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第62話 教会の剣術道場

再びあの人のお願いです!

「アドレーヌ様ご報告がございます」

「あら?ザックスじゃない」

「このケーキ美味しい。でも太りそう・・・でも成長するためには仕方ない・・・そう理想のボディになるための糧となるのだから・・・」


 王族の巨大な屋敷の中にある庭園の東屋でユキナとお茶を楽しんでいるアドレーヌの元に副団長のザックスが険しい顔で近づいてきた。


 日がサンサンと降り注ぎ、花の香りが漂うのどかな庭園の雰囲気に相応しくないザックスの様子にアドレーヌは少し眉をひそめた。


 ユキナは目の前のケーキに夢中で己の体型の変化ばかり気にしており、話には全くの無関心だ。


「アリシア様がようやく見つかりました」

「そう・・・ありがとうザックス。ずいぶんと時間がかかったようだけど?」

「はいそれは申し訳ございません・・・街中の剣術道場を捜索したのですが、全く見つからず諦めかけてたのですが、発見されたのは剣術道場と呼ぶにはいささか語弊があるような場所だったのです」

「アリシアは身を隠していたようだし仕方ないわね・・・それはどこなの?」

「はい。それは・・・」


 ・・・・・・・・・


「えーと・・・この教会で間違いないかな?」

「ずいぶんボロいわね。廃墟かしら?」


 俺はシップブリッジの街の外れにある教会の前に来ている。

 青い屋根はあちこちひび割れており、ツタが勢いよく伸びた壁には年季を感じさせる黒いシミが付いている。


 教会というより闇落ちした神父が悪魔崇拝を始めて寂れていったイメージがピッタリだ。


 エイッ!エイッ!ヤー!


 俺がそんな失礼なイメージを抱いていると、元気なこどもの声が聞こえてきた。

 どうやら人は住んでいるようで安心する。


 ここに来たのはエルザさんの手紙が原因。


「ノーミーが加わったとはいえ、ワタルさんは弱すぎます。今後お仕事をするにあたって剣術を習う事をおすすめします。護身術くらい身に着けてもらわないと心配で見てられませんと、一日商業ギルドマスターが嘆いておりました」


 ロードさんは俺の身を案じてくれているようだが、ファンとしてはいささか過剰のような気もする。

 商業ギルドの応接室でのことはあまり覚えていないが、ロードさんには悪いイメージはない。むしろすごく懐かしく、安心できる人だと思う。

 膝枕の事を思い出し少し恥ずかしくなった。


「しかし、ワタルさんがお金がないことも、これ以上アドレーヌ様に頼りたくないことも理解しております。そこで無料で剣術を教えてくれる場所を紹介しますので、是非訪れてみてはどうでしょうか?」


 そして俺とウェンディは手紙に書かれているこの教会に来たと言うわけだ。


「ごめんくださーい!どなたかいらっしゃいますかー?」


 ギギギっと立て付けの悪い扉を開けて、中に声をかけた。

 声が反響した空間は、教会特有の礼拝堂で塗装が剥げた椅子の先に目を閉じてこちらを見下ろす像がある。


「これは木の精霊の教会のようね。この像はドリュアス様よ」

「みたいだな・・・本物を知っていると変な気分だ」


 本人とは若干違うが、目の前の像はドリュアス様の特徴でもある長い髪に花が咲き乱れている。木の幼霊もフヨフヨ浮いているので間違いないだろう。


「はーい。ご礼拝の方ですか?」

「いえここで剣術を教えてくれると聞いたものでお願いしたいなと」

「ふぁーあなたすごいですね〜幼霊がたくさん付いてますね〜」


 奥から現れたのは、16〜17歳くらいの女性だった。

 白い修道服を身にまとい、胸には木の精霊の教会のシンボルのネックレスをしている。

 それにしても小柄ながらもデカい。何とは言わないがデカい。

 ほんわかしている雰囲気ながらも凶暴な物をお持ちのようだ。


「そ、そうですかね・・・それであの剣術を・・・うお!」

「是非木の精霊様の教会に入信しませんか?そんなに幼霊様が付いているなら大歓迎です。ドリュアス様もお喜びになるでしょう!」

「近い近いです」


 手を胸の前に組み、グイグイ近寄ってきた女性はいきなり勧誘を仕掛けてきた。

 この人は自分の武器をわかっているぞ。


「す、すみません。私は全ての精霊様を信仰しているので・・・それよりも剣術を教えてください」


 ボソッ


「おかしいな〜大概の男性はこれでいけるのに・・・あっ目薬で涙目にするの忘れてた・・・」


「ワタル!この人族危険よ!あのデカパイに騙されないで!」

「べ、別に騙されてませんけど!変な誤解するの止めて欲しいんですけど!」

「敬語になってる・・・」


「ん?どなたと喋っているのですか?」

「喋ってませんけど!」

「そうですか・・・残念ですが今日は諦めましょう・・・気が変わったら教えてください。司祭様を呼んできますね」


 いそいそと女性は奥に消えていった。


「なんとなくワタルの趣味が分かったわ」

「ドリュアス様!!」

「いつもいきなり現れるからびっくりするんですけど!」

「ワタル喋り方戻ってない!」


 女性がいなくなって声のした方向を見ると優雅に椅子に座っているドリュアス様がいた。

相変わらずのミステリアスクールビューティな雰囲気だ。


「今日もお願いがあってきたの」

「いや少しお願いのペースが早すぎませんか?」

「そうかしら?駄目ならいいんだけど、私はうっかり膝枕とかデカパイとか喋ってしまうかもしれないわ」

「何でもします!日頃からドリュアス様にはお世話になっているので!不肖七星ワタル!誠心誠意頑張らせていただく所存です」

「あら?そうなの?そんなにやる気になるなんて嬉しいわ」


「ドリュアス様怖い・・・」



















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