第74話 モブになろう
いよいよ社交界パーティーの準備!
セバスさんのお勉強は厳しいです!
ドンッ!
「さて始めましょう!」
「お手柔らかにお願いします」
「お嬢様からしっかり教えるように言われていますので難しいかと・・・」
「そんな・・・」
大量の書類や本を机に置いたのは、ロマンスグレーのイケてる執事セバスさん。
俺の願いも虚しくセバスさんは片掛けのメガネをクイッとあげてやる気十分なのようだ。
俺は今、社交界パーティーに向けてお勉強中である。まずは貴族の常識を知らないとアドレーヌ様が恥をかいてしまうということで、セバスさんに教えてもらっているところだ。
「まずは貴族の名前から覚えてもらいます」
「はい・・・お願いします」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
なんだこの覚えづらい貴族の名前は!
山田とか鈴木だったらすんなり入ってくるのに、ルモンド三世とかアルセーヌJrとか全然馴染みのない名前ばかり。
肖像画も見せてもらったが、どれも同じに見えた。せいぜい女か男か、びげがあるのかないのか位しか判別できない。
早くも挫折しそうだ・・・
「セバスさん・・・全部は無理なので重要な人物だけ教えてください」
「仕方ないですね。後で全部覚えてもらいますよ」
その後セバスさんは王族に近い貴族や他国の位の高い人物を教えてもらった。
・・・・・・・・・
「疲れた・・・髪の毛盛り盛りのご婦人とビケの男が頭をぐるぐる回っている」
やっとお勉強から解放され、ベットに倒れ込みながら呟いた。
そんな様子をウェンディとノーミーが見ている。珍しく今日は二人しかいない。
「これも罰なんだから苦しみなさい」
「ウェンディはまだ怒ってるのかよ・・・いい加減機嫌を直してくれよ」
「ふんっ!浮気したワタルが悪いのよ!」
あの宿屋の一件からウェンディの機嫌が悪い。話はしてくれるがなんだか突っかかってくる。
「ノーミーなんとかしてくれよ・・・」
「生憎、他人の痴話喧嘩に口を挟まない主義なので・・・」
「おうノーミーまで俺に冷たい・・・あっそうだ。ノーミーに聞きたかった事があるんだ」
「なに?仲直りの仕方なら教えないよ」
「いや違うよ・・・なんでアリシアの前に姿を現さないんだよ?」
ウェンディやユキナはアリシアに対して積極的に話はしないが、姿を現している(まだ警戒しているようだが)
しかし、ノーミーは決してアリシアの前に姿を見せない。
アリシア自身はノーミーが側にいることを知らないはずだ。
「あの娘は妖精と契約するためにワタルに近づいたんでしょ?」
「そうだな・・・剣聖になるためにノーミーと契約したいらしいぞ」
「だからよ・・・付きまとわれるのが目に見えているもの」
確かに剣聖になるために何でもする覚悟があると言ったアリシア。ノーミーが目の前に現れたらなんとしても契約しようとするだろう。
「なんとか話だけでも聞いて貰えないか?一度でいいからさ」
「何よ?ずいぶんアリシアの肩を持つじゃない?惚れちゃったのかな?」
「なんですって!」
ギロリ
「ウェンディちゃん怖い顔しないの」
「いや惚れたとかじゃないよ。アリシアは妹のマリアの為に剣聖になろうとしてんだよ。なんとかしてやりたいと思ってさ」
「なんでワタルは妹が絡むとすぐ助けてようとするのよ!」
「重度のシスコンね・・・」
俺だって誰彼構わず助けたりなんかしない。
アリシアの必死な訴えに応えてやりたいと思っただけだ・・・
「なぁ頼むよノーミー・・・」
「まっ!ワタルにはドリュアス様の依頼をこなしてもらっているし、話をするだけならいいわよ」
「ありがとうノーミー」
ボソッ
「ふぅー・・・私も変わって来たきたということかな」
・・・・・・・・・
社交界パーティー当日
ベルサイユ宮殿を彷彿とさせるアドレーヌ様の屋敷では多くのメイドさんや使用人が準備の為に忙しく動き回っている。
社交界パーティーは夜に行われるので、それまでは基本的にやることがない。
アドレーヌ様やアリシアは準備のためか朝から姿が見えない。
そして、ウェンディやユキナも同様だ。
仕方ないので時間までセバスさんからもらった資料を読んでいよう。
やがて、日が暮れ始め社交界パーティーに参加する為にきた馬車が屋敷の庭に集まり始めたのを寝室から確認できた。
「なんでウェンディまで着飾っているだよ?妖精は他の人には見えないだろ!」
「いいじゃない!私もオシャレしたかったのよ!」
「だったらあのへんてこなドリュアス様のモノマネでいいだろ」
「うるさい!それにモノマネじゃないわ!」
そろそろパーティー会場に行こうかという時にウェンディが俺の寝室にフラッと現れた。
いつもの青のフリフリドレスがバージョンアップされ、髪飾りが高そうなやつになっている。
なんでもアドレーヌ様におねだりして特注してもらったそうだ。
「なぁウェンディ。俺はモブに徹しようと思う」
「モブって何よ?」
「パーティー会場の隅で目立たず、過ごすことだよ。良く考えたら俺はアドレーヌ様の友人で貴族でもなんでもない」
「それはそうね・・・でもキチンとアドレーヌに挨拶するのよ」
「そのへんはセバスさんに教わっているよ。その後、一人じゃ心細いから一緒に美味しい物でも食べてようぜ」
俺がそう言うとウェンディはモジモジし始めた。
「・・・私のドレスの感想を言ったら一緒にいてあげるわ」
「お、おう・・・その可愛いぞ」
「あの・・・その・・・ありがとう。し、仕方ないから一緒にいてあげるわよ」
「そうか!俺と一緒にモブになろうぜ」
俺はニマニマと気持ち悪い笑顔を浮かべているウェンディと会場に行ったのだった。
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