表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/222

第29話 優しい魔力

 ユキナ視点


 なんて温かい魔力なんだろう・・・


 私を食べようとした狼を思い出し、とっさに目の前の人族に抱きついてしまったけど、その瞬間感じた事だ。


 ホワホワする魔力はヒュウガお兄様にとても似ていて、それだけで包みこまれるような安心感がある。魔力はその人の人柄を反映したものと聞いたことがある。

 特に、妖精は魔力に敏感だ。


 ヒュウガお兄様はホワホワした感じ、フブキお兄様はメラメラした感じ、リッシュはユラユラした優しい魔力だったな・・・


「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・」


 もっとこの人族の魔力を感じていたいと思っていると、その中心で強い波動があるのに気づく。

 それは、人族の女を守るように優しく包んでいる。


 お兄ちゃんと呼ばれているって事は妹なのかな?この人族はお兄ちゃんと呼ばれている事に喜びを感じているようだ。


 きっとこの妹は幸せなんだろうな・・・


 お兄様たちはどうしているかな?早く会いたいな・・・


 不意に寂しさが込み上げてきて、寂しくなった。


 その時、この人族の魔力が私を包みこんだ。


「もう、大丈夫だよ」

 そう言っているかのように、優しく漂う魔力。

 ああ、きっとこの人族が私を守ってくれるんだ・・・素直にそう感じた。


 でも、私はこの人族の妹ではない。いきなり助けを求められても困るだろう。

 また一人にされたら檻の外で感じたドス黒い魔力を持った奴らに生贄にされてしまうかもしれない。


 どうしよう・・・考えろ私・・・


 目の前の人族の男は魔力で感じた通り、人柄は優しいと思う。見るからに奴隷の恰好をした私を腫れ物でも扱うように接し、ナッシーの梨をくれた。

(こんな高級品をホイホイ食べさせる人族なんか聞いたことがない)


 よしっ!私は何年もお兄様の妹をやってきたのよ!ここはなんとしてもお願いを聞いてもらわないと・・・


 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


「そう・・・なんとなく状況は察したけど、何があったか話せる?」


「・・・・・・すけて・・・助けて」

(すべての妹パワーを発揮し、すがるように見つめるのよ私!)


「大丈夫か?」

「私を助けて・・・ワタルお兄ちゃん・・・」


「分かった!ワタルお兄ちゃんに全て任せなさい」

「はぁ?理由も聞かずに何安請け合いしてるのよ!」

「ユキナが困っているんだぞ!助けるのは当然だ!」

「馬鹿じゃないの?あなたはお兄ちゃんって言われれば助けちゃうの?病気なの?」


(・・・良かった・・・隣の風の妖精が何か言ってるが、助けてくれるみたいだ)


 ・・・・・・・・・


 ワタル視点


「ふ〜ん。やっぱり誘拐されたのね。その人族許せないわ・・・」

「辛い思いをしたんだな・・・かわいそうに・・・」


 ユキナは俺たちに事情を話してくれた。ボソボソと話すので、こちらから何度か質問しながら聞いたが、ユキナは誘拐やデビルウルフの襲撃など相当辛い経験をしたようだ。


「それでユキナはホワイトパレスに帰りたいということでいいんだな」

「うん・・・多分お兄様たちが探しているけど、早く帰りたい・・・」

「なぁウェンディ。ホワイトパレスはここからどのくらい離れているんだ?」

「白竜族の住処がある場所は、妖魔の森の北側よ。そこから幾つか街や川を越えたビーガーデン山脈の中。ここからだと3ヶ月はかかるわ」


「そんなにか・・・う〜ん・・・どうしようか」

「ワタルお兄ちゃん・・・」

「あっ。ごめん・・・不安にさせちゃったな。ユキナは必ず家に帰すから安心しろ」

 俺はユキナの頭を優しく撫でる。

「うん・・・ありがとう」

「全くもう」


 ここから妖魔の森の北側だと完全に逆戻りだ。3ヶ月もかけて行くには全然準備が足りない。


「なぁユキナ・・・俺たちは今、絶賛就職活動中だ」

「就職活動中?」

「ああ、無職で全く金も無いってことだ。家は馬車の中」

「そう。ワタルはプータローで浮浪者と変わらないってことよ。その上、私がお世話をしないと何もできないの」

「ワタルお兄ちゃんかわいそう・・・」

 ユキナよ・・・その同情するような目が地味にダメージを食らうぞ。


「ゴホン。だからすぐには送ってはあげられない。それは分かってくれるか?」

「うん・・・お金も仕事もないプータローじゃ無理」

「お、おう・・・い、いずれお金を稼いでホワイトパレスまで行こう。それまで一緒だ」

「なかなかハッキリ言うわねこの子」

 全くもって情けないお兄ちゃんでごめんよ。


「ねぇ。なんでワタルお兄ちゃんはウェンディと契約してるの?」

「ん?不思議か?」

「普通、妖精は人族と契約しない」

「そうなのか。まぁ詳しくは後で話すけど、成り行きでウェンディと仮契約したんだ」

「仮契約?」

「そう。だからお試し期間みたいなものだな」

 本契約するのはどうすればいいのか分からないが・・・


「ワタルお兄ちゃんはウェンディととても仲がいい。羨ましい・・・だから」

「そうか?口うるさくて、俺にウィンドカッターをするようになおもしろ妖精だぞ。」

「なんですって!そもそもあなたがしっかりしないのが・・・」


 チュッ


「だから私もワタルお兄ちゃんと仮契約する」

「へ?何をやってるん・・・」

「な、なにを・・・」


 パァー


 ユキナが俺の頬に口づけると右手が白く輝いたのであった。






















ご意見ご感想お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ