の護衛と勘違いしていた者も多いと聞く。
その後も女性らしい服は王立学園の制服だけ。普段は男性のような格好をしている。
それがピンクのマーメイドドレスを着込み、髪をアップにして、アドレーヌ様のパーティーに現れた。
さらに将来の伴侶を探していると発言をした事によって、一気にアリシアに対する印象が変わったようだ。
「えー列が長くなってきましたので、お一人様挨拶は5分までとさせて頂きます。あっ!すみません列をはみ出さないで!アリシアは逃げませんので」
さて、なぜ俺がこんな事を言っているのかというと、アリシアに挨拶や求婚をするための列ができてしまい、会場が混乱してきたからに他ならない。
使用人やメイドさんも手伝ってくれるが慣れてないらしく、会場整理のアルバイト経験がある俺が仕切る羽目になった。
一応俺もゲストの一人だが、アリシアのエスコートをしてからずっと横に立っていたので、思わず会場整理に口を出してしまった。
「ワタルは何をやっているのよ?」
仕切る為の紐やポールを用意させ、スタッフのごとき振る舞いをしている俺をウェンディが呆れた目で見ている。
列に並んでいる人たちは、独身らしい男性が六割、単にアリシアにお近づきになりたい貴族や有力者が二割、そして何故か残りが目をギラギラさせた独身らしい女性だ。
「初めからあなたに決めておりました!是非私の伴侶になってください!」
「ようやく私の想いに応える気になったようだねアリシア!いつかこの日が来ることがわかっていたよ!」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕とけ、け、け、結婚を前提に・・・」
「お姉様!ついにこの時が来ましたね!」
まぁ分かっていたけど、色々な男性が、アリシアに求婚している。見るからに貴族風の男、金持ちアピールがすごい有力者、オタク風な太ったおぼっちゃま。
どれも癖が強いな・・・
以前、ネットで見た集団でお見合いをして、最後に男性が告白するテレビ番組を思い出す。
目の前の光景は、途中の過程をすっ飛ばして、いきなり結婚を申し込む形式なので気持ちの駆け引きなどあったものではない。
それにしてもアリシアは女性人気がすごいな。求婚をしている女性の目が本気なのが怖い。
「も、申し訳ないが私は男性に慣れていないので、後日返事をする。今日はカードだけ頂きます」
その場で返事をすることができないアリシアは男たちが渡す紹介カードを貰っていく。
これも俺が考えたことで、アリシアにお見合いの意思があれば後日返信が届くというシステムだ。
「麗しの白銀の姫様!私と結婚してくれないか!」
「お兄ちゃんと結婚するから無理・・・」
「おお・・・私はあなたと運命で結ばれていたのですね・・・会場で見た時に確信しました」
「意味がわからない・・・」
「是非妹になってほしい!お兄ちゃんと呼んでくれ!」
「は?私はワタルお兄ちゃんの妹だから無理」
隣のユキナを見ると、やはりアリシアと同じように長い列ができていた。
そして、ユキナに求婚する人々。
中には年のいったおっさんのような怪しいヤツもいるが、ユキナはそんなヤツもろともまとめて一刀両断している。
ユキナよ・・・なんで俺を理由に断っているんだ?
・・・・・・・・・
「アリシアのお気入りはなかなか現れませんねノーミー様」
「アリシアにその気がないから仕方ないわね。・・・それにしても凄いことを考えるわねアドレーヌ」
「当たり前です!アリシアは勝手に居なくなり、ワタル様を誑かしたのですよ」
「そうね・・・でもアリシアが対応に困った時にチラチラワタルを見てるから周りのご婦人たちは気づいているわよ」
「アリシア自身は気づいていないですが、おそらくそういうことでしょうね」
「はぁーまたウェンディとユキナのライバルが増えたわね・・・」
「でも、アリシアの明るい表情が見れたのはワタル様のお陰です」
「本人は無自覚なのが恐ろしいわね」
「さて、今後の展開に期待しましょう」
「実況のアドレーヌと解説のノーミー様でお送りしました。また来週!」
パチパチパチ!
「まぁ!」「素敵ね!」「ここで新たなライバルが来るとは!」
アドレーヌ様が俺達の様子がわかるテーブルに座り何やらノーミーと話している。
一通り話し終えたのか、周りのメイドさんたちがパチパチ手を叩いているぞ。
ちゃんと仕事をしているのか?
・・・・・・・・・
「ふぅーやっと落ち着いたかな?」
「すまない・・・助かったワタル」
「ここでバイト経験が役に立つとは思わなかった・・・少し休むかアリシア?」
「そうだな・・・さすがに疲れた」
「あの!す、すいません!」
「あっ!ごめんなさい。アリシアは少し疲れていて後にしてもらえると助かります」
その場を離れようとした俺とアリシアに向かって一人の女性が声をかけてきた。
真赤なウェーブがかかった髪に、同じ色のドレス。丸いメガネをしていて知的な印象だ。
少しオドオドした態度で俺たちをじっと見ている。
「ち、違うんです!私はあなたに用があります」
その女性は何故かアリシアでなく俺を指差した。
「へ?俺?」
その瞬間、ウェンディやユキナ、何故かアリシアまでもがその女性に鋭い視線を向けた。
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