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第75話 社交界パーティーという名の公開処刑

すみません。少し更新遅れました。

 巨大なホールから吊り下げられたいくつものシャンデリア。

 高さが五メートルはあろうかという大きな窓に掛かる刺繍が施されたカーテン。

 王族のレリーフが刻まれた2階に続く螺旋階段。

 そこでいそいそと動き回るメイドさんや使用人達。


 俺がウェンディと会場に一歩踏み入れた時に目に飛び込んできた光景だ。


「ほぇー・・・すごーい」

「これが王族の社交パーティー会場か・・・」


 しばらく滞在している屋敷だが、非常に目立つ大きな扉があったのは知っている。

 しかし、その扉の向こうがこんな風になっていたとは驚きだ。


 その会場に次々に吸い込まれていく人々も煌びやか。


 肖像画で見た盛り盛りの髪型で動きづらそうなドレスのご婦人方。立派な飾りをつけたタキシードを身にまとい堂々とした出で立ちのヒゲの紳士。


 俺も一応、シップブリッジのお店を連れ回されて新調したタキシードを着ているが、格の違いを思い知らされる。


「避難するぞウェンディ」

「ほんとヘタれねワタル」


 早速会場に集まった人々が知り合いであろう人たちと話し始めたのをきっかけに、俺たちは早速隅に移動する。


 早く安全地帯を探さないと!


 会社の飲み会のスキルを活かし、自分が一番快適な場所を見つけるために会場を見渡す。


 このような立食式のパーティーの場合、自分と同じような雰囲気を持つ集団やそこにいて不自然にならないスペースを見つける必要がある。


 しかし、ここは完全にアウェー。知り合いもいなければ、初見ではどこが良いのか分からない。

 とりあえず集団から離れテーブルに陣取ることにした。


 早速目の前の料理に手を伸ばす。


「ワタル様!ワタル様!」


 存在を消して風景の一部と化した俺に向かってメイドさんが声をかけてきた。


 料理を取ろうとした手が止まる。


「どうしました?」

「なぜお部屋にいらっしゃらないのですか?探しましたよ」

「何かありましたか?」

「とりあえずこちらに来てください」

「は、はぁ・・・」


 こうして俺のモブ作戦は終了したのだった。


 ・・・・・・・・・


「本日はお集まり下さりありがとうございます。日頃から皆様にはミルフィーユ王国の為にご尽力下さり、感謝の念に堪えまえません。ささやかではございますが歓談の場を用意させて頂きましたので、楽しんで下されば幸いです。それではミルフィーユ王国の益々の繁栄を願いまして乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 会場ではアドレーヌ様の堂々した挨拶が終了し、参加者のグラスを鳴らす音が響いている。

 それとともに王国お抱えの楽団が優雅な曲をひきはじめた。


 これからしばしご歓談というところだろう。


 一方、俺はというと何故か会場の外の立派な扉の前にいた。

 理由もわからずメイドさんにここに連れてこられ、佇んでいる最中だ。


 なんでも出番はまだだから、絶対に移動しないように厳命されている。

 出番て何だよ?


「お兄ちゃん!どこ行ってたの?」


 会場から締め出され、途方に暮れていた俺の元に、たくさんのメイドさんを引き連れたユキナがトテトテ歩いてきた。


「キァー!キァー!ユキナなんて可愛いの!今日は青のドレスなのね!ティアラなんて付けてまるで王女様だわ!」

「むぅー私は王女だって言ってるでしょ!」


 テンションが爆上がりのウェンディの気持ちもわかる。多くのメイドさんに着せ替えをされている普段のドレスも可愛いが、それよりも上等な青のドレスもユキナの白銀の髪に似合っている。


 ん?


 なんだかアドレーヌ様が着ているミルフィーユ王国の正装に似ている気がする。

 アドレーヌ様の思惑が見え隠れしないでもないが、気にしないようにしよう。


「どう?ワタルお兄ちゃん。似合っている?」

「ああ。とっても可愛いよ」

「ふふーん!やっぱりこの衣装で正解だった!」

「この衣装?何パターンかあったのか?」

「うん。これは5パターン目のバージョンセカンド」

「お、おう・・・すごいな」


 一体何パターンあったのか怖くて聞けない。アドレーヌ様の執念を感じる。


「お待たせしましたワタル様」

「ああセバスさん。一体何が始まるんですか?」


 今度はセバスさんがニコニコしながら近づいてきた。


「おや?アドレーヌ様から何も聞いておられないのですか?」

「ええ、メイドさんにここで待つように言われただけで・・・」

「ふふ。そうですか・・・アリシア様の一件を相当怒っておられるのですね・・・っと本日の主役が来られましたね」


 セバスさんが俺の後ろの方を見て言ったので振り向く。


「持たせてしまって申し訳ないワタル」

「ア、アリシアなのか・・・?」

「おお、なんとお美しい・・・やはりそちらのドレスがお似合いでしたね」

「ちなみにそれは13パターン目のバージョンサード。私はフリフリボリュームドレスを推したけどアリシアが本気で怒ったからやめたの」

「そ、そうか。大変だったなユキナ」


 ユキナと同じく多くのメイドさんとともに、アリシアが静々と俺に向かって歩いてくる。


「ほぉ・・・これまた・・・なんとも」


 つい、おじさんみたいな驚き方をしてしまった。


「やっぱり私がこんな格好するのは変だろ?あまりジロジロ見ないでほしい」


 ユキナの言った13パターン目のドレスを着ているアリシアは息を呑むほどきれいだ。


 下に行くほど濃くなるピンクのグラデーションのドレス。


 大きく肩を出し、腰を絞った形はマーメイドドレスというだったかな?


 このドレスは長身のアリシアの良さを引き出しており、長く伸びた手の先にはドレスと同じくピンク色のマニュキュアをしてある。


 肩まであった金髪はアップでまとめられ、宝石のついた髪飾りで留めてある。


「いや・・・その・・・素直にきれいだと思うぞ」

「うっ!あ、ありがとう・・・しかしこれではすぐに剣を扱えない」

「おいおい、そんなドレスで剣を持とうとするなよ」


 アリシアのテンパっているのか、おかしな事を言いだした。


「ああ・・・セバスは幸せ者です。剣の道を志された後は男装ばかりのアリシア様・・・しかし、アドレーヌ様と同じくお美しくなられたアリシア様を見ることができるなんて・・・ユキナール様に幼き頃のアドレーヌ様とアリシア様の面影も感じることができました・・・私は死ぬのでしょうか?」


「いや、死なないでくださいセバスさん」


 なんでもセバスさんはアドレーヌ様とアリシアが生まれる前から執事として王家に仕えているそうな。セバスさんにとって二人は子供同然らしい。


「そう・・・あれはお二人が5歳の時の話です・・・」

「セバスもう止めてくれ・・・恥ずかしくなる」


 年配のメイドさん達もハンカチで目を押さえている人が何人かいた。


「そ、そうでしたな。それではワタル様よろしくお願い致します」

「ん?俺?何するの?」

「エスコートを頼む」

「は?うそ?」


 アリシアは俺の腕に手を差し込み、口を引き攣らせながら扉を凝視している。


「それでは参りましょう」


 俺にとって地獄の門が開こうとしていた。























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