第23話 異世界ガチバトル
「ミネラルウォーター」
・・・チョロチョロ
「うん!ただの水だ!」
「すごい器用に飲むわね。ワタルは一応風の魔法使いなんだけど・・・」
俺は、顔を上に向けて水を飲んでいる。
水の幼霊を頭上に集め、水を出すイメージをするだけで水が出てくる。それに口を合わせだけだ。なんとも便利!
ウェンディが言っていた通り、本来だったら風の魔法を使いこなさいといけないのだが、水や火の幼霊の使い方ばかりが上手くなった。
それもそのはずで、風の魔法は戦いには役に立つが生活にはあまり必要ない。蒸し暑い夜には扇風機がわりにそよ風を出す程度だろう。
こんな事を言ったらウェンディが怒るから言わないが・・・
自然と水を飲むためや火をおこす幼霊にお願いするうちに扱いが上手くなった。
この世界に来て約半月。ほとんどウェンディとしか会話してないが、この小さな妖精はどんな事を思って俺と一緒にいるのだろうか?
きっと俺一人で森の中に放り出されてしまったら不安で寂しかったはずだ。口うるさいが、今のところ道中を楽しんでいられるのはウェンディのおかげだな。
風の精霊エアロ様に言われて俺のサポートをしてくれているけど、嫌々付いてきてるとしたら寂しいな。
目の前をフワフワ飛んでいるウェンディにそんな事を思った。
そんな時
「後を付けられているわね。気をつけなさい!」
「えっ?マジで?何が?」
ウェンディが後ろを振り向き森の中を睨んでいる。
オバケキノコやニョッキが出たときとは違うウェンディの真剣な表情に不安が募る。
ガザッ
ウェンディと一緒に森の中を睨んでいると、5頭の黒い影が姿を現した。
「デビルウルフ・・・集団で獲物を襲う狼の魔獣。とても獰猛で人間を狩る」
なんか怖い説明が目利きの情報に出てきた。
大きさは大型犬より少し小さく、黒の体毛に包まれている。
「ガルルル!」
「ウウウウウ!」
鋭い牙が生えた口からヨダレを垂らし、唸りながらゆっくりと距離を詰めてきた。
「また、厄介なのが出てきたわね。逃げるわよワタル!」
「倒さないのか?強いのか?」
「違うわ。コイツら集団で狩りをするの。もう他のデビルウルフに囲まれているわ」
「そ、そうか。でも逃げるって言っても、馬車じゃ追いつかれるぞ」
精霊馬が60kmで走っても荷台に繋がっていれば本来の速さは出ないであろう。
追いつかれるは必至だ。
「まずはこいつ等を吹っ飛ばすわ!ワタルは魔力よこしなさい!」
「お、おう。魔法を使うんだな」
するとウェンディは魔力を練り上げ始めた。俺の右腕の文様が光るとともに、ウェンディの周りが青く輝く。
「おお結構吸い取られる」
「ウィンドプレス」
ウェンディの腕が振り下ろされるとともに風魔法が発動。
ゴォォォーーー!!!
バキバキッ!!!
激しいダウンウォッシュが上空から吹き荒れる。周囲の木々や土埃が巻き上げながら、デビルウルフに突風が直撃した。
「す、すご!」
改めて風の妖精の魔法の力を実感する。台風のような凄まじい風にビビッてしまった。
四肢を踏ん張り、爪を立てて耐えていたデビルウルフだったがすぐに体が浮き風にふっ飛ばされた。
2頭が大木に激突し、3頭が街道の後方へ飛んでいくのを確認する。
「逃げるわよ!全速力で走りなさい」
「よっしゃ。頼むぞ精霊馬!」
ヒヒーン!
精霊馬は一鳴きすると、すごい勢いで走り出した。今まで全力で走らせることがなかったが、これが最高速度であろう。
ガガガガガガ!
荷台の4つの車輪が悲鳴を上げながら、精霊馬に追従しているのを見ていると、よく壊れないものだと不安になる。
速度が上がるに伴い揺れがひどくなっていくが気にしてはいられない。
「ウェンディ俺の肩に捕まってろ!」
「え、ええ」
小さな手を肩に乗せるウェンディの気弱な返事に不安になり顔を覗いてみる。
若干顔色が悪いような気がするが・・・
「どうした?大丈夫か?」
「・・・何でもないわ。それより前を見てなさい」
あれだけの魔法を使ったから疲れたのかな?
とりあえず逃げ切ったら休ませよう。
(予想はしていたけど、とんでも無い魔力量だったわね。もう少しで暴発するところだった・・・制御に大分力を使ったわ)
「クソッ!待ち伏せされていたか!」
後方のデビルウルフは引き離したが、街道の200メートル程先に黒い影が見えた。
今度はさっきの倍ほどの数だ。
「今度は俺が幼霊の力で吹っ飛ばす!」
「何言ってるの?私がやるわ」
「だめだ!ウェンディは休んでいろ!酷い顔だ」
「な、な、なに勝手に命令してるのよ」
やはりさっきの魔法は負担が大きかったようだ。ここは俺がやるしかない。
ひどく揺れる御者台に掴まりながら、片手を上に向ける。
「風の幼霊ありったけ来てくれ」
そう叫んだ瞬間、青い塊が俺に向かって飛んできた。
「す、すごい・・・なんかいっぱい来た」
「ちょワタル。呼びすぎ・・・」
そこら中から押し寄せた風の幼霊は俺にぶつかり纏わりついている。視界が一面青い。
後はイメージを固めるだけだ。
・・・風・・・空気・・・吹っ飛ばす・・・大砲・・・
これだ!
21世紀の二頭身ロボットは、手に筒を持って戦っていた。相手を吹っ飛ばすにはこれしかない!
手を前方にかざす。一面真っ青なので狙いは適当だ。
「喰らえ!ウィンドキャノン!」
その時周りの空気が一瞬震えだした後、俺の手から青い塊が放出された。
「キャァァ!」
「グッ!」
塊を放出した勢いで飛ばされそうになるウェンディ。
凄まじい魔力が持っていかれて耐える俺。
跡に残ったのは、抉れた地面となぎ倒された木々だけであった。
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