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第7話 ただの魔力タンク

「なぁエアロ。確かに俺は、ワタルのサポートをお願いしたが、初日から土下座させているじゃねーか。」

「あら?あれはあなたの息子が悪いわよ。女の子にあんな風に迫ったら誰だって怒るわよ」


 ここは一面真っ白な狭間の世界。

 アトランティスの管理者代行の七星ガンテツと風の精霊エアロが向かい合いながら、アトランティスの様子を見ていた。


 地球とは違う世界を映すことができる泉には、ワタルがウェンディに風の魔法でふっ飛ばされた後、土下座をして謝っている様子が映っている。


 腰まで伸ばした青い髪にキラキラした豪華な髪飾り、大きな胸を白いドレスに窮屈そうにおさめたエアロはワタルに呆れていた。


「そうですよ。あれはワタルさんが悪いです」

 ガンテツの部下であるエルザも同意にするよう頷く。


 ワタルを異世界アトランティスに転生させたガンテツは、サポートを頼んだエアロを呼び出し、お礼を伝えようとした所、ワタルの奇行が始まったのだ。


「あいつ等上手くやっていけるのか?俺は初対面の妖精にはスマートに話していたぞ」

「あら?強引なところはあなたそっくりじゃない。私のときなんかそりゃもう・・・」

「エアロ様。あまり誤解される発言はおやめ下さい。サツキ様に聞かれたら大変です」


 何故か背中に冷たい殺気を感じたエルザは慌ててエアロをとめる。


「ところでエアロ。なんでお前がサポートしないんだ。正直にいってその方が安心なんだが」

「ウェンディは早とちりしやすくて、思った事をよく考えずに突っ走る性格なの。怒ると魔法をすぐにぶっ放すわ」

「だめじゃねーか」

 突っ込みをいれたガンテツはますます不安になる。


「でもね。とても素直で愛情深いのよ。色々あったあなたの息子にはぴったりでしょ。うふふ」

「まぁ確かにそうかもしれねーが」

「それにね。契約の事もあるでしょ?」

「お前、ワタルがウェンディと契約すると思ってんか?俺は別にそんなつもりでサポートを頼んだつもりはないぞ」


 ガンテツは、ワタルにはアトランティスで普通に生活して欲しいと願っている。妖精との契約までは考えていなかった。


「ワタルとウェンディは契約すると思ってんか?」

「あら。当然じゃない。あなたの血を受け継いでいるもの」

「意味わかってる言ってるんだろうな」

「ええ。妖精が契約できるのは生涯一人だけ。それにもう・・・うふふ」

 エアロはいたずらな笑みを向けてワタルたちを見つけていた。

「あちゃー。すまんなワタル」


・・・・・・・・・


 一方アトランティスでは、一時間ほどの謝罪の末、ワタルはなんとかウェンディの機嫌を取り戻した。


「いい。一度しか言わないからしっかり聞きなさい!魔法とはね。」

「だから、初対面の人に説明するには・・・」

「なに?」

「すみません・・・良く聞きます」

 怖い・・・下手に口を挟んだらまたふっ飛ばされる。


「魔法と言うのはね二種類あるの!一つはそのまま魔法を使うこと。もう一つは妖精や精霊と契約して使う契約魔法」

「ほう」

「一般的に、魔法は自分の魔力を回路を通して変換するの。でも、生まれ持った回路は人それぞれで、例えば風の回路を持っていれば風魔法が使えるわけ。中には全く回路を持っていない人もいるわ」

 つまり回路とは属性みたいなものか。


「次に契約魔法だけど、これは回路を妖精や精霊が肩代わりするの。火の回路しか持ってない人が風の妖精と契約すれば二種類の魔法を使えるようになるわけ。分かった?」

「ふむふむ。なるほど。ウェンディは風の回路を持っているから風魔法が使えるのか」

「そのとおりよ。理解が早いじゃない」


 そういうことなら、気になる事がある。

「俺はどうなんだ?誰でも魔力は有るみたいだけど、どんな回路を持っているんだ?」

「そうね〜。少し見てみるわね」

 素早く俺の前に飛んできたウェンディ。体の割に大きな青い目をパチパチしながらじっと見つめてくる。

 女性に免疫のない俺はドキドキしてしまう。


「・・・・・・うそ。何これ・・・・・・」

「な、なんだ?どの様な結果になりましたでしょうか?」

 何故か敬語で聞いてしまった。


「ふぁ〜〜すご〜い・・・これはやばいわね〜」

 呆けるようなウェンディが少し色っぽい感じで声を出した。なんだ?一体俺の回路はどうなんだ?


「あの〜」

「ご、ごほん。えーとあなたの魔力は妖精にはとても心地よいものだわ」

 しばらく俺を見つめていたウェンディはそんな事を言った。

「・・・そうなのか」

「ヤバいくらいに心地良いわね、わ、私は特に感じないけど」

 嘘つけ!口を開けて呆けていたじゃねーか!


「それで肝心の回路の方はどの様な感じでしょうか?」

「回路がないわ!」

「は?」

「だから、あなたは全く回路がないのよ。妖精にとってめちゃめちゃ魅力的な魔力を持っているだけ。それも大量に」

「うそ・・・つまり・・・」

「魔法は使えないわね」


 どうやら俺はただの魔力タンクのようだ。


















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