第34話 風呂に入りたい
第三章始まりました♪
「ワタル〜見てみて!森の出口が見えたわ!」
「お兄ちゃん森の出口があるよ」
「見れねーよ!降りてこいよ二人共」
ここは妖魔の森の外縁部を通る街道ザリオン。
精魔大戦の英雄ザリオンにちなんだ街道らしいが、ザリオンを知らない俺としては立派な道だなぁという感想しかない。
上を見上げながら叫ぶ俺に二人の妖精がフヨフヨと降りてきた。
1メートルほどの大きさの白竜ユキナ。本来は五メートルほどの巨竜だが、小さくなれるということで、このサイズになっててもらっている。
契約妖精のユキナは白竜族のお姫様。そのお姫様が俺をお兄ちゃんと呼んでいる。
正直に言ってかなりかわいい、けして俺はロリコンではないので、動物的な意味でかわいいと言った。
(俺は誰に言い訳しているんだ?)
地球の俺たち家族が住んでいた都内近郊の賃貸の住まいでは、犬が飼えなかった。犬好きのハルカに白いイヌのぬいぐるみで我慢してもらった過去がある。もちろん俺も犬が好きだ。
ハルカごめんよ。お兄ちゃんはこの世界で白竜と仲良くしているぞ。
ハルカの事を思い出しニマニマしていると
「何気持ち悪い顔で笑っているのよ。また、ユキナに変なことしたら承知しないわよ!!」
悪態をつきながら降りてきたのは風の妖精ウェンディ。
転生初日に契約してから早一ヶ月程。
思えば、ここまで色々あった。
精霊馬車を手に入れ、魔法を覚え、ユキナと出会い契約した。
この口うるさい妖精が一緒にいたから乗り越えられたと思う。
そんな事はけして口に出さないが・・・
「出さねーよ!!俺はお兄ちゃんだぞ!!」
「お姉ちゃんの私が付いているから安心しなさいユキナ」
「喧嘩しないで二人共」
「「・・・・」」
妹にたしなめられる俺達。
「・・・しかし、そのスタイルはどうかと思うぞ」
「何よ!良いでしょ!ほんとは羨ましいんでしょワタル!」
そうウェンディはユキナに跨って降りてきたのだ。
ドラゴンライダーならぬ、白竜ライダーと化したウェンディ。その姿を見れば一体何の妖精なのか分からない。風の妖精ならば自分で空を飛べと言いたい。
「バカ!ユキナに跨がれる理由ないだろ」
「そんな事したらエアロ様に通報するわ!」
「だからしねーよ!」
「ウフフ・・・やっぱり仲いいね」
・・・・・・・・・
「さて、今後の事を決めよう」
長かった妖魔の森の生活も終わりだ。これから本格的に人の街に行き、仕事を探さなくてはならない。
木こりのベアフの話によると、森を抜けるとすぐにトカリという村があるらしい。
ベアフが住んでいる村らしく、小さいながらも人が住んでいるようで、仕事が見つかるか分からないが、情報収集や旅の支度ができるかもしれない。
「とりあえずトカリという村を目指すのね」
「ああ、そこで食料なんかを手に入れて、大きな街を目指そうと思う」
「私・・・大きな街初めて・・・楽しみ」
「そうか。ユキナはお姫様だもんな」
「でも私達、お金持ってないわよ。人族はお金が必要なんでしょ?」
まさにウェンディの言うとおりである。
俺達には金が無い。つまり、買い物ができない。
「そこは物々交換でいこう。道中薬草をけっこう拾っていたからな」
「ああ、だからワタルはそのへんの草を拾っていたのね。あまりの寂しさにおかしくなったと思っていたわ」
「あのな〜俺は先のことまで考えて行動してるの。ウェンディと違うの!」
「なんですって!」
俺達が言い争っていると、ユキナが心配そうに言った。
「私の毛売れるかな?人族では貴重って聞いたよ」
「「それは絶対駄目!!!」」
いくら金が無いとはいえ、そんな事は色々だめだ。お兄ちゃん的にもだめだ。
「ありがとうユキナ。気持ちだけもらっておくよ」
「そうよユキナ。ワタルに任せておきなさい」
・・・・・・・・・
「ということで風呂に入ろうと思います」
「なんでよ?それにどこにお風呂があるのよ?」
「お風呂入れるのワタルお兄ちゃん!」
そう、今の俺は人生の中でこんなにも風呂に入らない事はなかった。
つまり、とてつもなく臭いのである。
これから人がいる村に行くのに、こんなに悪臭を放つ人物がいれば話も聞いてもらえないだろう。
「無いものは作ります!俺の魔法で!」
「そんな魔法なんか無いわよ」
「ふふ〜んウェンディさん。なんの為に俺が毎日幼霊と戯れていたと思っているのかね」
毎日水を出すため、火を起こすために幼霊にお願いしていた俺はかなり幼霊の扱いに慣れていた。
最近では土の幼霊にもお願いしてある程度土を操れるようになったのだ。
「だから、毎日土いじりしていたのね」
「粘土遊び楽しかった」
「断じて、土いじりや粘土遊びではない!風呂場を作るための準備をしていたのだ!」
俺は、風呂場を作るために日々努力していたのだ。それが今日実を結ぶ時が来たのだ。
さぁ刮目せよ!草津や湯布院もびっくりな風呂を見せてやろうではないか!!
出口が近い森の中、野営のために少し開けた空間で宣言したのであった。
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